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どこでもドアの出羽三山神社

【2019年9月18日にアップした記事です】

気がついたらもう9月である。
しかも、とうに半ばを過ぎて。
光陰矢の如し、である。

さて、何も書かなかった夏に、東京と鶴岡をつなぐ楽しい2つのイベントがあったので、バカンス明けの今回は、そのことを書いてみたい。

山形県鶴岡市。
庄内平野と山と海を擁した日本を代表する食文化宝庫の地。日本唯一のユネスコ食文化創造都市でもある。ぼくは、この地域と数年前から仕事を通しておつきあいさせていただいている。そのなかで、ふたりの伊藤さんと出会った。おひとりは、羽黒山で山伏修行をし、同時に市役所に勤務している伊藤さん。
もうひとりの伊藤さんは、同じく羽黒山にある出羽三山神社の宿坊「斎館」の料理長の伊藤さん。
ふたりの伊藤さんは、食文化都市「鶴岡」のアンバサダーとして、イタリアやフランスなどを鶴岡の食文化のアンバサダーとして訪問されている。
料理長の伊藤さんは、ヨーロッパ各地で山伏の精進料理を披露して喝采を浴び、いっぽう山伏の伊藤さんは、フランス・リヨンにあるレストラン「ポール・ボキューズ」に山伏の格好で食べに行き、帰りにレストランで法螺貝を吹いてみんなを驚かせたという、人類初の快挙!を成し遂げた(ちなみに、ぼくの授業でも山伏の姿で法螺貝を吹いて登場していただき、学生たちの拍手喝采をあびました)。

8月には、ぼくの所属している学校の学生たちが、鶴岡のスイデンテラスという昨年できたばかりの素敵なホテルで、特別ディナーのイベントがあった。その夜、ダブル伊藤さんも駆けつけてくれて、学生たちが当地で学んだ食材、調理法などを、独自に解釈し、再構築した料理を披露してくれた。

仕事で出会った人たちが、やがて、仕事をこえて(仕事をつつみこんだまま、というべきか)、ゆっくりと友情をあたためていく、そんな数年を過ごしてきたダブル伊藤さん。
今回は、学生たちもいたので、へべれけに酔うほど、までにはいかなかったものの、これまで一緒に、庄内地域、羽黒山を中心とした山の信仰と修行、そして食文化の現代的な表現について語り合った時間が、すこしずつカタチになっていく場所に立ち会えたことは幸せなことだった。

お二人と再会を約束した翌月の9月上旬、すぐに、東京・新宿ゴールデン街!で、ダブル伊藤さんと再会できた。

世界的なIT企業のシークレット・イベントで、新宿ゴールデン街の老舗格のお店をジャックして、「日本の『食』を見える化する」というイベントで、お二人が呼ばれていたのだ。
このイベントでは、ドラえもんの「どこでもドア」みたいなもので、ゴールデン街の迷宮のなか、一坪あまりのお店の扉を開くと、秋田のきりたんぽの店や、宮崎の高千穂の郷土料理の店とかが、ポップアップレストランとして貸切で出現した。
そんななか、ダブル伊藤さんも、鶴岡の食をテーマに出店。小さな扉の向こうに、出羽三山神社の宿坊「斎館」の世界を出現させた。
6名くらいのお客さんがエル字のカウンターにぎゅうぎゅうになって座る。カウンターの向こうには大きな体を小さくして座る伊藤料理長。ぼくの隣には山伏の伊藤さん。そんな狭い空間で、空調がいまひとつきかずに、誰もが汗だくになりながら、羽黒の山伏料理をいただく。

巨大企業がスポンサードするイベントだからこそ、実現できたドラえもんの「どこでもドア」。それでも、お金だけでは実現できない世界があるということを、残暑厳しい9月10日の夜、汗ダクダクになって、狭いお店のなかでかみしめながら、お山でとれた山の幸に舌鼓を打った夜になりました。

世界は、そしてこの国は、なかなか大変な局面にさしかかっているけれども、それでも、生きているぼくたちの今日に、明日に、食べることでしか照らすことのできない領域があるんだ、と妙に盛り上がった、この夏でした。

*今日のコラムの話。もっと知りたい方はこちらを。
http://www.dewasanzan.jp/publics/index/64/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000095.000016404.html
https://lovely-lovely.net/business/goldengai

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