「世界一の朝食」billsを作ったビル・グレンジャーさんの訃報に寄せて

「世界一の朝食」として一世を風靡した「bills(ビルズ)」のビル・グレンジャーさんが2023年12月25日に亡くなられたのですね。。彼とbillsとの思い出を少し振り返ろうと思います。

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「bills」はオーストラリアはシドニー発のカフェ・レストラン。レオナルド・ディカプリオらをはじめとするセレブにも愛されたことから著名となり、2008年3月に世界初となる海外第一号店を湘南・七里ヶ浜にオープンさせた。

そうと知らずに食べたパンケーキの衝撃

billsと僕の出会いは突然だった。1号店オープンの半年後である2008年10月に生活総合情報サイト「All About」に転職。国内旅行情報の担当(後にグルメ情報の担当も兼任)になった僕は、七里ヶ浜のお店を紹介した記事(今は削除されてしまっているよう。。)がとてもたくさん読まれていることを知った。ただ我が家からは遠いので「いつか機会があったら行ってみたいな」くらいの関心だった。

そんな折、その記事を書いた横浜ガイドの田辺紫さんと打ち合わせをすることに。田辺さんに連れて行っていただいたのが正にこの1号店。ただ、田辺さんは「ここはパンケーキが人気なんですよ」くらいにしかおっしゃらず。僕は何も気付かず、言われるがままリコッタチーズのパンケーキを注文。

一口食べて驚いた。ふわっふわ。未知のパンケーキだった。それ自体はリコッタチーズのおかげか、くどくなくさっぱりしつつも、ハニーコームバターとバナナのとろける甘みと一体となり、甘美の極み。田辺さんに「え、何ですか?これ!?」と尋ねてしまった記憶が。そこでやっと「あの人気記事のお店」と判明したのだった。

常に温かく、ホスピタリティが高かったビルとの出会い

その後の2010年3月27日、billsは2号店を横浜赤レンガ倉庫にオープン。この際か、それ以前にプレス会があったのかを忘れたが、僕はビル・グレンジャーさんにお会いすることができた(なお、彼は自分のことを創業者やシェフ、オーナーとは言わず「レストランター」と言っていた)。

そして感じたのがとにかく温かなホスピタリティ。とてもカジュアルかつ素敵な方で、周りの人を「少しでも幸せにしたい」という思いが常に溢れている感じ。僕もそうなりたいな、と影響を受けた。そうそう、同時にレシピ本も発売したのだけれど、看板メニューのリコッタパンケーキも、スクランブルエッグも惜しげもなく載っていた。驚いて「載せちゃって良いのですか?」と尋ねると「勿論! 多くの人が作ってくれたら嬉しいよ!」との返事が如何にもビルらしかった。あと「料理をするときは片付けもみんなですると良いよ。作った人が片付けもすると嫌になっちゃうかもしれないけれど、みんなでやれば楽しんでできるよ」というのも彼らしいハートウォーミングな話で印象に残っている。

シンプルながら、アイデアに溢れたレシピの数々。 https://amzn.to/3GVOdgW

コロナ禍も乗り越えるbills

その後もbillsの快進撃は続き、お台場、表参道と新店を出して行った。これらの際にも、幸運にもビルにお会いしてお話できた(いや、表参道ではお会いしてないかも? この辺り、少し記憶が曖昧)。どのお店も居心地の良い空間で、何度か伺い、思い出がある。現在、日本には8店舗があるという。そして、どのお店も一度も閉店せずに営業を続けているようだ。嬉しいし、すごいことだと思う。

有名なリコッタパンケーキやスクランブルエッグは勿論、パッションフルーツのパヴロワ、スイカを使ったお料理など、印象的で好きな料理はたくさんあった。レシピ本もよく見て作ったなぁ。ビルさんは亡くなっても、彼のレシピとその思いは、きっとなくならない。今度久々にbillsに食べに行こうと思う。

R.I.P.

https://billsjapan.com/jp

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