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【無料記事】自宅にドラムが叩ける防音スタジオを作った話 【総工事費・防音効果の数値も公開】

自己紹介

初noteなので、まずは自己紹介。

はじめまして。
京都在住のドラマー、内田伸吾 (うちだしんご)と申します。

六合(りくごう)というバンドやソロワーク、各種サポートでドラムを叩くほか、自宅スタジオでLimelightドラムスクールを運営しています。

ここ数ヶ月は InstagramYouTubeX(Twitter)Facebook毎日ドラム動画をアップしていて、ありがたいことにInstagramはフォロワーが3.8万人を超えました。


初noteとなるこの記事は、2022年12月に個人サイトに公開したブログの改訂版です。

https://imagination-works.jp/blog/story-about-building-a-private-studio/

※このnoteは最後に有料部分を設けていますが、記事は全文無料でお読みいただけます。
noteへの掲載にあたり、1年を経過して感じていること、反省点等を加筆していますので、よろしければ投げ銭感覚でご購入いただければ幸いです。

はじめに

2022年6月に新居に引っ越したのですが、その新居に防音スタジオを作りました。
電子ドラムではなく「アコースティック・ドラムが叩ける防音スタジオ」を自宅に作るというのはドラマーなら誰もが実現したいと願う夢でありながら、ハードルが高いのも事実です。

そこで今回の僕の経験を記事にまとめておくことにしました。
この記事が、防音スタジオを作ることを検討している人(特にドラマー)の参考になれば幸いです。

なぜ防音スタジオを作ることになったか

以前の自宅(戸建て)ではアコースティック・ドラムと電子ドラムを組み合わせたハイブリッド・キットでレッスンや練習、レコーディングを行っていました。以下の記事でも紹介しています

https://imagination-works.jp/blog/how-to-make-your-electronic-drums-sound-in-your-daw-drum-library/

これはこれでメリットも沢山あったのですが、部屋そのものが狭かったり、レッスンでアコースティック・ドラムの良さを伝えきれないというストレスも少なからずありました。

2021年の春頃、詳細は省きますが、現在の新居(築30年の戸建て)に引っ越すプランが浮上。
新居は以前の自宅よりも広く、これならリフォームをして「アコースティック・ドラムが叩ける防音スタジオ」を作れるかも知れないと、防音スタジオに関する情報を調べ始めました。

どんなスタジオにするのか?

今回のスタジオ作りで掲げた要件は以下の6点。

  • アコースティック・ドラムの演奏およびバンド演奏(100〜120dB程度)が可能であること

  • 家の外に対して、24時間演奏可能な防音を実現すること

  • リハーサル、レコーディングが行える音響にすること

  • 長時間過ごしても心地良い空間であること

  • 撮影映えする内装にすること

  • 十分な換気機能を確保すること (コロナ対策)

以上の点を実現しつつ、スタジオ面積は出来る限り広く、コストは出来る限り抑える(笑)
このバランスが本当に難しかったです。

施工に関しては防音工事専門の会社4社と打ち合わせを行いました。
その後、各社から見積とプラン提案をいただいたのですが、価格にかなりの開きがあった為、施工方法などを含めて追加質問をしたり、再見積をお願いしたりと納得いくまでやり取りを繰り返しました。

最終的にお願いすることにしたのは、大阪の防音ファクトリーさん。度重なる確認や変更にも嫌な顔ひとつせず対応いただき感謝しています!

防音ファクトリー WEBサイト
https://bouonfactory.com/

防音工事の内容とは?

では、具体的にどんな工事をして防音をするのか?
今回の工事で行ったことをざっくりまとめておきます。

  • 振動を極力抑える為、床・壁ともに湿式工法(コンクリート)で施工

  • 天井高(2,700mm)を確保する為、床を建物の基礎部分まで下げる

  • 窓は取り外し、すべて壁に

  • 防音ドアは鋼鉄製と木製の二重扉

  • 壁と天井は3層構造(厚みは約400mm)

  • 換気扇、エアコンのダクトは防音仕様

その結果どうなったかと言うと、もともと15帖あった部屋が施工後は10帖ほどに…。

事前の打ち合わせで狭くなることは分かっていたものの、実際に完成してみると思っていた以上に狭くなったと感じました。

工事前の和室
床をぶち抜いたところ
外壁と内壁の間には吸音材がぎっしり

防音工事後の写真と間取り

そして、完成したスタジオがこちら。

カッコ良い…

和室の面影はゼロ。
壁紙やフロアパネルはすべて指定して、見事に自分好みの内装に仕上がりました。2本の柱は梁を支えるのにどうしても外せないということで、化粧柱にしてもらいました。

外観はこちら。

ガルバリウム最高

「窓のない真っ黒な家」は相当目立つようで、完成当初はご近所さんの間で「あの怪しい家はなんだ」と噂になっていたそうです(笑)
ちなみにスタジオの真上はルーフバルコニーになっています。

スタジオの平面図はこちら。
壁の厚みがよく分かりますね。

スタジオ平面図

フラッターエコー対策として、平行な壁を作らないことも検討しましたが、どうしても部屋が狭くなってしまう為、ドラムの正面になる扉の面のみ斜めに。他の面は吸音パネルと機材を設置することで対策としました。
ちなみに、平面図右上の斜めの壁の内部には吸音材(高密度のグラスウール)をこれでもかと詰め込んでベーストラップ的な役割を果たしています。

吸音対策が大事

よく混同されている「遮音」「吸音」(一般的に呼ばれる「防音」は「遮音」と「吸音」の総称)。

簡単に書くと、
「遮音」は部屋の外に漏れる音を軽減する為にあえて反射させる方法。
「吸音」は音の反射を軽減させるために音を吸収する方法。

つまり、まったく別の話なんですね。
そして、心地良い音響を作る為には吸音対策が何より重要です。

スタジオ内の黒いボードは全て吸音パネル。
ドラムの背面は映像映えを考えてレイアウトしました。

実際、吸音パネル設置前の響きを知りたくて、ドラムセットを運び込んで演奏してみたのですが、銭湯で演奏してるのか?と錯覚するほどの反響…。
とても演奏出来たものではなかったです。

この音響調整は遮音の工事が終わった後に行います。色んなスタジオに足を運んで自分好みの響きを見つけ、それを防音ファクトリーさんに共有してから実施していただきました。

ただ、工程的に微調整しながら進めるということが不可能だったので、そこは正直なところ不安でしたね。
結果的には自分好みの音響に仕上がって安心しましたが、その点をシビアに進めたい方は調音専門の業者さんにチューニングしてもらうのが良いかも知れません。

肝心の防音効果は?

無事にスタジオが完成したは良いものの、これだけの工事をしたのに隣家からクレームが来たら意味がありません。そんなことになったら泣きます。
果たしてどのくらいの防音効果があるのか?
ちゃんと測定してもらいました。

その結果がこちら。

騒音測定の報告書

Aはスタジオの二重扉の前、Bはスタジオの隣にあるリビング、CとDは家の外。
いわゆるDr値(遮音性能を示す等級。以下の引用参照)でおおよそDr70〜80の遮音性能という結果でした。

例えば、防音室の中の音が「100」だったとします。防音室の外の音が「70」になれば、その差は「30」です。このときの遮音性能を「Dr-30(D-30)」というように表記します。

【防音コラム】防音とは?DR値とdb(デジベル)の関係性について
https://www.shimamura.co.jp/shop/nagoyachaya/product/20210215/6313

屋外に関しては、元から存在している騒音(生活音や車・電車の音など)の方が圧倒的に大きい状況。ドラムを思い切り叩いても外壁に耳を当ててかすかに聞こえるレベルなので、静まり返った深夜でも隣家の中にはまず聞こえません(とは言え、礼儀として隣家にはちゃんとご挨拶に伺いました)


では、家の中はどうか?


これは残念ながら聞こえます。
事前に分かっていたことですが、やはり構造として繋がっている以上、音=振動をゼロには出来ないんですね。

どれくらい聞こえるかというと、表にあるように30dB以下
例えるなら囁き声くらいですね。とは言え、音量としては囁き声でも絶え間なくリズムが鳴ってると気になるものです(笑) テレビや音楽が流れていればほぼ分からないんですけどね。
そんなわけで、僕の場合は家族が寝る時間以降は叩かないようにしています。

気になる総工事費公開!

さて、この防音工事で総額いくら掛かったのか?
読んでくださっている方には一番気になるポイントだと思いますので、包み隠さず公開します

こちらです!


¥5,995,000




税込みです。
どうでしょうか?

高いと感じるか、妥当と感じるかは人それぞれだと思いますが、木造戸建てのリフォームで、この記事にあるような内容だとおおよそこれくらいは掛かるということです。
ちなみに、これより高い見積の業者さんもおられました。

僕の場合、自分の練習用だけではなく、レッスンレコーディング撮影など仕事として使うことを前提としていますので決して高くはないと思っています。

なお、この費用はスタジオの防音工事のみの金額
スピーカーやミキサー、パワーアンプ、オーディオI/O、マイク、ケーブル類など必要機材の購入で別途150万円ほどの費用が掛かっています。
さらに住居スペースも同時期にリフォームしたので、人生で一番お金を使いました(笑)

ドラム関係は元から持っていたので費用に含まれていません

さて、ここからはスタジオを作って約1年半が経過した、現時点で感じている良かった点、反省点を挙げていきたいと思います。

防音スタジオを作って良かった点

1.いつでも自分のドラムを叩ける

やはり1番はこれ。
(時間帯の制限はあれど)いつも自分のドラムセットを叩けるのは最高の一言に尽きます

2.アコースティックドラムを使ったレッスンが出来る

ダイナミクス、トーン、リバウンド…
アコースティックドラムを叩かないと分からないことは沢山あります。

3.移動時間のロスがない

自宅スタジオならではですね。パジャマのまま翌日のライブの練習をする、なんてことも可能です。
時間はお金で買えません(買ったとも言えます)。

4.チューニングやマイキングなどの研究が出来る

当たり前の話ですが、同じ楽器でも演奏する場所が変われば音も変わります。
その点、自宅スタジオなら環境変化はほぼゼロ。チューニングやマイキングの変化をフラットに研究することが出来ます。

5.スタジオコストの低減

バンドのプリプロダクション、レコーディングにかかるスタジオ代がほぼゼロになりました。
ただし、ライブのリハーサルに関してはスペースの都合(楽器を持つと4人編成がマックス)で、リハーサルスタジオを使用しています。

6.仕事の増加

本格的なスタジオになったこともあり、ドラムスクールの生徒数は1年で2倍に。レコーディングや動画撮影の仕事もいただけています。

7.動画コンテンツの発信力アップ

いつでも撮影可能な環境が整ったことで、本腰を入れてInstagramへの動画投稿を始めてみたら5ヶ月で3.8万人に。
これについてはまた改めて記事にする予定です。

8.練習時間の増加

起きている時間のほとんどをスタジオで過ごしているので、ドラムを叩かない方が難しいです(笑)
その結果、練習時間がかなり増えました。

反省点

これから防音スタジオを作る方にアドバイスしたいポイントでもあります。

撮影をするならスタジオの照明には拘るべき

ダウンライトとスポットライトで落ち着いた空間に仕上がり、それ自体には満足しているのですが、撮影となるとやや暗いです。特にiPhoneやGoProでの撮影は光量が足りず、ノイズが出てしまいます。
当初から撮影に必要な光量を想定しておくべきでした。

防音扉は2枚とも鋼鉄製の方が良かったかも?

僕のスタジオの防音扉は鋼鉄製と木製の二重扉。
もう少し予算をかけて両方とも鋼鉄製にしていれば、家の中への音漏れはさらに抑えられたかも知れません。
とは言え、1枚50万円…。

収納スペースを作っておくべきだった

自分の機材量を甘く見てました。
今から作るなら、飛行機についている荷物棚みたいなのをつけて、頭上のデッドスペースを有効活用します。

室温と湿度対策は意外な落とし穴

気密性が高いゆえにスタジオ内の人数が増えると室温と湿度がすぐ上がります。そして、なかなか下がりません。
僕の場合はエアコンの除湿モードではあまり効果がなく、追加で除湿機を買いました。夏場は1日で4リットル溜まります…。


もし次回スタジオを作る機会があればリフォームではなく新築で建てたいですね。その方がコストも抑えられるし、設計の自由度も高い。
それか倉庫みたいなところをまるっと借りるか。天井の高さは正義。
実現出来るように頑張ります。


まとめ

というわけで、防音スタジオ作りのあれこれをまとめてみました。

結論としては「作って良かった!」の一言です。
決して安い買い物ではないですが、トータルで考えれば何倍ものリターンを得られると思います。

この記事がスタジオ作りを検討している人の参考になれば幸いです。
それではまた!

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