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建築壁面 「削りレンガタイル」記録1、

2015年、建築士の方から特注タイルのお問い合わせをいただいた。
お話の概略をお聞きすると、窯元の私にとって熟知している内容で、不思議なご縁となった。日頃から多々情報を精通する立場において大変興味をもった。

お題は、「削りタイル」のような外装だった。焼き物のレンガタイルでありながら、新しくも無く、時を経た風化した質感を求められた。

脳裏に浮かぶ、レンガでの表現と組み合わせが多様で、どの範疇を好んでいただけるものか、建築家の感性を探っていかねばならない。

もちろん、建築家自身、すぐに答えが初めから見つかっているわけではない。誰しも、試作品やほかの条件比較などで細かくニュアンスにそぐわないものを省きながら進めていく。

その経路を、より比較しながら納得感を得て進んでいただけるようなプレゼンが必要となってくる。

自分自身も、自ら手作業で見本をつくる作業があってこそ、たくさんの気づきが生じる。工程の微妙な違いまで気づく様にもなる。よって、より自信をもってアドバイスがよりできるようになっていく。

材料メーカーの営業マン及び担当者は、建築設計者からすぐに、信頼を得ることは難しい。建築という様々な難しい思考をもっての仕事柄、その道のプロかどうかは、すぐに見定められてしまうものだ。

私も、20代の飛び込み営業時は、設計事務所の所長から自分の仕事を逆にたくさん教わっていたものだ。

いっしょに寄り添って、良い方向性を見つけ出した時は、大変仕事が楽しく嬉しいものだ。なにぶん、建築士の日常の仕事はほんとうに多忙で、素材の比較検討をする時間や方々見学したりする余裕すら無いことは良く理解している。

だから、結論をどうやってスムーズに導きだせるかいつも悶々と考えている。省略できることは、先に自分で無駄になっても比較検討し、自分のデータを持って意見を述べられるように準備している。そもそも、自分自信が最も納得しないと、心が盛り上がって来ない。(長い事続けて来られた秘訣かな)

削りタイルの代表格、森鴎外記念館 外壁

上記(画像)の雰囲気を、段階を踏みながら設計者にお見せしていかねばならない。

時間を無駄にしない為にも、手持ち見本を利用しながら過程をお見せして理解を求めていく。

実際には、参考作品を同じ様に真似るべきプランでも無い内容の説明を受け、さらにオリジナルなものを見つけ出していけるかという大きな課題であった。

同色系の在庫見本から片っ端から削ってみることからスタート

削って色々な事がわかってきた。

どの表層を削るか?シャモットはどうすべきか?表面のテクスチャは?
どう削るか?刃はどうするか?たくさんの疑問が浮上する。
色々なカップ刃を試してみる。
削り前の表面: ラフ面の粗さはどう影響するのか?
削り後の表面:削ることによってクレーターが生じ、表情が出始める
濃色:目地も詰めて雰囲気を確認
淡色:目地も詰めて雰囲気を確認

ベニヤに張ってからのサンダーでの削りは、見本張りのタイルに振動が直接伝わって目地がバラバラに取れることとなった。
上記画像の目地は、後から上から塗り目地したもの。

目地をどう詰めるか?
目地材をどう選ぶか、色は?
目地幅は何mmが最も良くみえるか?
どの施工段階で目地を削るか?
タイルの色ムラは、どの程度あるべきか?
よって、タイルの製造方法をどうすべきか?

たくさんの課題で溢れかえりました。

これからのスタート見本をまずどう考え、工場に指示を出して進めていくかここから始まって行くこととなった。

次回、「建築壁面 「削りレンガタイル」記録2、」へ続く


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