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デキる医師がやっている3つのこと  新見正則


サイエンティストとしての医師

医学はサイエンスです。そしてサイエンスは日々進歩します。ですから、いつも勉強している人が「デキる医師」の大切な条件です。

西洋医学が未発達の明治期の寿命は約40歳でした。
その寿命はこの百数十年で女性は88歳を超え
男性は約80歳になり
約2倍に伸びました。

これは栄養管理や予防医療を西洋医学に含めれば、西洋医学の進歩のお陰です。
現代西洋医学登場前の漢方だけの時代では到達できなかった領域です。

西洋医学の進歩はスピードアップしている

西洋医学の進歩の速度は増加しています。
例えば乳がんの治療では、1804年に華岡青洲が朝鮮アサガオを使用した全身麻酔を世界最初に行い、乳がんの摘出手術を施行しました。

その後、乳がんの治療は、
どんな小さな乳がんでも、乳腺のほか、大胸筋と小胸筋、腋窩リンパ節を
郭清する定型的乳房切除術が1980年代まで行われていました。

ハルステッドが導入した、この定型的乳房切除術は
1980年代まで100年以上行われました。

ところが、手術を小さくしても予後は変わらないことが
ランダム化した大規模臨床試験で確認されました。

大胸筋と小胸筋の切除は省略され、乳腺も部分切除になり、
腋窩リンパ節郭清はセンチネルリンパ節生検の結果で省略できるようになり
手術はどんどんと小さくなっています。

乳がんの予後は、この30年で超速に改善しています。
それは抗がん剤が進歩したからです。
従来型の抗がん剤の開発に加え、ホルモン療法が導入され
抗HER2薬が開発されました。

そして、分子標的薬が登場し、
今や免疫チェックポイント阻害剤が使用されています。

時代の変化についていく

一方で乳腺の部分切除が大多数を占めた後、乳房の再建術が登場しました。
部分切除で不格好な乳腺が残るより、乳房を全切除して再建し
綺麗な乳房を手に入れることを希望する人が増加しています。

こんな進歩についていくには、自分で勉強するしかないのです。
他の医療の現場も日々進歩しています。
「デキる医師」には進歩についていける能力が必要です。
医学を含めた激動の時代の変化に対応できる勉強力が必要なのです。

臨床で本当に必要なのは患者対応能力

医学は学問ですが、医師は医療を行っています。
医学以外の患者さんと接する能力が必要なのです。
僕は医学と患者対応能力は「デキる医師」であるための両輪だと思います。

患者対応能力のひとつはわかりやすく説明できるか、
また患者さんの訴えを上手に聞き出すことができるかです。

ただこれらは「デキる医師」の最低条件です。
「デキる医師」は、患者さんの立場に立って、考え、話すことができます。
ガイドラインやプロトコールに乗って丁寧に話すことはじつは誰でもできます。

似ていますが、患者さんの立場に立って、患者さんの思いを推察し理解することはなかなか難しいのです。

相手の立場にたつ

保険診療で短い時間でたくさんの患者さんをさばかなければならない
現在の日本の保険医療のシステムでは相手の立場にたつ余裕はありません。
患者さんの立場を理解して、患者さんに寄り添うことを要領よく行うには
経験を要します。

自分がボトルネックになっていないか?

「デキる医師」に限らず、「デキる人」の条件は
人に助けてもらえる能力と思っています。
「デキる人」に見える人でも
じつは自分がボトルネックになっている人は多数います。

ボトルネックとは、その人の仕事が組織全体のスピードを決めているということです。その人がいないとそれ以上は回らないシステムということです。
一見素晴らしい組織に見えますが、それ以上は大きな組織になりません。

もちろん「デキる人」しかできないことは「デキる人」がやる必要があります。
できる限り他の人ができることは任せることが大切です。
そうして作った時間で「デキる人」しかできないことを進めれば
ますます「デキる人」になりますよ。

堂々とまわりに助けを求めよう

僕はそれは「助けて」と言える能力と思っています。
命令するのではなく「助けて」とお願いすることが人に任せるコツですよ。

「デキる医師」はつまりは「デキる人」ですね。
当然のことと思います。


デキる医師の3箇条

・ 勉強を続けられる
・相手の立場になれる
・ 助けてと言える


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