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「なぜ、それをするのか?」

会社を根本から変えるような大変革の実施にあたっては、「なぜ、それをするのか?」「なぜ、このやり方なのか?」を、懇切丁寧に説明することが全てのスタートになります。

「本社の決定である」「新しい社長の方針である」というのは、「なぜ?」への答えになっていません。

それは誰が決定したのかを説明しているだけ。そして、この言い方には2つ大きな問題があります。

1つは、「Why?」を説明していないので、現場からすると理由が(納得する・しない以前に)そもそも理解できず、改革が極めて定着しにくいこと。

2つ目は、「誰が決定した」という事実のみを通告することで、「決定者はお前ではない」「お前は黙って従えばいい」という経営からのメッセージだけが強烈に伝わってくること。

社員からすると非常に屈辱的である上、その理由も分からないので、よくて面従腹背。最悪、退職者が続発する事態になります。いずれにしても、改革は徹底されず、所期の成果は上がらないでしょう。

もちろん、敢えてそれをやる、という高等テクニックも存在します。

特に、現場の力が強すぎて経営の統制が及ばないような会社においては、あえて上下優劣を明確にするやり方で、現場を抑える、反乱分子の退職を促す、という方法もないではありません。

ただ、これは劇薬です。繰り返し使うと、副作用として、(1)自分の頭で考えたい、意思決定に関与したい、自律型の従業員が去り、(2)言われた通りにやることに特段抵抗を感じない従業員だけが残り、(3)結果、極めて受け身な社風を作り上げます。

そうであっても、たとえば高度にシステム化された製造現場であれば、大きな問題は生じないかもしれません。

ただし、従業員個人の資質が競争力になるような事業では、大きな禍根を残すでしょう。

本社の決定事項でありご意見無用、という言い方は「改革のごく初期に1回だけ」というように用法・用量を制限しないと、取り返しがつかなくなります。


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