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月評出張版

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「月評」は前号の掲載プロジェクト・論文(時には編集のあり方)をさまざまな評者がさまざまな視点から批評するという企画です.「月評出張版」では,本誌と少し記事の表現の仕方を変えたり,… もっと読む
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2018年2月の記事一覧

「法」と「制度」から建築を考える─『新建築』2017年12月号月評

建築を規定する「法」と「制度」という言葉を使い分けて1年間考えていきます. 法(建築基準法や都市計画法など)+制度(依頼者や市民や地域社会が持つ規範のようなもの)=ドゥルーズ(『哲学の教科書』,1953年)にならって,法という言葉を「行為の制限」と,制度という言葉を「行為の肯定的な規範」として使います.どちらも人間がつくり出すものですが,建築に置き変えると,法は建築基準法や都市計画法などであり,制度は依頼者や市民や地域社会が持つ規範のようなものでしょうか.このふたつの総和と

建築にとって「他者」とは誰のことでしょうか?─『新建築』2017年12月号月評

からまりの他者性.これは,平田晃久さんがTree-ness Houseの解説に書かれている言葉です.さて,この「他者」とは誰のことでしょう. 読み方はいくつもある気がしますが,僕は益子義弘さんが著書で書かれていた 「木陰の気持ちよさには,木の側にそうしてやろうという意図がないことも含まれている」 という言葉を思い出しました. 確かに「木」というただそこに超然と立つのみの存在に「気持ちよさ」というアビリティを与えているのは,木陰で休む誰かであって木ではありません.与えら