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桜色の本棚

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私が出会った素敵な本のこと、読書のことを綴った記事をまとめました。読者の方と本との橋渡しができたら嬉しいです。
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#小説

宮部みゆきさん『ソロモンの偽証』/誰かの真実、ひとつの事実。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、宮部みゆきさんの『ソロモンの偽証』を読破しました。 『ソロモンの偽証』は、たびたび映画化・ドラマ化もされている、本好きなら絶対タイトルは知っているくらい大人気の作品。 私自身、小学生の頃に文庫本発売のポスターが書店に大きく掲げられているのを見てから、「いつか読んでみたい」とずっと思っていた憧れのシリーズでした。 一步引いちゃうくらい分厚い単行本で3冊、文庫本だと6冊の超長編ですが、あえて言わせてください。 もしパラレルワールドが

人工知能の限界は~東野圭吾さん『魔女と過ごした七日間』~

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、東野圭吾さんの『魔女と過ごした七日間』を読み終えました。 元見当たり捜査員の父親を殺された中学3年生の陸真が、「魔女」を自称する不思議な女性と出会うことから、物語は始まります。 父親が隠していた秘密に驚く陸真ですが、彼女と協力して犯人を追うことに。 「魔女」こと羽原円華は、自身がもつ特異な能力と大胆な行動力を活かして、どんどん真相に近づいていきます。 「人工知能」と「DNA鑑定」について深く考えさせられる一冊です。 個人的に久

音楽は、いつだって美しい。〜安壇美緒さん『ラブカは静かに弓を持つ』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 安壇美緒さんの本屋大賞ノミネート作、『ラブカは静かに弓を持つ』を読み終えました。 チェロを、その音色を、音楽を通して織り成される、圧巻の小説でした。 装丁に惹かれて手に取ったのですが、読めてよかったです。 物語の主人公は、音楽にまつわる著作権を管理する組織、通称「全著連」で働く橘という名前の青年。 彼は、幼少期からチェロを習っていましたが、ある事件をきっかけにチェロを辞め、傷を抱えながら淡々とした日常を過ごしていました。 彼の日常が変

物語の魔力に想う〜住野よるさん『腹を割ったら血が出るだけさ』〜

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、住野よるさんの『腹を割ったら血が出るだけさ』を読み終えました。 残酷で、痛くて、切実で。 でも、行間がすごく優しくて。 私は、こんなふうに真っ直ぐに小説そのものを捉えたことがあっただろうか。 私は、この物語の誰に似ているだろうか。 そんなふうに、読んでいる最中はもちろんのこと、読んだ後も、ずっと逡巡し続けています。 この本の登場人物たちは、それぞれが「どんなものよりも大切にしていること」を持っています。 そして、それは、人間

クリスマスの「おとも」の音楽と本。

こんにちは。桜小路いをりです。 今日はクリスマスイブということで、クリスマスに聴きたい音楽と、クリスマスに読みたい本をいくつかピックアップしてみました。 音楽は、お気に入りの「歌ってみた」やカバーも含めてご紹介していきます。 最後までお読みいただけると嬉しいです。 クリスマスの「おとも」の音楽こはならむ「スターライトパレード」 まずは、SEKAI NO OWARIの「スターライトパレード」の「歌ってみた」です。 メリーゴーランドの前で撮影された映像が、曲のファンタ