見出し画像

ひとりはつらい。ひとりを乗り越えるには:坂戸先生とのダイアローグ

第三回は黒石診療所・坂戸慶一郎先生と!

 すこし時間があきました。8月のあの頃が、嘘のような状況ですが、とはいえこれまで診療所から遠ざかっていた人たちが気軽に受診するようになってきて、そんな中ときどき陽性者が混じっている状態なので気がぬけません。世間の安心モードからはほど遠い状況です。さて、なかなか時間がとれなかったのですが、ようやく第三回の動画編集(といってもたいしたことはしていない)が終わりアップできる状態になりました。

三回目のお相手は、青森県、津軽保健生活協同組合・健生黒石診療所所長の坂戸慶一郎先生。

 坂戸先生は、ちょっと僕がひきこもっていたころに(いつもか‥)とあるご縁から声をかけてくれて、羊土社の今はなきGノートの編集を二人でさせてもらったご縁がありました。その雑誌の号はこちら↓ ガチな在宅が多い中、私のような軟弱在宅医でも続けられるには?っという割と画期的な特集だと思ってるんですが、そんな特集でした。

 僕自身はいつものように執筆者の男女比を整えることを仕事の主体にしていただけでした。坂戸先生と一緒にお仕事をしたのはこの時がほぼ初めてでしたが、診療に対する姿勢だけではなく、執筆をお願いした先生や、担当編集者さんへのやりとりを通じて、その真摯な姿勢にひそかに感銘を受けていたところでした。とはいえ、これまで僕自身一度もゆっくりと話をしたことがなかったのと、地域一筋のこれまでのキャリアについて一度きちんとお話しをうかがいたいと思ってお声をおかけしたのでした。

例によって坂戸先生のプロフィールですが、いろいろ僕が不正確なことを書くより、前回の紅谷先生のときに味をしめたネットからの拾い物作戦のほうが早いと思ってちょっとしらべたらいっぱいでてきました。

日本プライマリ・ケア連合学会東北ブロック支部長(汗)偉い人だったんだ…(いまさら気づくのもどうかしてますね)

 そんな偉い人にもかかわらず、こちらのサイトではこちらが心配になるくらいにオープン。

 ただ、お話しされていることには一貫性があります。特に、青森の地にしっかりと足をつけた活動をされていることはよくわかります。この業界にありがちな浮足立ったところが微塵もない。

 それはともかく、坂戸先生とお話しをしたのは、東京オリンピックの最終日(東京オリンピックなのに札幌でマラソンをやった日です)、日曜なのに感染者数が4000人を越えて、東京は本当に大変なことになっていたときでした。しかしそんな状況でよくオリンピックなんてやったなあ。

 その感覚もいまとなってははるかかなたの昔のように思えます。

ひとり医師として赴任し、少しずつ拡大していく

 ということでこちらが坂戸先生とのダイアローグ全編です!

↓ 1時間近くありますのでご注意を…

 もともと地域での医師を目指していたこともあり、赴任した診療所のひとり医師として活動を開始。そこから頑張って診療を続けていくなかで、思い描いていた「まったりとした」地域医療ではなく、実際の診療の荒波にもまれつつ活動を拡大。一人診療のつらさを感じつつもなんとか複数医師体制を整えるところを目標に活動してきたキャリアは、学びつづけたい、とか、たりないことをなんとかしたい、という、坂戸先生の真面目な姿勢を表していると思います。いわゆる地域のスーパースター的なものではなく、まじめにコツコツとやってきたのだろうな、、と思わせます。もちろん、周囲の支援があってこそなのでしょうが、そういう支援を受けられるように整えてきたのも坂戸先生のお人柄と、常に自分の不足をみつめそこのギャップ埋めるためにつねに向上しようとする真摯な姿勢があらわれていると思います。ご自身では「まだまだですー」と謙遜していますが、おそらくかなりの実力者と睨みましたよ!

 好きな言葉は「適当」、嫌いな言葉は「夢は必ずかなう」というのは僕も共感するところです。夢はかなう、ってJ-POPではよく取り上げられるクリシェなのですが、夢はもちろん常にはかなわないものです。ただ、それは夢を持つことがダメといっているのとはちょっと違うと思うんです。「かなわないかもしれない夢」を持つことは大事なんだな、と思います。わかりにくい… それにいい塩梅、という意味の適当、っていうのはいい言葉ですね。何事も、100でも0でもなく、真実はその間にある、っていうのは総合診療をやっていると特にかんじます。でもこれってコウモリみたいでどっち側からも嫌われるんですよね…

 自分の時間を持ったり、一人で続けることの苦労、そしていつも何か足りないような気がして、その空白を埋めようとするけどなかなか埋まらなくって、それよりも次々といろんなことがあっちこっちから降ってきて、それをなんとか対処しているうちにいつのまにか時間が過ぎる…

 これが地域で診療を続けることの本当の意味なのかもしれないかな、とも思います。カッコよくスマートに行きたいんだけれども、やっぱりそうはいかないものです。そして、そうこうしているうちにいつの間にか仲間がふえてきて(仲間は医師とは限りません)、みんなで助け合いながら進んでいくのが理想なのかもしれないのだけれど、そうはなかなか行かないのもまた事実… 

 このあたり家庭菜園で土いじりをしながらモチベーションを高めていくのもまた必要なことなのでしょう。そんな感じで自分だけでコツコツできる趣味をもつことは実は大事ですね。いろいろ褒めてもらって、自己肯定感を満たしたりすることはもちろん必要だけれど、変におだてられてしまうのもまた体によくないですよね。とはいえ、ストイックにもいきてはいけない。つらいときにつらい、しんどいときにはしんどい、って言えるのは大事ですね。坂戸先生も、いったん一人になったときに「もう無理」と言ったことがあるとおっしゃっていました。自分もかなり無理していた時期もあったんですが、その時にもっと言えばよかったかもしれないかな・・・僕はもともとネガティブオーラを出すほうなので、周りが逆に気づいてくれたのかもしれません。どっちかというと僕はむしろストイックさに欠けるのかもしれません。細かいところでテキトーだからかなあ。まあ、テキトーっていうのは差坂戸先生のフェイバリット・ワードだからそれはそれでいいんでしょう。その後がどうなるかは誰にもわかりませんから。God only knows.

 ということで、むかし懐かしい野田幹子によるビーチボーイズの名曲カバー。全然関係ないけどこのミニ・アルバム、この季節に聞くにはなかなかいいですよ。

 さてそんなわけで残りはあと1回、最後に登場するお相手は、王子生協病院の田直子先生。学会の見逃し配信は11月いっぱいで終わってしまったそうです。地区医師会からは、管内でブレイクスルー感染が相次いでいるという通知もありました。諸外国の情勢を見ると日本だけこのままなんてことはなさそうですし妙な新しい株が増えてきているから、これから覚悟しなければいけません。やだなあ。

(のんきなことを言って… 続きます)




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?