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会社はトップから腐り、根元まで腐敗する

会社は、牽制されることの少ないトップから腐敗することは衆目の一致するところでしょう。一方、一旦トップが腐敗するとその毒は全身に回り、会社の末端に至るまで無残に腐りきることを、実体験として知っている人は少ないと思います。

例えば、トップ自らが不正に手を染める会社があったと仮定します。(仮定です。実際の会社とは無関係のフィクションです。)

トップが率先して出入りのベンダーからキックバックを受け取ったり、こっそり裏で立ち上げた個人会社に巨額発注したり、自身の愛人に営ませている飲み屋で飲み食いをして経費計上したり、その愛人との手切れをめぐって反社会勢力が介入してきたので、会社から経費と称して手切れ金を払うような会社が「仮に」あったとします。(何度も言いますが単なる仮定であり、そのような会社は実際には見たことも聞いたこともありません。)

完全な犯罪行為であれば、どんな役員・社員でもさすがに声を上げるのかも知れませんが、たとえば表面的には「社長による過大なキャバクラ利用」だけに見える場合。

不思議なことに、ほとんどの役員は見て見ぬフリをするか、「社長がやってるんなら、自分も一つ…」と真似をして、同じような(場合によっては社長以上に)経費の濫用を始めるのです。

最初は、重要顧客の接待と称して。
そのうち部門のイベントと称して。
最後は、仲間内だけでの飲み会で。

その役員の部下も同様です。最初は自分たちの稼ぎが役員の飲み代になっていることに不満を持つものの、何度も一緒に行くうちに「タダで飲み食いできるのであればここは一つ自分もご相伴に預かろう。何なら自分にも接待費用を認めて欲しい。」とどんどん低きに流れます。

接待交際費をいくら使っても罰せられないことが分かると、もう止まりません。

面白いことに、部下どころか、ご相伴に預かる取引先、親会社もこの毒に簡単に染まっていきます。

トップが腐ると、誰も止める人がいなくなるので、留まることなく会社が腐敗していくのです。

これらの経費は、経理部門を経由して決済されるので、領収書を見る経理や財務のメンバーはどんどんシニカルになっていきます。社長の「経費を無駄にするな!」という掛け声を、心の底から軽蔑するようになります。そして、どこからともなく、社長や役員、経営幹部が出してきた証憑類が社内で共有されるようになるのです。「こいつ、あんなこと言いながら昨晩、キャバクラで50万円使ってるんだぜ」などの匿名コメントと共に。

接待費用が認められない地位の社員はどうするか。「おれだけ真面目にやってられるか!」と、外注費のキックバックや闇の副業、社内備品のパクリなど、その決裁権限の範囲中で私利私欲を追求し始めます。「社長や役員が私腹を肥やすなら、自分だって」という気持ちが、社員の倫理観を麻痺させるのです。

メーカーであれば、資材の調達先選定が甘くなるでしょう。購買担当者が、自身の妻が社長をしている会社にこっそり発注する、みたいな行為が横行するはずです。

こうなると末期的で、立て直すのは容易ではありません。


では構造的腐敗を断つためには、どうすればいいのか?

「腐敗を許さない制度」の導入、という答えでは全く不十分です。

なぜなら、どんな制度を導入しようとも運用するのは結局人間だからです。

最悪なのは、「今後はルールを厳しくする。いかがわしい接待交際費は認めない!」と言って厳しい接待管理規定を導入しながら、いざ自身の経費になると、「ま、そこまで堅苦しくなくてもいいんじゃないの・・・?」と自らへの適用を緩める経営陣です。これは、不真面目な役員・社員をして「なーんだ、新しい社長だって、結構好きものじゃないかw」と勢いづけると共に、今度こそと期待していた心ある社員を絶望の底に突き落とします。

不正な発注防止のため、取引先をしらみつぶしに調査したり、社員の配偶者や近親者が社長を務めている会社への発注を一律禁止しても、問題は解決できないでしょう。「おれだけ真面目にやってられるか!」という社員の怒りに向き合わない限り、その効果が上がることはありません。必ず、何らかの抜け道を探します。「自分は好き放題やっているくせに!」という感情を解きほぐさない限り、永続的な効果はないのです。

従って一番重要なのは、もし腐敗に手を染めるような経営トップがいるのであれば、まずそのトップを厳重に処罰すること。処罰が及ばないオーナー社長の場合はどうしようもありませんが、サラリーマン社長であれば、罪状を明らかにした上で公開処刑し、晒し首にすべきでしょう。これを見れば、同じ種類の人間は恐怖から行動を慎むようになり、心ある人間はトップ(株主)の判断を信じるようになります。

その次に重要なのは、「そもそも倫理にもとる経営陣をトップに据えない」こと。これは、選ぶ側の倫理観も問われるので、並大抵の難しさではありません。自分自身の経費を1円に至るまで社内に公開できないような人(株主)には、難しいタスクかも知れません。類は友を呼ぶからです。

それにも自信がない場合、腐敗した経営をすぐに取り換えられる仕組みを導入するしかありません。人選ミスはある程度は避けられないので、ミスが判明した瞬間にすぐにクビを挿げ替える覚悟と仕組を持つことで、被害の長期化を防ぐことができます。これは、人選をする側の倫理レベルに左右されないので、一番現実的かもしれません。

細かな腐敗防止ルールの制定は、これらが満たされた上で、4番目くらいの重要度と思います。

また、ルール制定後重要なのは、絶対にその適用例外を設けないことです。社長であろうと力のある役員であろうと、ルールを破ったら必ず罰することを徹底しないと誰もルールを信じなくなります。信じるに足りないルールは、ルールがないことよりも悪を作ります。

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