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多様性を生きるー映画「最強のふたり」  新見正則


フランス映画「最強のふたり」は僕のお気に入り!

映画の主人公ドリスは複雑な家庭の事情で犯罪に手を染めながら育ちます。教養もなく貧困層の移民です。

もう一人の主人公はフィリップという頸椎損傷の富豪の青年です。フィリップは頚椎損傷で頸から下を動かすことができず、また頸から下の感覚もありません。そんな二人が出会い、ストーリーが始まります。

ある日、ドリスは失業保険の継続のため、就職活動を行っているという証明書が必要となります。偶然見つけたフィリップの介護の求人に形だけ応募しました。フィリップは、まったく介護経験がないドリスを周囲の反対を押し切って試用期間1ヵ月の条件で採用します。

ドリスの仕事は雑で、言葉使いも丁寧とは遠くめちゃくちゃですが、フィリップを障害者としてではなく、ひとりの人間として普通に(区別・差別なく)接します。

1ヵ月間の試用期間が過ぎ、なんとフィリップはドリスを正規雇用することにします。ドリスはふつうの介護者があえて聞かないような質問も、偏見なしに、直球でフィリップにぶつけるようになります。家族のはなし、性愛のはなし、そして障害の詳細などです。

ドリスはフィリップをスポーツカーに乗せます。フィリップの電動車椅子の速度もマックスまで上げます。そのうえ、大麻も勧めます。一方、フィリップはドリスに生きる意味を尋ねたりします。また、彼の絵を知人が高額で買いたくなるような場を作ります。そしてプライベートジェトで頸椎損傷の原因となったパラグライダーを一緒に体験しに行きます。

そして、ドリス自身もフィリップと一緒に成長していきます。次第に粗雑な話し方や態度がスマートになり、自分自身の才能も芽生えていきます。

ドリスを雇うことを反対していた使用人達も次第にフィリップの考えに親近感を覚えていきます。そして映画はクライマックスを迎えます。

障害をかかえるひとと、どう向き合うか

この映画は医療従事者に限らず、一般の方も是非とも1回は観てほしいと思います。僕が医師になって40年近くが経過しますが、僕の障害を抱える方への接し方も変化しています。

やっとこの10年ほどでドリスに近づいたと思っています。敢えて言えば上から目線の慇懃無礼な対応から、やっと同じ目線で接することができるようになったということです。

僕の人生も2/3以上が終了し、健康寿命的には3/4以上が終了し、ちょっと成長したのでしょう。

障害も個性として受け入れる

障害や病気は多様性のひとつです。他人事として腫れ物を扱うように特別に接するよりも、将来の自分事と思って接することが大切と思っています。

障害や病気の究極は死です。死からは万人が逃れることはできません。誰もが逃れることができないのが障害や病気です。障害や病気を社会で助け合うシステム(習慣)が希薄になっていると思います。お互いさまと思って、障害者や病気の人も分け隔てなく死ぬまで生き抜ける社会を作りたいと思っています。

良いものは良きなり

さて、映画の中で、ドリスが呼吸苦や幻想痛(感覚がないのに痛い)に大麻を勧める場面があります。大麻が医療に有用なら、処方箋薬としての利用する価値があります。

僕たちは固定観念に縛られず、良いものは受け容れて進化する社会であることを願っています。


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