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桜色の本棚

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私が出会った素敵な本のこと、読書のことを綴った記事をまとめました。読者の方と本との橋渡しができたら嬉しいです。
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2024年8月の記事一覧

ときには、心に銀の針を忍ばせて。

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、『言葉は、「私」をつくる。』という記事を投稿しました。 この記事で散々、言葉を使うことの重さと言葉への美意識について書いたのに、途端に「心に針を忍ばせる」なんてタイトルの記事を出すことにしたのには、理由があります。 『言葉は、「私」をつくる。』の記事の文章だけ読むと、「前向きで綺麗な言葉を使うことが何より大切」というニュアンスが少し強すぎたのではないかな、と思ったんです。 生きていれば、ときにはすごく腹が立ったり、誰か、何かにひと

あの日の決断、もしやり直せたら。~『ミッドナイト・ライブラリー』~

こんにちは。桜小路いをりです。 先日、『ミッドナイト・ライブラリー』という小説を読み終えました。 やや重いテーマを扱っている物語ですが、清々しい読後感が印象的な1冊でした。 著者は、イギリスの小説家のマット・ヘイグさん、訳は浅倉卓弥さんです。 この物語の主人公は、ノーラという名の女性。 彼女は、仕事を失い、飼い猫を亡くし、話を聴いてくれる人も周りにおらず、人生に絶望しきって命を絶とうとしてしまいます。 目覚めたとき、ノーラの目の前にあったのは、無限に書棚が広がる不