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職人の「もったいない」意識から生まれたリコッタ

2大会連続最優秀のリコッタ


実は、CHEESE STANDの製品のなかで、もっとも完成度が高い、と僕自身が感じているのが「リッコタ」なんです。

NPO法人 チーズプロフェッショナル協会 (CPA)が主催し、2年に一度開かれる国産ナチュラルチーズのコンテスト「ジャパンチーズアワード」 のリコッタ(プレーン)部門でも、2016年と2018年に連続で金賞かつ最優秀賞をいただいていて、チーズの専門家の方からもきちんと評価もしていただいています。

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僕が考える「おいしいリコッタ」の第1条件は、テクスチャー(食感)です。ボソボソでも、水分が多すぎもせず、粒子のかたまりにエアー感があって「ホワホワ」していること。リコッタの製法は、独学なのですが、だからこそ、この理想のリコッタだけを求めて試行錯誤することができたともいえます。

独学がため、以下述べること違っていたら、モッツァーマンのキャラのリコちゃんの可愛さに免じて許してください。その後ご指摘ください。

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ホワホワのテクスチャーは酸凝固と熱凝固の見極め

リコッタは、モッツァレラを作る工程で出るホエイから作ります。使い終わったホエイには、ホエイタンパクと呼ばれる成分が残っているので、これを熱やpH値をコントロールしながら凝固させて作ります。

ホエイを熱していくと80度程度でとても小さな白い粒が浮いてきて熱凝固が始まります。そこに酸凝固を促す前日のホエイを投入します。これで酸凝固も促し、ホエイタンパクを凝固させます。

熱を加え続けると、熱によりタンパク質が硬くなっていきます。保有水分量も減り、硬いリコッタが出来上がります。

熱の加え方、酸凝固をスタートするタイミングも重要です。

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ホエイタンパクの粒感を見極めながら、熱凝固と酸凝固のバランスを取り、理想のテクスチャーに近づけていくのが、チーズ職人の腕の見せ所といえます。

もちろん、この時には、味のバランスもとります。ホエイの加熱のタイミングが遅くなったり、酸凝固のもととなる前日のホエイを投入する量が適正でないと酸味が出てしまいます。

また、食べたことのある方には、わかっていただけると思うのですが、CHEESE STANDのリコッタには、しっかりとした甘味があるのも特徴。これは、pHの見極めをしっかりとコントロールしているためです。

と、書いてみると簡単そうに感じるかもしてませんが、理想の食感と甘味のバランスは、何度も製造データをとって導き出したもので、その膨大な量の繰り返しをしてきたことが、今のリコッタに対する自信になっていると思っています。

リコッタをとり終えたホエイをさらに再利用したい

リコッタは、ある意味「チーズの副産物」です。

古代ローマでリコッタは生まれたと言われています。歴史を辿ると比較的に豊かとは言い難い南イタリアの多くではモッツァレラを作り、そのホエイという「資源」を大切にしなければならなく、そのためにチーズ職人たちが知恵を絞ったんだと思います。

実は、リコッタは、ホエイ1リットルに対しわずか50グラム程度しかとれません。つまり、まだまだリコッタ後の大量にホエイが残ってしまいます。

リコッタをとり終えたホエイは、現状ではCHEESE STANDでは使い道がなく、廃棄するしかありません。その量は、実は毎日200リットル程度にもなります。まだこのホエイには、まだ糖分や栄養価が含まれていて、どうしても、もったいない、何か再利用できないか、とつねに考えています。

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店舗ですでに使いきったホエイを、家畜の飼料にくわえたり、畑にまいたりされ、再利用が進んでいます。ホエイ豚とかよく聞きますよね。大きな乳業メーカーではホエイを遠心分離機などにかけパウダーなどにして、化粧水やプロテインなどにも転用されます。ただ大規模な設備投資が必要なため、現在の工房では難しいのが現状です。

少しおいておくとpHが下がり、酸味をつかって自分たちでもピクルスやマリネに使ったり、お酒を作ったりするなど再利用もできそうです。店舗ではホエイドリンクとして提供していますが、それでも量はわずかです。

そこで今、関東圏のチーズ生産者を回ってみんなから回収したホエイから、何かできないか、などと勝手に考えています。

また、ホエイを使った料理や事業を提案してくださる方も募集しています。

先人であるイタリアのチーズ職人たちがしたように、「もったいない」という心から、新しい価値を日本で生み出すことができたら、とても素晴らしいことなのではないでしょうか。

持続可能な社会の実現のために、僕たちチーズ職人がチーズを通じて積極的に社会と繋がっていくは、日本の食の未来にとってとても大切になことだと思っています。


(取材、構成/江六前一郎)



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