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窮すれば通ず、 窮すれば通ず!   新見正則

やってしまった最大級の失敗!

僕は小学生のころ、遮断機のない踏切で自転車で急いで渡り、反対側から電車が来て、危うく死にそうになったという思い出があります。

また、大学生のときは、宿の予約などしない気ままな旅行でいろいろ無茶をしていました。グランドキャニオンに行って、午後からコロラド川まで気軽な装備で一気に下りました。なんと帰りが2,000mにもなることを知ったのは後の祭りで、最後はトボトボとなんとか出発点に戻ったものの、最終バスはすでに出発していました。その時は危うくグランドキャニオンで野宿をしそうになりました。

僕は結構、直感で決めてます

失敗を後悔と訳せば、長く後悔したのは、オックスフォード大学医学博士に留学するときに、専門分野を選ぶに際して、「移植免疫学」を選んだことでした。卒業して外科医を9年程やって、その後の留学ですでに33歳でした。そんな時になんと「Transplant Immunology」と入学希望書類に書いてしまいました。当時、1992年、日本でも移植医療が始まった黎明期でした。そんな時に、血管外科医でサイエンティストになるには、移植免疫学がいいかなと直感で思ったのです。

そして、英語の試験にもなんとか合格しました。イギリスの試験はIELTSというもので、飯田橋にあるブルティッスカウンシルで年に数回行われていました。英語は実は得意ではありませんでしたが、なんと複数回受験すると当時は同じ問題が出題されました。そんな偶然も重なってなんとかオックスフォード大学医学博士の留学に必要な最低限度の点数はクリアできました。

世界最高峰のオックスフォードに丸腰で挑戦

なぜ、後悔したかというと、留学先はオックスフォード大学だったのです。それははじめからわかっていたことですが、世界最高峰の医学部博士課程で、「免疫学」の一分野を研究し、そこで学位を取るのは、実は超無謀だったのです。

僕が大学時代に「免疫学」の基礎的素養を身につけていればなんとかなったでしょう。しかし、僕は医学部で習った免疫学は、まったくオックスフォードでは通用しないものでした。つまり、まったく免疫学の素養がない30歳を越えた東洋人が、ある日突然、なんと世界のオックスフォード大学医学博士で超難解な免疫学を、それも英語で学び始めたのです!

免疫学って死ぬほど膨大なんですよ

免疫学は膨大な学問です。広大な宇宙を相手にする天文学にも似ていますし、本当に微細な状態を研究する素粒子の世界にも似ていると思っています。ただ、天文学も素粒子学も趣味の域を出ないので、実は本当のところは僕もしりません。

無謀すぎるよ

そんな膨大な世界に、まったく理論武装していない者が踏み込んだのです。医学部博士課程の学位(Doctor of Philosophy)を取得できなければ、留学費用をすべて返済するという条件なので本当に必死に勉強しました。結局5年間、一度も帰国しませんでした。本当に死に物狂いで勉強に明け暮れました。短い夏を除いて、基本的に冬、つまり夜が長いオックスフォードで、何度自分の選択を後悔したことか、数えきれません。

出会いに救われて学位取得できました

でも、上司であったKathryn J Wood女史と、オックスフォード大学外科教室(Nuffield Department of Surgery)のボスであったSir Peter J Morris に励まされ、なんとか移植免疫学を学ぶことができました。幸い移植免疫学は外科領域の手技を実験に要するために、帰国後も長く移植免疫学のサイエンティストとして論文を書いたり、大学院生を指導することができました。

1つ1つの努力は、つながってみないとわからない

アップルコンピュータの創業者であるスティーブジョブズは、スタンフォードの有名な卒業生に送るスピーチで、Connection Dots を唱えます。そのDots(複数の点)は最初から意図して作るものではなく、後から顧みると点と点が相互につながるといいます。本当にそうなのです。僕の人生最大級の失敗という1つの点が、ほかの点たちとつながって、今の僕につながります。

ラッキーと叫んで前に進め! 

僕は失敗や後悔を感じたら「ラッキー」と叫ぶことにしています(以前もnote
で書きました)。そんな逆境をラッキーと叫ぶことで、ラッキーと信じて振る舞うことで、不幸と思われることを将来のハッピーに転換できるのです。おかげで移植免疫学は、いまでも僕のアイデンティティーの1つです。オックスフォード大学博士課程での5年間を本当に意味のあるものにできたのです。

どんなときもあきらめずに、進め!

このコロナショックの時節、不幸や失敗や挫折があるでしょう。でも是非、無理矢理「ラッキー」と叫んで、将来その点が他とつながり意味のあるものになると信じて生き抜いて下さい。天は努力を見捨てません。僕はそう思っています。
 

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