建築を歩く #3──名古屋市・栄|新建築マップ連動企画
森下大成(大同大学大学院修士2年)
愛知県名古屋市栄は、多くの通りが直行する碁盤の目状の区画に、大規模商業施設や文化施設が密集する中心地です。現在開催されている「ガウディとサグラダファミリア展」を目当てに、「名古屋市美術館」(『新建築』8801)から街歩きを始めてみました。「名古屋市美術館」には鳥居のモチーフが随所に用いられており、神社好きにはたまらない作品です。
「名古屋市美術館」が位置する白川公園には、巨大なプラネタリウムドームが特徴的な「名古屋市科学館」もあり、このふたつの建築が公園に、名古屋らしいダイナミックで文化的な風景をもたらしているように思います。
そこから矢場町通りを少し東に行くと商業施設「NAGOYA FLAT」(『新建築』0502)が姿を見せます。偏光ルーバーを用いたファサードと1〜2階の基壇で構成されています。2階のエントランスホールに続くアプローチに目を引き込まれます。
さらに東へ行き、伊勢町通りを北に進むと、「伊勢木本社ビル」(『新建築』9405)と奥に「ナディアパーク」(『新建築』9702)が見えてきます。「伊勢木本社ビル」のファサードは雑誌掲載当時、コンクリート打放し仕上げでしたが、現在は白く塗られており、薄い板が建物から浮いているようにも見え、街に明るい印象をもたらしているように感じます。
「ナディアパーク」の麓にある矢場公園を東に進むと大津通にさしかかり、右に「名古屋PARCO」、左に「松坂屋名古屋店」が見えてきます。大型商業店舗がひしめき、多くの人通りでにぎわう、商業の中心地です。
「松坂屋名古屋店」から東へ進むと、幅員約100mの都市公園「久屋大通公園」へと突き当たります。全長約2kmの公園の中には、さまざまな広場や商業施設が点在しています。この日、エディオン久屋広場ではクリスマスイベントが開催されており、活気に満ち溢れていました。その先には「名古屋テレビ塔」(『新建築』2101)が天高く聳え立ち、久屋大通を名古屋のシンボル軸たらしめています。
そこから北に500mほど進むと「LOUIS VUITTON NAGOYA」(『新建築』9910)が見えます。ファサードにモアレが用いられており、歩きながら眺めていると刻一刻とその模様が変化する不思議な現象が見られます。北を向けば野々村一男の「双身像」越しに「名古屋テレビ塔」、東を向けば「オアシス21」(『新建築』0211)と「愛知芸術文化センター」(『新建築』9212)と、名建築に囲まれた贅沢なスポットです。
「オアシス21」は、栄地区特有の大規模な地下街と、久屋大通公園などの地上を繋げる広場として計画され、上空へと目を向ければ、宇宙に浮遊する生命の水をイメージした大屋根「水の宇宙船」が見えます。天気のいい日には屋根にたたえられた水面の光が、地下の「銀河の広場」へと降り注ぎます。
「愛知芸術文化センター」は円筒形のガラス面と巨大な四角形のボリュームで構成され、東西南北に立面を持ち、街並みに厳格さをもたらしています。
一度久屋大通公園に戻り、2020年にPark-PFI制度で整備された「Hisaya-odori Park 久屋大通公園」(『新建築』2101)を見ると、中央に水盤を設けた「ミズベヒロバ」には名古屋に本拠地を置く「名古屋グランパスエイト」の看板が立ち、靄で演出されていました。芝生には立ち入ることができませんが、傍の飲食店に腰掛けた人たちが風景として楽しんでいます。奥に見える「名古屋テレビ塔」は2020年にホテルへと改修補強され「久屋大通公園」を一望できる客室があります。一度は泊まってみたいものですね。
テレビ塔より北の「シバフヒロバ」ではマルシェが開催されていました。Shopbotでつくった雑貨やガラス細工などのさまざまなクラフト品が並び、ニッチなコミュニティが繰り広げられていました。広場には「FabCafe NAGOYA」も隣接しており、建築学生やアート関係者が自然と集まってきて、思わぬ出会いが生まれることも多々あります。
名古屋ダイナミックな風景は、特有の都市構造に、大規模な都市公園や建築が配置されることでつくり出されています。その風景に呼応するように、さまざまな企画が展開されることで多様なコミュニティが生まれています。ハードとソフトが互いに連関し、異なる界隈の人が混じり合う、偶然性に溢れた街なのだと、改めて見つめ直しました。
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