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創造と破壊(詞、短文、フィクション)

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主に詩や短文、フィクションなど書き連ねています
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#詩

HAKAI  SHODO

叩き壊す 持てる限りの力を一点に集めて 部分的でもかまわない、完全に破壊する 視界の大部分にモザイクかませ、一点めがけて クレイジーと気狂いの差を思い知る 全てまやかしの世界では、夢が現実 醒めないならそれは夢じゃない 数え切れない悪夢の夜を超え、 飼いならされた狂気に別れを告げて 本来住むべき場所へもどるだけのこと 芸術の庭は唯一暴力が安全に存在出来る場所なんだ

真夜中の中のほう

すべて朽ちろ 記憶のなかの甘い妄想だけのこして、 自分自身で歪めた人生と連動するように。 発した言葉の大半は本音や本質なんかじゃなく どこかで借りてきた半端な仕立ての毛布みたいなもんだ どこまで行っても身体の芯は温まらず、寸足らず 眠りに落ちる数秒間で人生のすべてを語ってみせろよ そんなペテンも今日でさよなら 終わりよければ全て良し、 ノーブレーキでコンクリートの壁に突っ込む車 ドイツ+トルコソサエティーのストリートキャスティング たつとりは後足で煙幕を巻き上げて まるで最初

なんて呼ぼうがお前の勝手だ

辛うじて生存可能なドブ川クラスの大気で生活してる。 腐肉に群がる鳥を捕獲するようなジャンクフードのただ券システムとそれらを貪るほどに魂が飢えた都会に生きる、なかばしかばね。 希望という言葉の意味すら考える意味がなく、 自我は蛾のように弱々しく、毒など皆無で叩けば数秒で粉になる。 下水、上水と雨の区別も曖昧でいっそ全てを飲み込む大きな怒れる水のうねりを切望しているのかもしれない可能性に気づく。 言葉は本来の力を保てず言い終える前に煙のように闇に消える。怒りなどにまでも到達

WATER

人体の大部分は水分 働いて汗を流し 傷ついて血を流し 愛しいものに触れて涙を流す

BURN

遠くの山と闇を視界に並べ 角から漏れる光に漂わせる 硝子に映った漆黒のピアノを想像しつつ 歪んだ電子音をさらに増幅させる 柿色の鮮やかな合成繊維を纏う天使 ありったけの負の感情を一箇所に集め 今、もっとも見たいものは わたしの「利己」が燃え焦げるさまだ

音楽

苦しくて心の軋む音が聞こえるとき 嬉しくてたまらないとき 心の所在が不明なほど平坦なとき 誰にも言えず心の暗闇に居るとき 自分の存在すら疑わしいとき 音楽はだけはすぐそこにある 心を映す鏡のように意味を変化させながら、 でも気づかれないようにそっと寄り添っている

ゴースト

飴玉と引き替えに自由を手放す子供と 100年もの時を傍観者でいる幽霊を 消えてしまう切っ掛けを無くした物たちが囲む 手を伸ばせば届く距離なのに見えない恋人 彼女は物事に意味などないことを受け入れられない 音の中に埋め込まれた伝言は時に反転され、 容易に真意を悟らせない性悪な猫のよう しかしその美しさは決して衰えることなく、 数万年を旅した氷河を溶かし、言葉を超えて人々を癒す。 時はめぐり、弓矢で射られた少女の傍に立ち、 瞬時に時を超えてあの白い柱の前に跼み 間も無く無用

都市

低く黒い雲に聳える灰色のビル それを取り巻く煙幕の様な霧 スマートでシャープなシンボルの一つであり、 訪問者と都人を分かつフェイスコントローラー 淀まないよう流れ続けているはずが もはや濁りに気づけない速さで動く都心の水 気づけば足元に絡んで熱を帯びている 衣服を通じて文字通り生温かいものが体を撫でる 半ば心地よいそれは毒だと知っていても断てない 媚薬のように開放へ向かう足取りを鈍らせる 醜悪な現実に気づかせないようにありったけの 電力でチープなLEDを配色、発光させる

やがて全ては無に帰る

身を焦がすような恋心も 海を越えた野心も 彼を殺したしがらみも 無意味に愛らしい飼い猫も やがて全ては無に帰る 一生許さないと決めた裏切りも 拭いきれない執着心も 隠された肉欲も 溶けないまま腐ったバターも やがて全ては無に帰る やがて全ては無に帰る そして何もかもなくなって 忘却の彼方のままに また何か始まるんだろう