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行くべき? コロナ下の学会  新見正則

学会参加という名目

遙か昔、医者になって数年経った頃、学会参加は胸躍る時間でした。大手を振って、病院から離れられるからです。24時間365日、激務に明け暮れ、そして深夜や休日といっても、当直や当番で病院にいることがほとんどでした。自宅に戻れても、何かあればポケットベル(当時携帯はありません)で呼ばれて、自分から病院へ電話して対応する仕組みになっていました。緊張が途切れることのない毎日でしたが、それでも医師としての技量が上達するので、表だって不平不満は誰も言わずに、それぞれが努力を重ねていました。そんな日常を送っていた僕たちにとって、学会参加は特別な時間でした。勉強という名目のもと、胸を張って「病院に行かずにOK」となる貴重な時間でした。地方の学会なら行き帰りの旅程も含めて数日は病院から自由になれました。当然に、東京で行われる学会よりも、地方で行われる学会に参加したかったのです。

機能的価値と感情的価値

さて、機能的価値と感情的価値という言葉をご存知ですか? 例えば、コンピューターを買うときに、メモリーの量や、CPUの速さ、画面の大きさなどの機能を優先して購入する人と、macのパソコンがかっこいい、スティーブジョブズが作ったmacの大ファンだという理由で購入する人がいます。つまり、前者が機能的価値で、後者が感情的価値です。

Why と What で考えてみよう

話は飛びます。TEDでのサイモンシネックの講演を聴いたことがありますか? 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか?」というタイトルです。
( https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja#t-17593 )

この講演で、彼はライト兄弟とスティーブ・ジョブズ、そしてマーチン・ルーサー・キングの話をします。彼らと同じようなことをできた人、やってきた人は複数いるのに、なぜそのなかで抜きんでることができたのだろうか? と疑問を呈します。彼は、What, How, Whyというサークルを描いて説明します。多くの人はWhatから始める。コンピューターを売ろうとするとき、こんなセールストークをしているのでは、と言います。

「我々のコンピューターはすばらしく、美しいデザインで簡単に使え、ユーザーフレンドリーです。ひとついりませんか?」

こんなトークでは僕は買わない。とサイモンシネックは続けます。
一方で、スティーブ・ジョブズはこう伝えます。

「私たちは、世界を変えるという信念ですべてのことを行っています。これまでと違う考え方に価値があると信じています。私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて、親しみやすい製品です。こうしてすばらしいコンピューターができあがりました。」

こう言われると買いたくなります。

つまり、前者は「もの(What)」 から始まり、後者は「大義 (Why)」 から始まっているとサイモンシネックは語ります。

Why(大義)をどう見いだすか?

新型コロナウイルス肺炎の流行で、一気にリモートに舵を切った世の中です。これから学会はどうなるのでしょう。医学の勉強という立ち位置からはオンラインで十分です。機能的価値にとってオンラインでほぼほぼ十分ということを多くの人は知ってしまいました。 今さら、機能的価値を求めて、わざわざオフラインの学会に行く人は少数でしょう。

しかし、そこに病院から自由になれるという僕が若い頃に抱いていたような感情的価値があれば、オフラインが生き残ります。僕のようなちょっと邪悪な感情的価値以外にも、偶然で有名な先生に会えるとか、なにか機能的価値以外のものが提供できれば、オフラインの学会も生き残ると思います。

つまり、学会の大義が大事に思えます。学会があるから学会をやる。これではサイモンシネックがいう What から始めることに他なりません。やはり、大義があるから学会をやる。そうであれば、Why からのスタートとなります。

そんな、感情的価値、機能的価値、そして Why、What について考えた新興医学出版社から頂いたお題でした。


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