YOASOBI「アンコール」のこと。
こんにちは。桜小路いをりです。
YOASOBIの1st EP「THE BOOK」を毎日のように聴くようになって、もうすぐ1年。
それぞれの楽曲について、自分の感想や考察が固まってきたので、のんびりですが、1曲ずつ考察などを書いていきたいと思います。
今回は、「アンコール」についてです。(原作小説のネタバレが含まれますので、ご注意ください。まだ読んでいない方は、ぜひ読んでから戻ってきていただけると嬉しいです。)
「アンコール」は、このEPで初音源化した楽曲です。
原作小説は、水上下波さんの「世界の終わりと、さよならのうた」でした。題名の通り、「明日で世界が終わる日」が舞台です。
この小説の中で、いちばん印象に残っている部分があります。主人公が、埃っぽい倉庫のような場所で目を覚ますシーンです。辺りには、楽器が散らばっています。
主人公が出会った男性は、倉庫にぽつんと置かれたピアノを見つけてから、町中の楽器をそこに集め始めます。
この行動を、私は「楽器たちが世界が終わる瞬間も寂しくないようにしてあげたい」という、男性の優しさの表れだと思いました。
楽器は、奏でる人がいなければ本来の「音を鳴らす」という役目を果たすことができません。
危機的状況の中とは言え、これまで大切に使われてきた楽器たちが打ち捨てられ、ただ孤独の中で迎える「世界の終わり」とは、どれほど寂しいものでしょうか。
男性は、そんな楽器たちに思わず自分を重ね、「彼ら」を集めたのだと重います。
この世の全ての楽器を救うことはできなくても、せめて、自分がいる町の楽器だけでも。
この楽曲には、そんな物語の寂しさが、率直に反映されています。
初めてこの曲を聴いた時、ikuraさんの声も歌い方もとても寂しそうで切なくて、胸の奥がきゅっとなったのを今でも覚えています。
ただ、「アンコール」という楽曲自体には、小説の寂寥感や切なさを、毛布のような優しさがふんわりと覆っているような、不思議な心地よさがあります。
また、「明日世界は終わるんだって」というフレーズも、いちばん最初とラスサビで、微妙にニュアンスが異なります。
前者は、「世界が終わる」ことに対する諦めが見え隠れしており、後者には「世界が終わってしまう」ことへの名残惜しさが含まれていると思います。
小説の最後では、世界の終わりに偶然出会った二人が、共に音楽を奏でます。
「アンコール」という題名には、この音楽をもう一度、これから奏でたい、という想いが込められているのではないでしょうか。
あるいは、コンサートの終わりには必ずアンコールが付き物であるように。
「世界の終わり」だって、ただすっぱりと終わるのではなく、名残を惜しむ猶予があってもいいという意味もあるのかもしれません。
切なくて寂しくて、砂時計の最後の砂が落ちる寸前のような危うさがあり、でもだからこそ、その美しく繊細な音色が際立つ「アンコール」。
みなさんは、どんな考察を立てますか?
この記事が、そんなことを考えるきっかけになれば幸いです。
誤って消してしまったので、加筆修正して再投稿しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。