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人のふるまいを自然が祝福する建築──きっかけの建築 #3

中村拓志(NAP建築設計事務所)

1990年代後半の日本経済は、上向く兆しすらなかった。就職を目の前にした僕らは、銀行や株、通貨も、信用という名の虚構であったことを痛感していた。そんな時代にあって、ポストモダンの建築家たちによる「すべてはフィクションに過ぎない」という達観的でシニカルなデザインは空虚だった。それに僕は、数年前にカルトの虚構が富士の裾野で突きつけた事実、すなわち「倉庫とヘッドギアがあれば建築などなくてよい」という割切りにも苛立っていた。そして、その痛みや苛立ちを麻痺させるように、物質性や身体性、場所性、さらに時間性や歴史すらも消去し、虚構や物語をもち得ないほど漂白されたガラス張りの建築群が建築界を鎮静していくのを見て、僕は「違う、そうじゃないんだ」と呟いたのだった。….


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本記事で紹介されている建築

蕣居」(『新建築住宅特集』9807)
齋藤裕建築研究所

百日紅居」(『新建築住宅特集』9604)
齋藤裕建築研究所


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