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web3の基本概念であるコンポーザビリティのイノベーション

分散型のコンテンツプラットフォームであるMirror(web3版のnote的なサービス)に12/19に書いた記事をnoteでも転載します。

Mirrorは分散型のコンテンツプラットフォームです。ここでのコンテンツはnote、medium、xserverなどのような中央集権型のサービスではなく分散型ブロックチェーンに保管されるため、破棄や改変、持ち出しNG、サーバーダウンなどのリスクなく、収益化など含め自由にコントロールできる点が特徴です。

Mirror上ではこのような記事だけではなく、クラウンドファンディング、投票、NFT発行、オークション販売など様々な機能があり、Mirrorは自身を書き手のための単なるツールではなく、コミュニティやDAOのためのフルスタックのWeb3のクリエイティブパッケージと謳っています。

次回の記事でこのMirrorについて詳細をまとめたいと思いますが、初回エントリーはタイトルにもあるコンポーザビリティについて。

コンポーザビリティの概念

Composability

今回はweb3にある「コンポーザビリティ」という概念に深く感銘を受け、いてもたってもいられず筆を取りました。web3関連のエントリーはこれが初めてで少し緊張しています…

コンポーザビリティという概念は、web3プロジェクトにおいては、そのものがいわばコンポーネント(部品)的なものであって、他のものにも転用できる仕様が好ましいという考え方です。 レゴのようにすでにある部品を組み上げてあたらしい価値を生み出すイメージですね。

すでにあるコンポーネントを使って簡単に新しいプロダクトが作れるのが、web3ならではの特徴とも言えます。web2の世界でもフレームワーク、ライブラリ、APIという概念はありますが、基本的にプロダクトごとのソースコードは非公開であり、そこからオープンソースとして切り出されるものはほとんどありません。しかしweb3では基本全ての情報がブロックチェーン上に公開されているもので誰でも参照(コピー)が可能であり、ソース元の検証ができます。

情報や仕様を独占するという従来のアプローチではなく、他での活用を促すことで、自身の価値を上げていく考えて方に目から鱗の衝撃を受けました。

つまり、コンポーザビリティなプロダクトを作ることで、他のプロジェクトでもそれが転用されやすくなり、エコシステムの拡大に合わせてプロダクト自体のネットワーク効果が生まれてその価値が倍増するという考え方です。

レゴの特性と似ているコンポーザビリティ

LEGO

コンポーザビリティの理解においてはレゴの例えがわかりやすいでしょう。

1/共通基準

製造のフレームワークが明確であることは、全てのレゴのパーツが相互に機能しあっていることを意味しています。

2/ユーザー層の共有

レゴのパーツを「オープンソース」と見ることもできます。すべての人が同じ基準を持った同じ製品を使用しているので、知識の共有およびお互いの作品へのアクセスが簡単です。

3/活気のある市場

ある人のレゴのパーツが他の人の作品で大きな価値を持つこともあり得るので、レゴパーツの中古市場は非常に繁栄しています。

コンポーザビリティはネットワーク効果(モート)の一形態

network effect


事業を展開するにあたってMoat(堀=競合優位性)をどう作りあげるかが論点になりますが、インターネット関連の事業の場合その多くに引き合いに出されるのがネットワーク効果です。

※他にはブランド、囲い込み/スイッチングコスト、規模の経済、コスト優位性、免許やディストリビューションチャネルの独占などが挙げられます。

電話、SNS、フリマ、動画、決済などあらゆる領域で強烈なモートとして挙げられるネットワーク効果ですが、ざっくりいうと以下のようなサイクルが挙げられます。

1.便利だから使われる

2.使われるから便利になる

3.ますます便利だから使われる

4.使われるからもっと便利になる

一度そのはずみ車が回れば勝者総取りの世界が待っているのがこのネットワーク効果の魅力。自分が最も刺激を受けた点がコンポーザビリティはネットワーク効果の一形態であるという視点です。

つまり、1,000の製品に簡単に差し込めバリューアップできるモジュールを作ることができれば、それはコミュニティやエコシステムから注目されることになり、検証され、監査され、よりよいものにアップデートされ、これによりより多くの需要を引き寄せることができます。

透明性、分散性、非改ざん性などの特性をもつブロックチェーンをベースにしたweb3プロダクトに最も適したアプローチと言えるのではないでしょうか。まさに分散型共有のコンセプトにfitする切り口だと感じます。この領域でモートを作る際にはいかに他からコンポーズされるか?という視点はその設計段階からマストといえるでしょう。

web3のようなコンポーザブルな環境では、すでに評価されている他プロダクトや機能を複製(車輪を再発明)するインセンティブは少なく、その上に新たな価値を構築するインセンティブが働きます。

これから指数関数的に増えていくであろうブロックチェーン上のアプリ(Dapps=スマートコントラクトによって展開される創造物)は、コンポーザビリティの概念下において資本やブランド、または刹那的なマーケティングに左右されず、純粋なその価値インパクトと影響力によってコミュニティから正当な評価をされるものになりえます。

この視点を教えてくれた @divine_economy 氏いわく、コンポーザビリティは、Web3の2つの信条を定義していると言います。

1.コラボレーションは競争に勝るということ。

2.最高のモートはそもそもモートを持たないこと。

誰もが中で遊べるサンドボックスを作り、他の誰もが構築できるツールを与えよう

https://twitter.com/divine_economy

名言が過ぎますね…このコンポーザビリティの価値を強烈に示した最たる例が、8つのアイテム「テキスト」をオンチェーンで保持したNFTの「Loot」ですね。武器名となるテキストNFTを無料で配布することで、それを「面白い!」と思った開発者たちがコミュニティを立ち上げガバナンストークンを発行しそれにすぐに価値がつくようになりました。

その後、世界中の開発者たちによりコンポーズされたプロダクトがいくつも立ち上がったムーブメントです。

  • Lootmart
    Lootのアイテムを、個別のERC1155 のアイテムにバラすことができ、交換ができる

  • Reams
    LootのIDを元に、仮想世界の領域(土地)が自動で生成されるもので、ホルダーが発行できる

  • Abstract Loot
    Loot のメタデータを元に生成されるアニメーション・アートで、ホルダーが発行することができる

Lootについてはこの記事がわかりやすかったです。


ギブの思想でみんな勝つ

The Importance of Composable Wallets for Users and Developers

コンポーザブルなプロダクト例が顕著に見られるのは特にDeFiの領域でしょう。

分散型金融とも呼ばれるのこの領域は(中央集権の権化とされている)金融機関を介さずにローン、借入、取引、その他のトランザクションを可能にするものであり、それぞれの用途ごとにCompound、Uniswapなど代表的なものがありますが、それらはひとつのものにロックされているわけではなく、それぞれで相互連携しており「マネーレゴ」とも表現され急速に発展してきました。

結論、web3では自分たちで独占をして一人勝ちを目指すのではなく、コミュニティに技術やアイデアをギブしていくことで全員で勝つというコンセプトがあり、そこに自分が惹かれる点の一つとしてあります。

GAFAに見られるような独占的な概念ではなく、その強みをオープンにしていくことで業界全体を押し上げていくというスタンス、それはクリプト業界におけるイノベーションの推進力であり、小規模なチームが独自のプロジェクトを迅速に立ち上げることを可能にしています。

例えば、新しいクリプトゲームを開発するとしたら、そこでゼロから新しいマーケットプレイスを構築するのではなく、DeFiプロダクトをコンポーズすることで、ユーザーがゲーム内のアイテムを交換する機能を簡単に追加することができます。これによりゲーム、金融の2つの領域におけるユーザーにリーチも可能でマーケット拡大にも繋がります。

さらにいうとweb2ビジネスは、これまでのAPIと同じ概念でweb3プロダクトをコンポーズしていくことで、オープンなエコシステムへのチャネルを持つこととなり、それにより大きな価値をユーザーに提供することも可能です。

例えばRedditはそのプラットフォーム内でのポイントをERC-20トークン形式で配布する予定とのことです。これによりRedditユーザーはイーサリアムを軸としたweb3アプリケーションを活用できるようになり、Redditはweb2とweb3のブリッジというアプローチから能動的に将来性あるエコシステムに連携することができるのです。

このMIrrorでも自分の記事をNFT化する機能は、NFTを作成・交換するためのプロトコルZoraとの連携によってなりたっています。

web2時代にもあったAPIやライブラリという概念を、スマートコントラクトによる相互連携でアップデートした「コンポーザビリティ」は、エコシステムへ貢献するインセンティブを最大化するイノベーションと呼べるでしょう。

全員で勝つという思想のもと、ポジティブなスパイラルを生むことができるコンポーザビリティ、弊社ではその思想を強烈に練り込んだプロダクトを作っていきますので、興味ある方はぜひお話をさせてください。以下Twitterからコンタクトをお待ちしています。web3海外記事を翻訳しているDiscordコミュニティを運営していますので、参加希望の方はリプライやDMにください。

https://twitter.com/illshin


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