こんにちは、丸山です。
商品商業写真が、将来AIで生成されるようになるのか考えてみました。
AI画像生成と広告写真
最近は広告の仕事をする機会がないのですが、長年広告写真に携わり、広告写真を題材にした作品を制作してきたこともあり、このテーマに興味があります。
以前、Still Lifeの写真をAIで制作してみました。
AIの可能性は感じていましたが、著作権などの問題から、実際の広告写真に使われることはしばらくないだろうと思っていました。
アドビ、「Adobe Firefly エンタープライズ版」を発表
しかし今月、アドビからAdobe Firefly エンタープライズ版の発表がありました。
特に気になったのはこの部分です。
著作権の問題は完全にクリアになるのでしょうか。
もしそうであれば、今後AIを使った広告制作が大幅に増加することが予想されます。
AdobeのAI画像生成について
なぜアドビだけが著作権問題をクリアできたのか?
これはちょっとトリッキーですね。
アドビでストックフォトを販売している方は、この発言に驚かれたのではないでしょうか。
自分の画像をAIの訓練に使うことを許可したのでしょうか?
コントリビューターの使用許諾契約をみてみました。
この部分がAIトレーニングの許可を与えているということですかね。誰か分かる人がいたら教えてください。
確かに、新機能・新サービスの開発に使用できると記述されているようです。
この種の契約書は、読んで全てを理解することが難しいため、AIのトレーニングの許可を与えていることに気付いているクリエーターはほとんどいないのではないでしょうか。
もしも気付いていたとしても、この契約書にサインしなければ、ストックフォトの大手エージェンシーであるAdobe Stockで写真を販売できないため、これをビジネスにしているクリエイターは、サインするしかないのです。
Firefly のベータ版のサービスが終了する時点で、コントリビューター向けの報酬モデルが提示されるようです。
どのように計算されるのでしょうか?
十分な報酬を支払うことは難しいと思いますが、あまりに低いとクリエイターの反感を買う可能性があります。ストックの売り上げが激減すると考えられるAI画像生成サービスのために、多大な労力を使い撮影し、AIに必要なメタデータも制作したことになってしまいますからね。
AIを使って商品写真を制作してみる
まだあまり検証できていませんが、現時点ではクオリティの高いAI画像をアドビのサービスで制作することは難しいかもしれません。
使い慣れているMidjourneyで、商品写真のAI化の可能性を調べてみました。
缶ビール
ビールをテーマにアート作品も制作しているので、今回は缶ビールの商品写真をAIで制作してみます。
今回は、できるだけ創造性を必要としない方法を試しています。
広告写真に関するプロンプト
まずはChatGPTにビールの缶の広告写真に関するプロンプトを提案してもらいます。具体的なイメージの指示はしていません。
□ Permutation Promptsを使用すると、1つの/imagineコマンドでプロンプトのバリエーションを素早く生成できます。
最近追加された機能だと思うのですが、たくさんのバリエーションを試したいときはこれが便利。
カンマで区切られたオプションのリストを中括弧{}で囲んでプロンプトに含めることで、これらのオプションの組み合わせが異なる複数のバージョンのプロンプトを作成できます。
例えばこれを入力すると
/imagine {A, B, C}
この3つが生成されます。
/imagine A
/imagine B
/imagine C
一回で40のバリエーションが試せます。
□ /imagine prompt: これを入れてプロンプトを書いてもらうと、Discordでいちいち/imagineと入力する必要がありません。なにげに便利です。
これらのプロンプトをそのままMidjourneyで実行してみました。その中のいくつか。
背景バリエーションのプロンプト
ビールのスプラッシュの広告写真のプロンプト
ビールの広告写真
ChatGPTプラグイン"Photorealistic"を試す
Photorealisticを利用して、フォトリアリスティックなMidjourneyプロンプトを作成する。
簡単な指示を出すと、リアルな写真風の画像を生成するプロンプトを提案してくれます。
Midjourneyは簡単な単語を並べるよりも具体的に文章で指示をした方が画像のクオリティは良くなるようです。
Midjourneyの4つのイメージを分割する
今のMidjourneyはアップスケールしても解像度が同じようなので、生成された4つのイメージをそのままダウンロードして、それをフォトショップのスライスツールを使って、バッチで4分割してそれぞれ一枚のイメージにしています。
MidjourneyのDescribeコマンドを使って画像を言語化する
ChatGPTのプロンプトで生成されたこのイメージからMidjourneyでプロンプトを作ってみる。
4つのプロンプトが出たのでとりあえずこの4つを生成する。
ChatGPTプラグイン"SceneXplain"を試す
このプラグインもイメージからプロンプトを制作してくれます。
同じイメージを使って生成してみました。
特定の商品写真(Beer Can)を組み合わせる
特定の商品をAI画像の中に組み入れたいと思います。
今回扱うのは私の"Japanese Beer"プロジェクトの中のこの商品。
ホップが売りの商品みたいなので、ホップの含まれるAI画像を生成してみます。
Redo (re-roll)で、プロンプトを調整する
使えそうなイメージを選んでプロンプトを修正して再度生成する。
”ホップ”をプロンプトに加えてみます。
次にもう少し絵に雰囲気が欲しかったので、cinamatic film still を加えて、画面の比率を4:3に変更してみました。
この赤い枠のイメージを元に画像を完成させようと思います。
缶にホップのイラストがあったので、立体的なホップも加えるために、”style of 3D”をプロンプトに加えてみます。
それぞれをダウンロードして、Tapaz Gigapixelで解像度をリサイズします。
Photoshopで合成
まとめ
権利について
Adobe Firefly エンタープライズ版が合法だと認識されたら、企業が広告にAI画像生成を使うようになると思います。
しかし、このサービスの料金や、コントリビューターへの保証がまだ未確定なので、はっきりしたことは分かりません。
Midjourneyのようなサービスが著作権的に本当に合法なのか私には分かりません。商業利用するには注意が必要だと思います。
クオリティについて
Midjourneyは、すでに実用レベルになっているのではないでしょうか。この1年間のMidjourneyの進化を考えると、数年後にどうなっているのか考えるだけでも、恐ろしい(楽しみ)です。
ストック素材やオープンライセンスコンテンツだけでトレーニングされた完全合法なAI画像生成サービスのクオリティがどこまで上がるかは分かりませんが、それも時間の問題でしょう。
予算のあるクライアントはこれまで通り実際に撮影をすると思いますが、”Heinz A.I. Ketchup”や"Coca-Cola® Masterpiece"キャンペーンのように積極的にAIを使う事例も増えるでしょう。
ストックフォトで対応してきたタイプの広告写真はプロダクト自体の写真以外はほとんどAIに変わるかもしれません。
広告の企画段階では、すでにAIが活用されていると思います。
現状では、地ビールを作っているような小さなメーカーが自社の商品とAI画像を組み合わて、SNSで毎日広告写真を投稿するなんていう使い方が面白いんじゃないかと思います。
本来なら数千ドルの制作費がかかるような広告写真を毎日投稿できるなんて、すごい時代ですね。ちょっと勉強すれば、ビールの製造スタッフでも制作できるかもしれません。
告知
現在東京のギャラリーで、広告写真をテーマにした"Japanese Beer" という作品も展示しています。是非お越しください。
Shinichi Maruyama "Photographs 2006-2021"
May 11 - July 30, 2023
Gallery Blitz
12月には長野の高遠美術館で"Japanese Beer"の全80点を展示します。
現在も、広告写真のプロジェクトに取り組んでいます。
広告写真とAIやアートの組み合わせのような新規性のあるプロジェクトに興味のある企業の方、お声がけください。
新しい作品を制作して美術館で展示できたら面白いと思いませんか。
他の作品のビハインドシーンも少し投稿しています。
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