DetonatioN GamingのVCT PACIFIC選出に意見を持つ方へ

  初めまして、ShingoNagato88と申します。
  昨日発表されたVCT APACの選出チーム、その日本チームについていくつかの意見をTwitter上で見た。
  私はDetonatioN Gamingを5年以上応援しているのでそのファンの視点からどういった点がDetinatioN  Gamingの選出に有利に働いたのかを考察したいと思い、この記事の作成に当たった。
  贔屓目ではないか、という意見は覚悟の上で可能な限りDNGが魅力に溢れたチームだということをVALORANTシーンしかまだ見たことのない方々に届けたいと思う。

DetinatioN Gamingとは

  DetonatioN Gamingとは2012年設立の創設10年の日本チームとしては非常に歴史の長いeスポーツチームだ。現在活動中の部門は
League of Legends(9名)
VALORANT(7名)
APEX LEGENDS(3名)
格闘ゲーム(ストリートファイターV)(3名)
大乱闘スマッシュブラザーズ(1名)
e Football(旧タイトル名ウイニングイレブン)(2名)
PUBG mobile(6名)
シャドウバース(4名)
ストリーマー部門(2名)
があり、競技活動休止中のスプラトゥーン2部門やPUBG部門を含めると総勢41名の選手、コーチ、アナリストが在籍している。
  競技シーンに直接関わる人だけでこの人数、部門数は日本全体で見ても間違いなくDNGが国内トップレベルの規模であることはご理解いただけたと思う。
さらにスポンサー数は現在計21社、それもシャープやau、明治をはじめとした誰でも知るような企業が複数その名を連ねている。
  親会社は現在Game Withとなっており、先日発表された6000万円近い赤字に関してもGWによる買収と経営統合によって今後の運営への影響は大きくないように感じられる。


DNGが近年注力する「ファンとの交流」

  「常にファンとの交流を最優先とし、多様性豊かなコミュニティーを称え、プロ選手の支援に全力を尽くす。」「優れたコンテンツ、魅力的なブランド、求心力のあるロスターを持続的に展開することでファンとの深いつながりを築いてきた組織」Riotが発表した選考の際に特に見た項目その1、その2だ。両方ともファンとの関わり、そして選手への向き合い方を重要視している。
  実はこれ、DNGがここ数年かなり注力している項目である。代表的なものがファンサブスクと公式番組「DNGはこおし」、そしてSpotifyで配信中のラジオ「DNG 30min」である。
  ファンサブスクはDNG内でも特に部門としての人気の高いLOL部門DetonatioN Focus  MeとPUBG部門(2021年10月よりVALORANT部門)のDetonatioN Gaming Whiteの2部門のチームでそれぞれチームとしてOPENREC.TVでのサブスクチャンネルとDiscordサーバーを開設、大会前後など定期的にサブスク限定のオンラインファンミーティングを行ったり限定ショップを開設してファンとの交流を図っている(筆者はDGWのサブスクに開設当初から加入しているが、PUBG部門時代は大会周期が見ている側が心配になる程短かったこともありほぼ毎週ファンミ配信があり、不定期で選手企画のゲーム配信もあり満足度は非常に高いものである)。

  また、公式番組の「DNGはこおし」だが、これはDNG運営方針とも関わってくる。DNGは創設当初から一貫して「世界で勝てるチーム」を目標に運営しており多くの競技シーンへの参入と生み出した実績によってある一定のファン層を獲得してきた。それは「DNGだから応援する勢」だ。
  多くの人にとってどこかのチームを応援するきっかけは「特定の選手、ストリーマー」であるかと思う。近年規模を拡大させつつあるチームはその多くが有名なストリーマーを抱えその人からチームを見てもらう、という導線を確保している。簡単にいうと「たくさんのにわか観戦を作りそこからどれだけ沼にひきづり込めるかの勝負」をしているのだ。
  これには「どれだけの人が競技シーン観戦へ流れるか予測しづらいこと」や「応援する選手、配信者が脱退するとそのファン層が抜けてしまう」というリスクが存在する(そういった事態を起こさないために各チーム観戦配信などを積極的に行っているわけだが)。
  こういった時代の風潮に対しDNGは思う。
「ウチのチームなら高い金で有名配信者獲得するより既存のファンにもっと深く応援してもらったり、既にどこかの部門を応援してくれているファンに他の部門も見てもらった方が将来の見通しよくね?」と。
  DNGはそういったコアな、お金を落としてくれる層を増やそうと考える。その入り口と考えたものが「DNGはこおし」だ。この番組は毎回複数の部門の選手を集めてゲームを通して選手たちの普段は見られない魅力を引き出そう、という趣旨のものだ。
あるタイトル、特定の選手を応援する人の中から「DNGというeスポーツチーム自体を応援してくれるファン」をより一層増やそうとしているのだ。

  つまり「この選手、このゲームは知らないけどDNGがいるから見てみよう、応援しよう」という層の獲得に注力しているわけで、こういった層が増えることは運営側からすれば見通しの立ちやすい層が増えることであり、また既存のファンにとっては推しの魅力を知れるコンテンツに力を入れているわけで嬉しくないはずがない(前述のファンミサブスクでもそうだが、視聴者考案の企画を多く取り入れてくれている)。

格ゲー勢に闇のゲームLOLをプレイさせる大人気企画「皇帝塾・トロールキングダム」
メロフォビアとミリンケーキ、両軍奇人を抱え揉めに揉めたCODE  NAMES回
人気企画宇宙人狼AMONG US。この回は新加入の16歳アスリンの可愛さを知れた回だった。
今回は詳しく紹介できなかったDNGのラジオ企画。
毎回各部門の選手たちが視聴者からの質問に答えたり、時期によっては大会についても触れる。


知っておいてほしいDNGの「強くなってきた実績」

  DNGが世界で戦えるチームを複数持つに至るまで、当然ながら非常に長い時間がかかった。そうやって勝てるチームを時間をかけて作り上げたのである。

  やはり有名なのはLOL部門のDFMであろう。DFMは長い間日本地域において最強の座に座っていたがそれでも世界では良くて1勝というような世界戦であった。
  最初に良い結果が出たのは2018年のworldsであろう。この年、日本勢として初めてグループステージに進出するための最初のラウンドを突破したのである。この時点でeスポーツとして長い歴史を誇るLOLの世界で日本チームとしては初めての快挙であったが、その後の試合に敗れグループステージ(16強)入りは果たせなかった。この悲願の16強入りをDFMは2021年に果たすこととなる。それも名門Cloud9とのプレーオフを制してのプレイイン1位、グループステージ直通という大成果だ。

  また、PUBG部門(現VALORANT部門の前身)の成長力もここでは紹介したい。
  DNGのPUBG部門は競技シーンの始まりと同時に発足しており最古参のチームの1つであったが世界の舞台に立つまでには一年半の時間がかかった。しかも一度は二部リーグへの降格を経験してからのことである(当時のPUBGプロリーグは1つのリーグに20チーム、それが一部と二部、そして入れ替え戦の三段階であった)。降格後のリーグを一位で通過、その後は2シーズン「いいところまでは行くけど最後届かない」という経験をする。そんなDGWは2019年の夏のシーズンで初めての国内優勝を圧倒的な成績で果たし国際戦へ出場、日本チームとしては初めて二度のドン勝を獲得した(そもそも日本チーム初のドン勝がその前の世界大会のBLUE BEESであった)。

  この後DGWは一年勝ちきれない期間を過ごすこととなる。最終戦開始前一位で解説の釈迦氏にも「コケない限りほぼ万全といえる」という位置にいながらもまさかの大逆転を2シーズン続けて喫するなど決して順風満帆とは言えない成績に苦しむこととなる。
  しかしDNG運営はそんな選手たちのための環境を整え続けた。選手たちがフルタイムでやりたい(=ゲーム専業でやっていきたいから給料をめちゃくちゃ上げてくれ)と直談判した際にもフルタイム制を認めゲーミングハウスでの生活も援助した。その結果どうなったか。
  DGWは最後の国内リーグを2連覇して優秀の美を飾る。またこの頃からDGWは明確に勝負の場を世界に定める。日本チームの多くは国内スクリム、それに追加で参加できるチームは韓国スクリムに参加する中、日本チームで唯一中国スクリムに参加、世界最強地域の猛者たちとしのぎを削り世界と戦う力を蓄えた(PUBGのスクリム事情は他ゲームとは大幅に異なり、各国に複数ある「スクリム運営」の主催するスクリムに申し込みをし、指定の時間に試合を行うというシステムである)。

  この結果はその後の世界戦にも現れることとなり、2020年の世界大会PGI.SではBOTTOM16(世界大会参加32チームのうち下位16チームによる戦い)ではあるものの2日間の戦いで総合1位を獲得するという快挙を果たす。これは日本チームの過去の成績から見ると夢見ることすら許されないほどの大快挙である。

複数週ある内の一週の結果、その週の予選を上がれなかった16チームとはいえこれだけのPUBG強豪チームの中でこの成績は今後見れないかも知れないほどの結果である。

(この大会全体の結果は芳しくなかったがその辺りは多くの名選手を引退に追い込んだ大規模なルール変更があり、旧ルールで戦えた下位16チームの戦いで上記のような成績を残したので世界水準のチームを築けたことは間違いないであろう。詳細を語るのは時間がかかりすぎるため省略する)


DNGは他チームができない程の時間をかけてチームを成長させる

  私が上記の2部門の躍進から訴えたいのはDNGは中長期的な目でチームを成長させるだけのノウハウ、そして資金力と運営の結束を持つということである。
  悲しいことであるが多くのチームは結果を残せなかった部門を存続させるのではなく、解散を選択する。それはeスポーツという寿命の短い競技においては必要な選択だとは思う。
  しかしファンは誰しもが思ったことがあるだろう。後1年、2年このチームで戦っている姿を見たかった、もしかすると化けたのではないのか、と。先述のDGWは初優勝を飾ったシーズンである2019年6月からVALORANT部門となる2021年10月までの約2年半「このメンバーで戦い極めることが最強への道である」と同じロースターで固定して活動していたのだ(一時期Dep選手や韓国選手のトライアウトで話題になったものの最終的に加入には至らなかった)。

  こういったDNGの資金、そして選手と運営の信頼関係があるからこそ可能な中長期的な戦略をRiotは高く評価したのではないのだろうか。

なお、DNGは一度給与未払いで話題になったが、これについても触れておこう。
  これは当該選手のテレビ出演の出演料が支払われていない、という内容のものであった。「まさかDNGのような規模のチームで」と当時衝撃を受けた方も多かったかと思う。
  これの詳細だが、まずテレビ局からの出演料の支払いがかなりの期間を空けて払い込まれる形であったためテレビ局からの支払いを待った上で選手に支払いが行われることとなっていた。そのため選手本人へ給与が払い込まれるのはテレビ出演から相当時間が経ってからされることとなる。これに関する連絡がDNGないで齟齬が起き、選手本人からしたら「いつまで経っても全く給与が払われる様子がない」という風になったのだ。
  当然選手の生活を守る給与に関してアバウトな説明しかできないままであったというのはあまりに選手への敬意が足りず、社会人としても失格の事件である。
  この事件の発覚後、代表の梅崎氏は即座に原因究明に乗り出し、選手に直接面会し謝罪と今後の再発防止の徹底を約束し和解へと至った。
  謝罪と再発防止は社会人として当然のことではあるがその行動の速さなど、DNG代表の梅崎氏は安心できる。普段の様子からも彼がいかに選手たちを大切にしているかを窺い知ることはでき、信頼に足る経営者であると、1ファンの視点でしかないが確信を持って言いたい。

配送センターの手違いにより福袋に本来梱包されるべき商品が入っていなかったと発覚した際、梅崎代表がツイッターでの購入者のツイートからその事実を発見し即座いに対応、未配送分とは別にヘッドセットを全購入者に配布した。

LJLの首位攻防戦、序盤でかなりの有利を築き後は試合を畳むだけかに思われたがまさかの試合中断、その後日付が変わってから再試合の末敗北し2位に後退したDFM。翌日のDFMのゲーミングハウスには選手に御馳走を振る舞う梅崎氏の姿が。


最後に:    縁故採用と言われないために

  最後に言いたいことは、DGWのヘッドコーチのMelofovia氏についてである。
  彼は今年の前半までは自身が選手として活動しておりコーチとしての実績はほとんど0である。今回のケースのようにDNGは元選手をコーチとして採用することがある。
  例えばDFMのかずーたコーチは元DFM、以前DGWのPUBG部門でコーチだったMimorin氏はDNGの2ndチームで選手であった人物である。
多くのチームは外国人コーチや国内でも実績のある人物をコーチにするのに対しDNGは自チームの元選手をコーチに据えることがある。これも実際のところ利点は多くあるのだが実績なしの人物をヘッドコーチに置くことに関して厳しい意見もあると思う。こればかりは結果で示すしかないであろう。
  事実かずーたコーチも長年多くの批判を受けながらも戦い続け、先述の功績に貢献した。Melofovia氏には是非とも今回の批判を跳ね返すような結果を出してくれることを期待したい。何より彼はチーム内でスタッツが低いこと(彼のPUBGでのロールが最も落とされやすい位置やキルに関与しにくい位置を担当するものであったからスタッツが伸びないのは当然であるのだが)や年齢を理由に何度も批判を受けても自分を、仲間達を信じやり遂げる強さがあることを私は知っている。きっと今後数年のうちにDetonatioN  GamingのVALORANT部門は大きな成績を残してくれるだろう。
  観戦する方には「何も言うな」とまでは求めないが、行きすぎた言葉を使わずに今後のDNGの活躍を私とともに見守ってほしい。

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