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Underwater Boy

特に関連するような理由があるわけでもなくセンチメンタルな気分になって特定の曲にたどり着く。

音楽は匂いに似て記憶との連動性が強く、数十年前の出来事が鮮明にしかし曖昧に編集されて見たいヴィジョンを映し出す。

17歳、思春期真っ只中でこの曲を聞いて原体験ではないノスタルジーを感じ取った。

80年代半ば、耳を疑うほど歪んで尖った音楽や映画そしてアートを叩き込んでくれた友人はもうこの世にいない。

少し楽器が演奏出来るという情報だけで5歳年下のオレを強引に「既存の価値観で測れないすべてのもの」

という眩しくも、足場すらない不安定な鉛色の鉄塔を望む泥沼に引きずり込んだのだ。そしてこの悪酔いにも似た「旅」を彼が居なくなった今でも続けている。

おそらく終わりもなにもないのだろう。

彼を向こうに送り込んだのが何なのか今でもわからない。水中深く沈んでゆくイメージだけを反復させながら1984年の冬に記憶を重ねる。


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