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ルーターという魔法の木工機械

楽器業界に入ってもう40年近くになるけど、ずっとその間僕を支えてくれた木工用機械がある。「ルーターマシン RO-116」という。

庄田鉄工という浜松の機械メーカーが作っている機械で、木工業界ではかなり定番の汎用機だと思う。最近はもう流石に作っていないのかな。

この機械の素晴らしいのは、数十年間基本的な設計を変えていないこと。

つまり例え30年前の機械であっても、現行の機械と同じ部品が使えるのだ。汎用木工機械というのは元々シンプルな設計のものが多いから故障も少ないのだけれど、中古の機械を使っていて万が一故障しても機械の切削ヘッド部分を丸ごと新品と交換してまた使えるという、工場にとっては涙が出るほど嬉しい仕様なのですよ。

僕が20代で最初に工房を開いたときに買った中古のルーターも確か僕と同じ年くらいだった。昭和30年代の機械なわけだ。普通に新品を買うと100万以上するのだけれど、古い中古品だと30万円台で買えた。
その後25年間そのルーターを使い続けたけれど、ほとんど故障もなくて僕の一番信頼できる相棒だった。

もう一つこの機械の素晴らしいのは、めちゃめちゃ汎用性が高いということ。

上部に刃物を加えるチャックがあり、その同一線上の下部にセンターピンと呼ばれる部品が付けられる穴がある。そしてその間には定盤と呼ばれる平らで頑丈で精度の良いテーブルが有る。主軸の回転数は何と1分間に2万回転!すごいでしょ。って言っても実感湧きませんね(笑)

木を削る刃物の大きさや形状、そしてセンターピンの太さの組み合わせでありとあらゆる加工ができる。切削のアイディアを形にするのに大事なのは、削る木を保持するジグと呼ばれる道具。

僕は19歳で入った小さなギターメーカーでこの機械の基本的な使い方を覚えた。エレキギターのボディなんかほとんどこれ1台で作れちゃうほど様々な加工ができる。

ボディの外形加工。ネックポケットやピックアップの座ぐり。外周のアール面取り、などなど。もちろんネックの加工も出来ちゃう。

このルーターという機械がずっと僕の忠実な相棒で、僕の夢を叶え続けてくれたのは言うまでもない。

今セイレン工房で使っているのは、10年ほど前に買った中古ルーターなんだけど、最初の工房開設時の23歳のときに買ったルーターは多分今でもティーズギターの工場でせっせと働いているんじゃないだろうか。本当はセイレンが始まるときに持ってきたかったんだけどね。ちょっと無理だった。それを思うとちょっと寂しい。

この、何でも出来る魔法の機械は僕にとって本当に無くてはならないもの。今でもこいつと向き合うと何か新しいものを作り出したくなるんだよね。

最近ちょっとテーブル動かすときにキーキー音がするのが少し心配だけど、手入れして新しい油を差してあげてまた頑張ってもらわにゃね。

あと15年は頑張るからねー。

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