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〜MLBのポップカルチャーを利用した集客戦略〜

プロスポーツでは、試合に足を運んでくるファンがチームに利益をもたらす。特にMLBは各球団81試合ものホームゲームがあり、チケットの売り上げはチームの大きな利益となることから、各球団ではどのようにすれば新たなファンが球場に足を運んでくれるのか、ファンがどのようにすれば球場にまた足を運んでくれるのか常に考えられている。

そんな中、集客のためMLBでよく行われるのがイベントデーである。近年日本のプロ野球でも見かけることが多くなったイベントデーは、MLBではシーズンの多くの試合で行われている。その数は年々増えており、2017年に行われた30球団合計のイベントデーの数は、2016年に行われた数の倍となった。イベントデーの多くは集客が期待できない平日のゲームに用意され、企業が試合のスポンサーとなり、球団と企業がコラボした無料配布物をファンに配ったり、試合前後のイベント、いつもと違った試合中の演出などが行われる。例えば、来月12日に行われるエンジェルス対マリナーズの試合では、ローソンチケットがスポンサーとなり、ローソンチケットのロゴが入った大谷選手のボブルヘッドがファンに無料配布される。

今回特に注目していきたいのが、テーマを用いたイベントデーである。例えば、昨年MLBで最も多く行われたのがスターウォーズデーである。5月4日のスターウォーズの日に合わせて複数の球団がスターウォーズデーを実施し、球団とコラボしたフィギュアの配布や試合中の演出などが行われた。あまりの人気から、昨年は23球団でこのイベントが行われ、スターウォーズの日以外に実施した球団も多くあった。また、アメリカの人気ドラマシリーズ “ゲーム・オブ・スローンズ”のイベントデーも合計21球団で行われ、平均で10.4%のチケット売り上げ増加に繋がった。さらにマーベルをテーマにしたスーパーヒーローデーなども人気だ。(出展:https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/11/13/Leagues-and-Governing-Bodies/MLB-promotions.aspx)

ではなぜこれらの野球と全く関連のないポップカルチャーをテーマにしたイベントデーが多くの球団で実施されているのか。それは、言わずもがな野球ファン以外をターゲットにする為である。イベントデーを積極的に行っている球団の一つであるミルウォーキー・ブルーワーズのテディー・ワーナー氏によると、2017年に行われたブルーワーズのイベントデー実施日のチケットの売り上げの25%は、これまでに球場で試合観戦をしたことがないファン(Non-Fan)、またはほとんど観戦したことがないファン(Casual Fan)によって購入されていたという。(出展:https://www.sportsbusinessdaily.com/Journal/Issues/2017/11/13/Leagues-and-Governing-Bodies/MLB-promotions.aspx)
つまり配布されるグッズだけを目当てに球場に足を運んだファンが多くいたとも言える。スターウォーズなどのシリーズ作品はコアなファンが多く、球場でしか配布されないグッズは彼らにとってプレミアグッズとなるため、球場に足を運ぶのであろう。彼らのようなNon-Fanを球場に導くことはとても難しく、何らかのきっかけがないと球場に自ら足を運ぶことはないだろう。しかし上記のようなイベントデーを行うことで球団はこれまで野球観戦に全く興味のなかったファンにリーチすることができる大きなメリットがある。

近年アメリカでは野球人気が低迷しており、ファン離れが進んでいる。またスポーツを鑑賞する方法が多様化してきたことから、球場へ足を運ぶファンも年々減っている。実際に今シーズンは、シーズン序盤に多く発生した悪天候の影響もあるが、6月15日の段階での平均観客動員数が過去15年で最低を記録している。(出展http://fortune.com/2018/06/15/mlb-attendance-rate-declining/)
今後MLBの球団がどのようなポップカルチャーを用いた戦略でNon-FanやCasual Fanを集客し、彼らをCore Fanへと導いていくのか注目していきたい。