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【妖怪百科】輪入道

 入道系の妖怪は多い。見上げ入道、大入道、加牟波理入道(かんばりにゅうどう)などが挙げられる。輪入道は入道系を代表する妖怪の一人だといえよう。
 そもそも入道とはなにか?
 辞書的な意味としては、仏門に入ったもの。あるいは坊主頭の化け物とある。普段我々が眼にする入道は、主に化け物の名称が多い。つまり入道とは坊主頭の化け物という意味が一般的だろう。
 私は輪入道という名前が非常に気に入っている。入道を母音のみで発音すると、うーおーとなる。輪入道の輪を足すとあうーおーとなり、「い」と「え」の喉を締める発音を排除し、A to Oの順に発音することになる。これがなんとも口に気持ちがいい。こう言った舌触りの良さも輪入道の人気に繋がっているのではないかと分析できる。
 さて、輪入道の本質からずいぶん脱線した話を長々としてしまったが、輪入道を簡単に説明すると、燃えながら回転する車輪の中心に巨大な坊主頭、つまりは入道の顔が張り付いた妖怪となる。要素を書き出すだけでも非常に恐ろしい。驚かすに飽き足らず、火と車輪という殺傷能力の高い武器を携え高速で動き回るのだ。ただでさえ火事の恐怖に怯えていた江戸時代の人々にとっては恐ろしいしかない。こんなものが外を走り回っていると考えると一歩も家から出たくないだろう。輪入道を避けるためのお札付があったという話だから、非常に恐れられていた妖怪だということがよくわかる。
 ここで一つ疑問が湧いてくる。入道の顔は車輪とともに回るのか、あるいは、同じ向きに固定されているのかである。あくまでも妖怪であることを考えると、物理法則に従ういわれもなく、構造を気にする必要はない。なんとなくのイメージでは、固定された顔の周りを燃え盛る車輪がグルグル回る気がする。しかし、顔も一緒に回った方が恐ろしいのではないかと思う。それは恐らく、顔も同時に回る方が、世の物理法則に従っており、心理的に重さを感じるからだろう。顔が固定されていると、ふわふわ浮いている印象を受け、まずはぶつかった瞬間熱いだろうなと直感的に考える。重さを感じた瞬間、直感は「痛い!」の方が「熱い!」より先に予感してしまう。故に顔も一緒に回転する方が、恐ろしさは倍増するはずだ。
 妖怪アニメーターの方は是非参照にしてほしい。


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