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一生に一度のセレンディピティをつかもう  新見正則

今年も日本人のチームがイグノーベル賞!

9月17日(日本時間では18日)に2020年のイグノーベル賞の発表があり、日本人を含むチームが音響学賞を受賞したそうです

僕のチームの受賞のはなし!

僕のチームがイグノーベル医学賞を受賞したのは2013年でした。もう7年前です。2013年の春、突然に英語のメールが届きました。

Dear Professor Niimi --
Congratulations to you and your co-authors!
We are delighted and thrilled that you will be part of this year's Ig Nobel celebration.
Here are some details:

とあり、以下に長文が続いていました。最初は冗談だと思って、ゴミ箱に入れ、その後、再度メールが届いて、「本当だ!」と確信した次第です。

オペラの椿姫で免疫力がアップするって研究だよ

僕が受賞したイグノーベル医学賞は、「大脳と免疫」に関するものでした。心臓移植をしたマウスにオペラ椿姫を聴かせると、8日前後で拒絶される移植心が、長期間拒絶されないというものでした。英文雑誌 Journal Cardiothoracic Surgeryに僕たちのチームが投稿した「Auditory stimulation of opera music induced prolongation of murine cardiac allograft survival and maintained generation of regulatory CD4+CD25+ cells」という論文が2012年に掲載され、受賞対象になりました。論文タイトルの「オペラ」という言葉がイグノーベル賞選考委員会の人々の目を引いたのだと思っています。選考委員には複数のノーベル賞受賞者も含まれて、発表会や祝賀会にも来てくれました。

偶然をつなぐ力がセレンディピティに!

この実験は偶然でした。1998年にオックスフォード大学から帰国しラボを立ち上げ、数年経ってラボが軌道に乗ったころ、中国人留学生の優秀な女性が、「先生、マウスが余ったので、なにか実験をしたいのですが?」と相談にきました。そのときに僕の机にあったのが、オペラ椿姫のCDでした。ジョージショルティが指揮者で、アンジェラゲオルギュがソプラノでした。イギリスで購入したものです。「移植したマウスにオペラを24時間聞かせてくれる?」とお願いすると、怪訝な顔もせずに了解してくれました。そして、心臓は8日を超えて長い期間、拒絶されずに動き続けたのです。

ヒントは案外身近に転がっている

じつはこの実験にはオックスフォードでの伏線があります。当時、僕はマウスの心臓移植手術が世界一上手いと思っていました。1日に20組の移植も可能でした。なにも処置をしないマウスの手術をして、飼育舎で10匹ずつの箱を並べておくことができず、離れた場所に置きました。すると、なんと同じ結果になるべきグループなのに、ドアに近い方のマウスの大半が通常の時間では心臓を拒絶しませんでした。まったくの偶然です。そんな偶然を最近は「セレンディピティ」などといいます。なにかちょっとした環境が免疫に影響するのだろうと直感で思ったのです。

本当の超ラッキーは必死の努力のたまものなのかも

そのことがあって、音楽を聴かせてみたら? と直感で思ったのです。すると、なんとオペラの椿姫は免疫制御細胞を誘導して、そして心臓の拒絶反応を抑制していたことがその後の実験でわかりました。それならばとエンヤ、石川さゆりさんの津軽海峡冬景色、尺八の音色、地下鉄の工事現場の音、小林克也さんの英語の授業などでも試してみましたが、どれも無効でした。モーツァルトはちょっと有効でした。オペラの椿姫は再実験を繰り返しても、やはり有効でした。僕は運が良いのです。だって、最初にオペラ椿姫ではなく、他の音楽や音を聞かせていたら、「やっぱり音響刺激は効果がないんだ!」と思ったはずです。これもセレンディピティですよね。

みんなの努力でスペシャルな研究になったよ

そして、この結果を一流英文雑誌に投稿したところ「Opera music」をタイトルから削除すれば採用するとの返事でした。しかし、論文を書き上げてくれた内山雅照先生の強い希望で、「Opera music」は残したいので、他の雑誌に投稿し直しましょうということになったのです。ここで「Opera music」をタイトルから削除していれば、イグノーベル医学賞には選ばれなかったと思っています。

そんな偶然が重なってのイグノーベル医学賞の受賞だったのです。イグノーベル医学賞の受賞にしても、その他の僕の人生にしても、本当に僕は人に恵まれて、そして運がいいと思っています。


ウイットに富んだイグノーベル賞の副賞を紹介するよ!

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今夜21時はYouTubeライブ漢方Q&A! 
今回は久々の新見先生の1時間版みたいです。いろいろ話が弾みそう! 
お見逃しなく(見逃しても録画ありますけど)!

先生方、「漢方上達のための7箇条」は
コチラの本でチェックです↓


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