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誰にも言えないこと  新見正則

メリル・ストリープ!

じつは映画を観るのが好きですよ。女優のメリル・ストリープが最近気に入っています。どんな人物でもカメレオンみたいな演技力で変幻自在に演じる方です。彼女が若い頃の離婚裁判を題材にした「クレーマー・クレーマー」は昔から好きでした。またワシントンポストの社主をメリルが演じる「ペンタゴン・ペーパーズ」はマスコミの正しい姿勢を考えさせられる内容で気に入っています。アン・ハサウェイと共演した「プラダを着た悪魔」は何回も観ました。ファッション雑誌のカリスマ編集長をメリルが演じて、ファッションとは無縁だった大学を卒業したばかりのアンが編集部で成長していく物語です。

クリント・イーストウッドも大好きです

そしてクリント・イーストウッドの監督作品もいいですよ。若い頃の俳優としての西部劇映画やダーティーハリーシリーズも悪くはないですが、彼が映画監督と主演を務めた「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」「グラントリノ」「運び屋」なども良いですよ。

マディソン郡の橋

そのクリント・イーストウッドが監督と主演、メリル・ストリープが共演した「マディソン郡の橋」を先日久しぶりに観ました。良妻賢母と思われ続けて亡くなった母親の「火葬にして、マーロンズ・ブリッジから灰をまいてほしい」という遺言から、母の秘められた恋をたどる物語です。亡くなるまで誰にも言えずにいた秘密の恋。死後にそのはかない思いをかなえさせるというラブストーリーです。

母の秘密

人は表面的に見える姿と、ちょっと違った秘密を持っていることがあります。この映画を観て僕の亡くなった母が急に思い出されました。父親が亡くなってしばらくしてから、母に「どこかに行きたいところないの?」と尋ねると、「松本のお寺に行きたい」といいます。

そして当時、幼稚園生だった娘と妻、僕、母の4人で松本のお寺に行きました。母の古い記憶にあったお寺にあったお墓に行きました。母は車椅子に乗って膝に孫を抱いて、長い時間、お墓に手を合わせて、そしてなにか感慨深く、涙ぐんでいるようでした。その後、母が若い頃、結核で闘病している青年を看病しに松本でしばらく暮らしていたことがわかりました。その青年は看病の甲斐なく亡くなり、その後、僕の父親との縁ができ、僕が誕生したようです。母はそのことをずっと内緒にしていました。でも、ずっと心のどこかにしっかりしまっていたのだとおもいます。

患者さんの秘密

僕が新見正則医院を開業する前は、大学病院で多忙な外来をこなしていました。こなしていたのです。半日で100人近い患者さんを拝見することもありました。当然に午前中には終了しません。数分から長くても10分以内の診察でした。そんな診療には当方にも不満がありました。

そこで新型コロナウイルスの流行を機に自費診療で開業しました。お一人あたり30分以上お話できます。いつでも連絡できるように携帯電話の番号もお知らせしています。そうするといろいろなお話ができるのです。医療を超えて人生の話になることもあります。そんな時、患者さんが僕に心を許すのでしょう。家族にも秘密にしていることを語り始めることが少なからずあります。

医療を超えて人に寄り添う

人には秘め事があります。そんな秘め事を聞いてあげるのも病気を治す医師をちょっと超えた、人生に寄り添う医師としての責務と思っています。責務というより、その人の人生を一緒に理解したいのです。「マディソン郡の橋」を観て、母を思い出し、そしてなんだか不思議な力をもらいました。



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