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糸魚川・白馬tabiwaパス

大糸北線全駅訪問の続編を書いているところですが、急に興味深いニュースが入りましたので、この件について書きます。

はじめに:今日のニュース

JR西日本が2024年6月29日に「糸魚川・白馬tabiwaパス」の発売を発表しました。

ちょうど6月中旬に大糸線増便バスに乗車し、いろいろ思うところがあり、記事にも書きました。まさかこれだけ早期に「策」を打ち出されてくるとは。

注目点1:関係各所・JR西日本の注力度

今回のニュースリリース、書き出しが以下のように書かれています。

大糸線活性化協議会、大糸線利用促進輸送強化期成同盟会および西日本旅客鉄道株式会社では、北陸新幹線 金沢-敦賀間開業を記念し「北陸新幹線でGo!大糸線キャンペーン」と題して、観光誘客に向けたプロモーションやJR大糸線の利便性向上を目的としたバスによる増便運行(糸魚川-白馬間 4 往復/日)等、さまざまな取組みを実施しています。

JR西日本ニュースリリースより

大糸線に関する沿線の協議会・同盟会およびJR西日本が関係する施策をしており、この一環で「糸魚川・白馬tabiwaパス」を発売する、という流れになっています。

北陸新幹線敦賀延伸で北陸新幹線が様々な点で盛り上がっており、糸魚川〜白馬エリアもこの流れに乗っている、という点は、これまでの大糸線活性化協議会等のプロモーションの様子をSNSで拝見していて感じていました。また、2024年5月の大糸線活性化協議会会合の模様からも「力の入れ具合」を感じ取り、「増便バス」施策で具体的な策が出てきた時も個人的に驚いたものです。

2024年5月の活性化協議会会合で既に今回の「糸魚川・白馬tabiwaパス」の発売が決まっていたのかは、関係者でも無い私が知る由もありません。
しかし、6月中旬に大糸北線に乗車した際、糸魚川から中土までの区間を「北陸おでかけtabiwaパス」を使い、中土から白馬までは普通乗車券(きっぷ)を購入して何度も乗車した私としては、「6月から発売して欲しかった。。。」という心境です。が、6月はシーズン前、閑散期ということで、時期尚早だったのかもしれません。
特に、増便バスは鉄道の料金体系をもとにした運賃の収受を行っており、きっぷの購入を前提としたり、車内での現金精算を行うのは若干(運転手さん目線に立つと)「酷」なところがあるなぁ、と乗車して感じていました。しかし、フリーパス形式のチケットがあると運転手さんは画面を見るだけでOK、でかなり負担が減るのではないか、と思った次第です。

さらに驚いた点は、価格設定・有効期間・利用区間。
まず価格は大人2日間¥1,000。子供は¥500で、当日の購入も可能。(北陸おでかけtabiwaパスは利用3日前という条件があった)
この価格で2日間、糸魚川から中土はおろか、JR東日本との境界駅の南小谷を越えて、白馬まで利用できる、という、まさかのJR2社またぎの利用区間設定。私が知らないだけかもしれませんが、こうした「JR2社またぎ」の地域限定パスはあまり見たことがありません。「青春18きっぷ」のようなJR旅客鉄道会社全線で使えるパスはまだしも、JR2社が近接する地域で2社をまたぐようなパスは珍しいように思います。(経理観点で2社の精算はどうするのだろうか、とか、パス利用者の収益はどう按分されるのだろうか、等々、経営・収益への影響はどうなのか、という点も素人ながらに興味があります)

南小谷-中土間のJR東西の境界地点

北陸新幹線(特急あずさでも良いかも)で白馬、小谷、糸魚川周辺にやってきて、このエリアで宿泊し、大糸線でこの区間を往復する、という使い方でも十分に実用に耐えうるチケットだな、と思いました。
あわよくば、白馬、小谷、糸魚川の宿泊に加え、温泉や自然などの観光地の訪問、地元産品の購買にもしっかりリンクして、この地域の観光と経済が振興することが地域にとって本質的に望ましいことだと思います。
そのためにも、糸魚川・白馬だけでない途中の立ち寄りスポットへアクセスする手段の認知度、利便性の向上などが図られると良いのではないか、と感じる次第です。(北小谷からの道の駅、平岩周辺の温泉、根地のフォッサマグナパークと酒蔵、等々。)

何はともあれ、今年の大糸北線の利用振興に関する、JR西日本を含む関係各所の力の入れ具合を感じるのは確かです。

注目点2:tabiwaの活用

JR西日本の「観光ナビ」アプリ"tabiwa by WESTER"は、首都圏住まいの私でもインストールして、西日本に旅する際は使う機会があるだろう、と思ってたまにアプリを開いて眺めていました。

「北陸」エリアに絞った画面を見ていた時、いつの頃からか(2023年末か、2024年に入ってから、くらいの時期)、「福井県」「石川県」「富山県」という地域カテゴリーの並びに「糸魚川・白馬」というカテゴリーが加わって、「おや?」と思ったことがあります。「糸魚川・白馬エリアの観光振興で何か企画でもあるのだろうか?」と思って見ていると、いつの頃からか白馬八方尾根アルペンラインのチケットや、栂池高原のロープウェイのチケットがtabiwaで購入できるようになっていました。

とはいえ、「糸魚川・白馬の鉄道=大糸線」を対象にしたチケットは取り扱うのか?取り扱うだけの価値ある路線・地域としてJR西日本は見るのだろうか?と、下衆の勘繰りをしていたところ、まさか「「糸魚川・白馬の鉄道=大糸線」を対象にしたチケット」がそのまま発売されるとは。

私は鉄道事業者の従業員でもなんでも無い、いち利用者・旅行者なので、アプリのチケットリリースまでの商品設計・アプリへの実装・収益構造など専門的なことは知る由もないのですが、既存の乗車券発売の枠組み・システムと比べると商品設計からリリースまでのスピードは短いのでしょうか。アプリチケットの設計の柔軟性、企画からリリースまでの速さ、そして鉄道事業者にとっての経済的なメリットなど、実態についてはとても興味が湧きます。
tabiwaを開くと、JR西日本エリアの地域ごとのアプリチケットは北陸地域のみならず山陰、瀬戸内など様々あります。

私も2023年に「小浜線tabiwaパス」を使って小浜線を旅したことがあります。気がつくとチケットのバリエーションが増えていて驚くばかりですが、その波が大糸線にもやってきた、という点はさらなる驚きでした。まあ、嬉しい驚きなのですが。

惜しいのは、どうも英語版tabiwaがなさそうな点。(もし既にあるようでしたら私の認識不足です。)
キャッシュレス、チケットレスは外国人観光客が選好しそうに思えるので、tabiwaでいちどアプリチケットを購入してもらえれば、あとはスマートフォンの画面を提示するだけで糸魚川・白馬間の移動は容易にできる、となると、好印象が伝播してパスの利用者も相応に増えることが期待できそうな気もするのですが、今のところはインバウンド客は想定外なのでしょうか。今後の展開がどうなるか、注目ポイントだと思います。(インバウンドの旅行客はJAPAN RAIL PASSを使うんでしょうかね。。)

tabiwaに類するアプリチケットはJR西日本以外でも、例えばJR東日本はTabi-CONNECT(いわゆる"MaaS"と称するサービスの枠組み)を基盤にした様々な地域限定パスを発売しています。私も「ときわ路パス」「あおもりホリデーパス」「いわてホリデーパス」等々、複数使用経験がありますが、指定席券売機に並ぶ必要もなく、オンラインでキャッシュレス決済ができる手軽さの恩恵を受けています。

ちなみに難点としては、アプリでは自動改札が使えず、係員窓口でアプリを提示する必要がありますが、その窓口が混んでいると待つ羽目になる、といった点があります。ただ、アプリチケットにQRコードがつき、QR読み取り機付きの自動改札が広まってきた際は、QR読み取り機にアプリチケットをかざして通過することも可能になると思われます。よって、中長期的には利便性は高まるのでは、と期待しています。

あとは、UI(ユーザーインターフェイス・利用者にとって使いやすい画面構成・画面遷移・見た目)がもっと万人にとって使いやすいものに洗練させていく必要もあるかと思います。例えば、文字や写真のサイズを中高年・ご高齢の旅行者にとっても見えやすくかつ明快に操作できるような建て付けにすることで、中高年・ご高齢の方にご利用いただく心理的ハードルを下げ、触ってもらう→使ってもらう→メリットを実感してもらう→また使いたい、と思っていただく、という好循環が生めると良いのではないでしょうか。

まだまだ理想的な利用環境を目指すには課題はありそうですが、アプリ型チケットの商品設計の柔軟性、利用のしやすさは魅力的に感じました。

まとめ

大糸線好き(かつ大糸線応援隊員)としては、「糸魚川・白馬tabiwaパス」という願ったり叶ったりなチケットの登場を素直に喜ばしいと思っています。
これを契機に、少しでも糸魚川・小谷・白馬に足を運ぶ人が増えて、地域の魅力と大糸線の魅力を楽しむ人が増えるといいな、と思った次第です。

糸魚川・白馬tabiwaパスで大糸線増便バスにも乗れます

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