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渋谷


年に数回来るかどうかの渋谷という街に来てしまった。
いつ行っても人混みで、あんなに広い道なのに人で埋め尽くされていて普通に歩くこともできない。おまけに派手目な人で溢れ、高すぎる建物が沢山並んでいる。

そんな街を、人混みが大嫌いな僕が好きなわけがない。
休みの日に友達と会うことさえも最近は回避しているのに。


それなのになぜ今回渋谷という街に降り立ってしまったのか。
それは推しのファンクラブイベントがあるからだ。

推しのためなら苦手な渋谷にも行ってしまう。
改めて推しの力はすごいと思う。

とは言え開催が渋谷と聞いた時0.006秒ほど迷った。
いつもはノールック申し込みなのに0.006秒も迷ってしまった。
これはファン失格だ。ファンたるもの常に脳死でポチらなければいけない(?)

となんだかんだで渋谷という街に行くことになったのでどうせなら渋谷という街を満喫して
「俺渋谷のこと結構知っているけど?」
というわけのわからないマウントをとりたいと思い、渋谷という街を調べてみることにした。

とは言っても僕が大体出かける時はカフェに行く時だけなので、渋谷にある良さそうなカフェを何個かピックアップしてあとは当日の自分の気持ちに従って決めようということにした。

当日。

事前に調べておいたカフェを改めて調べ直しておこうかなと行きの電車の中で調べていた時に、ふとめちゃくちゃ惹かれるカフェを見つけてしまった。

ここにどうしても行きたい!
当日までに10分もかけて調べていた3つくらいのカフェのことなんて忘れるくらいに興味が湧いた。

古びたビルの(失礼)エレベーターの8のボタンを押して辿り着いた。
インターホンを押してくださいという文言に従い、震えかけた手を得意のすまし顔で何とか誤魔化し、インターホンを押した。
「中にお入りください」という店員さんの声が聞こえ勇気を出してドアを開けた。

そこには部屋の壁一杯に敷き詰められている本たち。
それだけで勝手にワクワクしている僕にお店のご案内をしてくれる店員さん。
正直お店の案内なんてほとんど聞いていないくらいには興奮していた。
辛うじて聞いていた内容は、どうやら飲み物も食べ物もおっけいで、友人とお話しながらでもいい図書室カフェ。なんだ最高じゃないか。
コーヒーと落ち着く照明とゆったりとした音楽と程よい雑音。
こんな贅沢な空間があっていいのか。僕は興奮を隠しきれない様子で本を物色した。

長い本探しの旅の末選んだのは、自分で持ってきた読みかけの本。

社会人大学人見知り学部卒業見込 / 若林正恭

正直お店の雰囲気には合っていなかったが、どうしても読みたかったので読むことにした。

暗い。暗すぎる。せっかく上がっていた気持ちが下りに下がった。
いや、でもこれくらいのテンションが僕には丁度良いし、若林さんの書くエッセイはどうしてこんなにも面白いのだろうと本の内容にテンションが上がっていた中、ふと、奥に座っているカップルの存在を認識した。

そのカップルは隣にいるにも関わらず会話をするわけでもなくお互いが好きな本を読んでいる。

これだ!!!!
誰も興味のカケラもないと思うが、僕が憧れているカップル像。
同じ空間にいるのにお互いが好きなことを夢中でやって、飽きた頃に少し他愛もない会話をしてまた自分の世界に戻っていく。
見ているだけでもすごく心地良くなって何だか温かい気持ちになった。きっとあのカップルは末長く幸せになるに違いない。僕が保証する。
あのカップルが別れた時が人類滅亡の時だ。
と結構真剣に思ったほど。

とまあそんなところも含めて最高だったので
僕はまた渋谷という街の小さなお気に入りカフェに来るためにまたこの街にきてしまうんだろうなと思った。
何だか来る前より少しだけ「悪くないやん、渋谷。」
とどこの誰の目線か分からない気持ちを持っていた。


あ、ところでそういえば今日クリスマスイヴイヴじゃん。

ま、まあ26歳の独身男性のクリスマスイヴイヴなんてみんなこんなもんですよ。
ね?みんなそうですよね?????涙

もちろん、推しのイベントは最高だったことは言うまでもないのだが、やっぱり言いたいのでまた別の機会に。

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