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日本人が問われてる。ジャニーズ問題

⚠︎性被害についての記述があります。トラウマのある方は控えるか、注意してお読みください。

ジャニーズの事件を受けて、それぞれの立場の人や組織がそれぞれの視点で考えていることと思います。

私はこれまで仕事で被虐待児と関わってきた経験があり、今回の事件を知ったときは抑え難い怒りの感情に襲われました。夜眠れませんでした。

産婦人科で勤めていた頃の記憶もよみがえりました。
レイプ問題や望まない妊娠問題と向き合ってきました。レイプ被害者の多くは顔には殴られた後があり、怯え震えながら女性警察官とともに受診することがお決まりでした。

目に見えない深い傷とはこのことを指すのだと、思いしらされた記憶があります。

その後の福祉職では、性虐待、身体的虐待、精神的虐待の相談を受ける仕事をしていました。

どの虐待も大変深い心の傷をおおうことは言うまでもありませんが、とりわけ性虐待の苦痛は計り知れないものがあります。

父親やきょうだい、祖父という身内や子どもに近い立場にいる習い事や学校の先生などから被害を受けるケースが多いです。男児であれば母親や実姉などから被害を受けるケースもあります。

性虐待で自分の中核部分を脅かされる感覚は味わった人にしかわからない強烈な苦痛だと思います。想像を絶する感覚です。

自分をモノのように扱われ、自尊心をひどく傷つけられる。

無理やりであっても快楽を得てしまった場合には、強烈な恥の意識や自己嫌悪に苦しむことでしょう。

その生々しい感覚は何年、何十年と被害者を苦しめます。

むしろ日を増すごとに苦痛が肥大して、自分一人ではもう手に負えないことだって往々にしてあります。

同僚が性虐待児の入院する専門病院に実習に行った時、私はここでは働けないと思ったと言っていました。

あまりにも悲しみが深すぎる……
もう魂が死んでいた……
廃人のようになっている子どももいた……

世の中には、心も身体も健康的で、身近に性虐待にあった人に出会う機会がない人がほとんどだと思います。
想像をしても、被害者の本当の苦しみを把握することは難しいかもしれません。

ただ、きっと皆さんが想像している何倍も何十倍も被害者の方の苦悩は大きいということは確かだと思います。

私は、人権の本当の意味を知っている日本人って残念ながらまだまだ少ないように感じています。

国際社会を見渡すと明らかに日本人は人権意識が低く、先進国との大きなズレを感じます。   

少し話が変わりますが、
昨年、オランダに移住した仕事仲間と話をしたことがありました。そこで性教育の話題になったのですが、向こうはもう生まれたばかりの0才から性教育プログラムが用意されてあり、保育園、小学、中学、高校と発達段階に応じて性教育を受けることがスタンダードであるということでした。

(海外では、性教育=人権教育という認識です。)

また、息子さんは、コロナ禍では恋人に会う事を控えていたようです。それは積極的に恋人に会うと予期せぬ妊娠のリスクか高まると言う認識があり、自分のためにも恋人のためにも、今は自制すべき時と判断したためです。

コロナ禍で恋人に積極的に会いに行く日本の若者を不思議がっていたそうです。

つまり、なにが言いたいかというと、日本とオランダの人権意識の違いです。

日本の性教育は先進国と比較すると、かなり遅れています。
はどめ規制という法律があり、性交渉のことは子ども達に教育の中では伝えてはいけないと言う決まりがあります。昭和時代からかわっていません。

臨床現場でどんな問題が起こっているのかを知り、この問題の深刻さを理解している産婦人科医、小児科医、弁護士、助産師、教師、養護教諭、保育士、福祉業界、子を持つ親などなどが今、政治に対して働きかける大きな動きがあります。

そこを言わずして、命に関わる大事なことをどう子ども達に伝えられるのか、、、
知る権利が子どもたちにあるのではないか、、、
もし知識があれば予期しない妊娠や性病を防げるかもしれない。
デートDVの被害者が減るかもしれない、、、

危機意識を持っている臨床家は、人権意識をどうやって子供達に教育していくか、真剣に考えています。


海外では、当たり前のように幼少期から積み上げ式での教育があり、根拠をもって科学的に説明すれば、子ども達は自然な形で性のあり方、人も自分も大切という感覚を学んでいきます。恐れる必要はないのです。

国はこの違和感や国際ガイダンスとのズレを知っています、、、けれども既読スルーです。

私がなぜ性教育を熱く語っているのか、つまりそれは人権教育そのものだからです。


性被害者が男の子だったからまだ良かったよねと思う国民が少なからずいるこの日本という国は、人権意識に関してはまだまだ発展途上の国だと言わざるを得ません。

しかしながら、政治は遅れていますが、ここ数年、乳幼児期から読める優しい性教育の絵本が盛んに世に出るようになったり、子どもを持つ親の意識は少しづつ変わり始めています。

国は頼れないから自分たちでなんとかせねばという感覚です。

日本の親たちは危機感を覚えています。
簡単にアダルトコンテンツに触れられる現代ですから、、、子どもには被害者にも加害者にもなってほしくないのです。

私は今回のジャニーズ氏の事件を受けての日本人の反応を観察していきたいです。

性教育、人権問題、虐待、トラウマ、精神医療などの領域に携わっておられる方は、きっと国際的な基準を知っておられるので、感度が高く鋭い感覚で今回の事件や日本の動向を見ておられることでしょう。

しかし一方であまり馴染みのない日本人はどうでしょうか。

「女の子じゃなく男の子でまだよかったよね」
「そんな昔のことを掘りおこさなくても」
「お金もらえたんだからいいじゃん」
「ファンの間では昔から噂になっていた。今更何?」
などの言葉が聞こえています。

性虐待がどんなに苦痛なことなのか、、、
トラウマ治療がいかに大変なことなのか、、、
社会に理解してもらえない絶望感、、、
知って欲しいです。

そして、被害者の方は年齢を重ねておられますが、被害にあったのは少年時代だったということ。児童性虐待であったということは忘れてはいけないことだと思います。

国際社会は恐らくジャニーズという名称を使用継続することを許さないと思います。今後、国際的なスタンダードに合わせざるを得なくなるのではと思いますし、それは当然のことだと私は思います。

一般社団法人日本トラウマティック・ストレス学会の会長が声明文を出されていたことはよかったと思います。

日本子ども虐待防止学会、日本子ども医学会の声明文発表にも今後、期待したいものです。

この問題は日本人一人一人に問われている問題でもあると私は思います。


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