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刹那の墜落


ほんの一瞬、世界が回る時がある。
例えば、躓いて体が浮き、地面に着くまでの時間。
空間が歪み、ゆっくりになるあの感覚。

その異様に長い一瞬に、頭に走った、
認めたくない感情を記録してみる。



芸術は命を削るようだ。

削り取られた跡がじんじんと、痛い。

限られたもので表現するのが、苦しくて、
モノやカタチにするのが、

生きていることに無理やり価値を見出して消費しているようで。

純粋無垢でいてほしい私の一部を
利用しているようで。

利用してしまった私が汚れているようで。


いつも、一対一だった。
「無邪気な子供」と手を繋いで、

音色に耳を傾け、自由に。

筆を走らせ、揺れる体に身を任せ。

感情のままにシャッターを切る。


唯一の逃げ場だった。心が安らいだ。

暗い現実から目を背けられた、唯一の場所。

なのに、今そこから逃げたくなってしまった。

逃げてしまえば、もうどこにもいけなくなりそうだ。


誰に見られなくとも、
世間に認められなくとも、


私の芸術は私の世界の中で生きているのに。

誰の記憶に残らなくとも、

私だけは死ぬまで覚えているのに。


今まで、
発した言葉、行動、写真、絵、頭の中のもの
全部、

確かにここに「存在」しているのに。


価値があるとかないとか、どうでもいいのに。


「無邪気な子供」は、どこへ行ってしまったの。

見失ってしまった。私の手を離して逃げてしまった。

私もずいぶん遠くまで来てしまった、
ここはどこなんだろう。


私はどこにいるの。



こんな風にまだ成長途中らしい。
私は、私の中の芸術をまだ上手く扱えていないらしい。
不器用で笑えてくるけど、仕方ない。
ぐちゃぐちゃだけど、まあいいや。

認めたくない感情が時折過呼吸のように響くのは、前に進んでいる証拠だと、信じたい。

良い変化によって生じた、「ただの拒否反応」だと。
刹那に支配されないように、
倒れてもゆっくり立ち上がっていく。




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