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UNSUNG HEROESーVol.1_川端 昭彦

アンサング・ヒーローズ。名も無きヒーローたち。シャイニングアークスにも、普段スポットライトを浴びることなく選手を陰で支える、縁の下の力持ちとも言えるスタッフがたくさんいます。そんな彼らに、少し陽の当たる場所に出てきてもらうシリーズ企画です。第一回目の登場は、ヘッドストレングス&コンディショニングコーチの川端昭彦氏。

スポーツ医学を学ぶために渡米

高校の時にアメリカに1年間留学しました。その時にスポーツ医学の勉強をしたいと思ってホストファミリーに相談すると、ピッツバーグ大学を勧められました。普通に受験して入学して、4年間アスレチックトレーニングの勉強をしてきました。卒業後帰国して、2001年から当時トップイーストリーグに所属していた日本航空ラグビー部で、トレーナーとS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチ両方の担当として働き始めました。

当時は、ラグビーの仕事を週4回、専門学校の講師の仕事を週4回、そして整形外科での仕事を週3回やって、日本でのキャリアをスタートさせました。5年後に独立して、引き続き日本航空ラグビー部の仕事は続けながら、同時に青山学院ラグビー部の仕事や、プロテニス選手のパーソナルトレーナーをやってきました。

日本航空ラグビー部時代はその頃、トップイーストリーグに所属していましたので、当時のシャイニングアークスと対戦経験もあります。一度も勝てていないのですが。笑

2015年にトップリーグの東芝ラグビー部にフルタイムで初めて雇われ、2年間S&Cコーチとして働きました。そして2019年、S&Cコーチとしてシャイニングアークスに来ました。

S&Cの仕事をやりながらも、医学的なバックグラウンドだとか障害予防だとか、トレーナーとしてのバックグラウンドもあるので、そこが自分の武器でもあると思います。

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ラグビーならではのS&C

ラグビーだと例えば120kg以上ある選手が80分間走れて、しかもチームに機能する持久力を付けさせなければいけないので、より求められることも多いですし、そういったところがどのスポーツよりもS&Cコーチをやっていて面白みがあると思います。しかもラグビーは階級別では無いので、80kgぐらいの選手が120kgぐらいの選手とぶつかっても怪我をしない体を作っていかなければいけないので、どのスポーツよりもやりがいがあると今でも感じていますし、やっていて楽しいです。

今はGPSとかいろいろな機材があるので、選手個人個人の疲労度合いを毎日チェックして、選手の主観的な判断と機材からの客観的なデータとを総合的に見ながら、この選手はこれ以上やりすぎないようにだとか、判断をしています。頑張ってやらせますが、障害が起こらないようにリスクの低いスケジューリングにしています。あとは海外のトップクラスの選手、例えばオールブラックスの選手の数値や日本代表選手の数値を参考にしています。

ベンチマークにする数値を選手に教えて、その選手がどこを目指して今どういう立ち位置にいるのか、個人面談する時に照らし合わせてやっています。

GPSのシステムなどもそうですが、世界的にラグビー界は機器を使った科学的なデータに基づいたトレーニングに早くから取り組んできたのではないでしょうか。

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世界に誇れるアークス浦安パークの施設

世界でもことラグビーの施設に関していえば、トップクラスだと思います。アメリカでは、アメリカンフットボールやバスケットの施設だとすごくお金をかけてラグジュアリーな感じに作るのですが、ここはラグビーに特化して、しかも必要なものがすごく機能的にデザインされています。過去に来場した海外の代表チーム選手たちも、「こんな施設は他に無いよ!」って言っていました。

ボディビルダーのような体ではいくら筋肉量が増えても走れないので、ある程度ベースの筋力をつけさせながら、時期に応じて短い時間で爆発的な最大筋力を発揮させるようなトレーニングを入れるために、この施設はすごく恵まれています。ジムでトレーニングをしながら、合間に広いスペースに移動して走らせてみたり、ジャンプさせたりして、高い負荷に対して、しっかりと体が動ける状態を作った後に、自体重でどれだけ自分の体を動かせることができるかというようなことをメニューに組み込みながら、ただ単に大きくするだけじゃなくて、それをラグビーで生かせる体にしていくことをやりやすい施設になっています。 

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シャイニングアークスの特色

まず一番初めに感じたのが、選手が若い!東芝にいる頃から、NTTコムは大胆に世代交代を図っていると感じていました。去年僕が来た時にも、30歳以上の選手がすごく少なかったです。それは他のチームでは結構稀で、いい意味ですごく若い。反面、やっぱりベテランの選手が少ないだけあって、チームカルチャーがまだ明確に確立されてないということは感じました。それは今でも感じています。自分は今までいろいろなチームでやってきていますので、いいチームカルチャーが根付くように仕事をしていくことをすごく心がけています。まだまだ伸び代があるなと感じています。

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コーチとして喜びを感じる時

今年2年目になるのですが、すごく頑張っている選手が増えてきて、そういう選手が試合で活躍してくれると、僕みたいな仕事をしている身からすると一番嬉しいですね。

ジムで測定をした時に、「今年になってこれだけ重いものをあげられるようになりました」とか、面談の時に、「今まで以上に横の動きが良くなりました。このトレーニングのおかげだと思っています」とかのコメントをもらった時は、率直に嬉しいです。

ただし、ジムで100kgしか挙げられなかった選手が200kgを挙げられるようになったとしてもラグビーで活躍できなかったら自己満足でしか無いと思いますので、自分のやっていることで、選手がラグビーの試合をやっている時のパフォーマンスが上がることが一番嬉しいですね。

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人と人とが付き合う仕事だから挨拶は大切

パーソナルトレーナーとは違って、チームで働くとなると、まずは人とコミュニケーションを円滑にできることが大切だと考えています。それは社会人になっていきなりできることでは無いと思いますので、人の話をしっかり聞いて、当たり前のことがまず出来なくてはいけないというのが大前提だと思っています。

例えば、挨拶をすごく大切にしています。海外でも今までいたチームでもそうだったのですが、朝会った時に「おはよう」の挨拶をする時、必ず「誰々さん、おはよう」と名前を呼ぶようにすることがすごく重要だと思っています。僕は選手と対する時に、必ず名前を呼んでから話すようにしています。それって言われる方も言っている方もコミュニケーションが明確になりますし、名前を言われて嫌な人っていないと思うんですね。

東芝でコーチをやっていた時に、廣瀬(※廣瀬俊朗氏。元日本代表キャプテン)は挨拶する時に必ず人の名前をつけて挨拶をしていたんですね。彼がわざとそうしていたのか自然にそうしていたのかわからないのですが、彼からいつも「アキさん、おはよう!」とか「アキさん、ありがとう」とか「アキさん、お疲れさま」とか言われると、ただ挨拶されるより気持ちが伝わってきたので、自分もそうしています。そこから1日がスタートするので、やっぱり人と人との仕事ですし、お互いにいい意思疎通ができたところから仕事を始められるとやっぱり違うと思います。

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