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橋梁点検の現場に行って思うこと

こんにちは、(有)神輝興産代表の中憲太郎です。

このコラムでは私の考えを述べることが多く、これまではどちらかというと私の理想の話をしてきました。しかし、理想の裏には常に現実があります。そこで、今回はその現実の部分を中心に書いていきたいと思います。

私たちの事業である橋梁点検は、繁忙期と閑散期の差が大きい業界です。毎年この時期はとくに忙しく、現場も内業も勤務時間が長くなってしまいます。繁忙期にも関わらず、全力を尽くしてくれるスタッフのみなさんに深く感謝申しあげます。

そして毎年この時期は、私も現場に出ることがよくあります。とくに今年は、1週間の出張を伴う現場に出ることもありました。現場とホテルの往復をする1週間です。そこで感じたこと、思ったことを共有させていただきます。

現場の現実

率直に感じたことを述べると、やっぱり現場は大変だということです。なにが大変か、大きく3つあります。

1.朝が早い

1つ目は、まず朝が早いことです。通常現場は9時始業です。現場を9時に始めるには8時半に集合する必要があります。遠いところでは現場に行くまでに1.5時間かかるケースもあるため、その場合、7時には出発しなくてはなりません。7時に出発するためには起きる時間はもっと早くなります。移動を短くするために、現場近くのホテルに泊ったとしても山奥の現場はホテルから遠いので、現場まで車で30分から1時間かかることもあります。移動時間を考慮すると、どうしても朝が早くなります。

2.体力的に大変

2つ目は、体力的に大変だということです。今回、私が担当したのは「踏査」という橋梁を点検するための下見のような作業です。点検作業に比べたら踏査のほうがラクではありますが、それでも大変でした。橋は大抵、川に架かっていることが多いので、橋の下に行くために川へ降りていかないといけません。そのために急斜面を降りていったり、タラップを登り降りしたり、中腰で歩き回ったりと、結構足腰にきます。

踏査だからまだよかったですが、これが点検になるとさらにハードです。ハシゴを何度も上り下りするのはもちろん、高所作業車などの機械は揺れ続けるため、立っているだけでも体力を消耗します。また、点検車両では届かない場所を点検するためのロープアクセスはもっと大変です。言葉のとおり、主にロープを用いて迅速に作業位置に向かう工法ですが、私は講習の段階でギブアップしたほどでした。いまは涼しい時期なのでまだいいですが、これが真夏の暑い日や、冬の寒い日となると、体力的にはさらに厳しくなります。現場は体力勝負であると身をもって感じました。

3.事務作業

3つ目は、体力を消耗してホテルに帰ったあとに、さらに事務作業があることです。写真の整理、現場で書いた野帳をきれいに書き直す作業だけで1時間ほどはかかりますし、翌週の現場のための準備、業者への連絡、その他電話やメール対応などをやっていると、さらに2〜3時間かかります。仮に16時に現場が終わって17時にホテルに帰ったとしても、夕食をはさみつつ疲れがあるなかで、これらの事務作業をしなければなりません。

改めて、現場の大変さを痛感しました。繁忙期にもかかわらず、文句一つ言わずに現場作業を頑張ってくれるスタッフたちに、心から感謝しています。

現場の改善に向けて

これらの現場の抱える課題に対して、「繁忙期だからしょうがない」「この業界はどこも同じだ」と簡単に受け入れてしまいそうになりますが、私はいまのこの状況が当たり前だとは思っていません。この状況をこの先もずっと続けたいとは考えていません。どう考えてもしんどいと思います。めちゃくちゃ改善したいと思っています。

もちろん、変えたいと強く感じていても、難しい部分は確かに存在します。これまでも様々な取り組みをしてきました。

週に4日、現場作業を行い、1日は事務作業に当てる。もしくは1日の作業時間を短くする。このようなアイデアがありました。しかし、それらが実現したことは今までありません。

重なるたくさんの業務、遠方への往復の移動時間、大型機械や規制を伴う作業など、週5日あるならそのまま現場をやってしまいたいと、現場担当者ならついつい思ってしまいます。その気持ちもよくわかります。

また、1日あたりで定められた数の橋を点検しなくてはならないノルマも存在します。そうなると結局、週4日では現場を回れない、となってしまいます。

向かう方向性

雇用を確保したまま、現場の負担を下げるにはどうしたらいいのか。人月工数で価格が決まる橋梁点検業界では難しい面もあります。しかし、現場の負荷を減らすのは決して無理なことではないと思います。

付加価値を追求し、受注単価をあげる。
効率化により、作業時間を短縮する。
ドローンなどの最新技術により、負荷そのものを下げる。
受注量を減らし、現場担当者の仕事の負荷を軽減する。
別の事業を増やし、繁忙期と閑散期の波を抑える。

いろいろな視点から様々なアイデアが出せると思います。ここで重要なのは、自分たちでコントロール可能な要素と、そうでない要素を明確に区別することです。

たとえば、ドローン技術の進化は自分たちではどうすることもできませんし、国の予算をどう配分するのかはコントロールできません。いつになるかわからないものをただ待つのではなく、自分たちの事業を、自分たちの働き方を、自分たちで変えていきたいです。

橋梁点検は社会にとって欠かせない事業です。誇りをもっていい仕事です。形は変わるかもしれませんが、この先も社会に必要とされる仕事です。この橋梁点検という仕事を持続可能にするためにどのようにすればいいのか、自分たちが気持ちよく働くにはどうしたらいいのか、まずはスタッフの皆さんの意見を聞いていきたいです。

今回、久しぶりに現場に出る中で、一緒に行ったメンバーと話したところ色々な気づきがありました。

経営側からの視点でしか見えないことはあります。一方で、現場側からしか見えないことも当然あります。1つの事象をいろんな角度から見て、話し合ってみることにより、今まで当たり前にやっていたことが当たり前ではなかったことに気づくかもしれません。

改善の答えは現場にあるのだと感じています。

私はなにをしたいのか

結局、私はなにをしたいのか。
神輝興産の元々のビジョンに掲げていた「業界を革新しリードする」ことを進めていきたいと思っています。アナログな業界を変えていき、今いるメンバーでチームとして、その目標に向かっていきたいのです。ポイントは、私ひとりでやることではなく、今一緒にいてくれるメンバーでやっていく、ということです。これが自分の原動力です。

そのためには、もっと働きやすい環境にしていきたいですし、ブラックだと言われる業界の中で、そうじゃない働き方を模索して変革していきたい。そう思っています。

おわりに

今回の現場では、協力会社から神輝興産へ研修に来ているスタッフと一緒に踏査に入りました。車での移動時間や食事中に、彼と対話する時間を持てました。一緒に車に乗るのも初めてだったと思います。

そのスタッフに神輝興産がどう見えるのか、どこに課題を感じるのか、忌憚のない意見を言っていただき、とてもよき時間になりました。

その中で感じたのは、視点を変えることで新たに気づくことの多さです。組織の課題やいろいろな問題点に対する答えは、実はスタッフのみなさんがすでに持っているような気がしています。私が見落としがちな点も、みなさんは日頃から感じ、熟知していると思います。

みなさんが、なんとなくぼんやりと感じていることを、私に伝えてほしいと思います。それにより、さらなる気づきが得られ、組織や環境をよい方向へ変えていくための力になると確信しています。

そして、その気づきをみなさんとの対話を通じてさらに磨き上げ、試行錯誤を重ねて改善していければと思っています。


有限会社神輝興産:https://www.shinki-ktr.co.jp/

代表 中憲太郎:https://twitter.com/ktr_kenaka

取材・言語化・見える化:大谷信(https://twitter.com/OtaniMkt

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