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ささやかな怪談たち(お題ください)

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10年ほど前でしょうか。とあるサイトに毎月3作ずつ怪談(掌編)を投稿していた時期がありました。 そのサイトでは毎月テーマを決めて怪談を募集しており、投稿作品から選別されたものがサ…
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記事一覧

第50話 娘が生まれた日。それは初めて魂魄を切り刻んだ日。

 二十年前の寒い日。  その日の正午、娘がこの世に這い出てきた。  娘の持つ「光」は、ヒ…

第49話 ブルーな月曜日 (かつての投稿時テーマ 青色)

 最近は月曜日の朝が憂鬱です。  原因はひとつです。職場のメーラーを開きたくないのです。 …

第48話 マリッジ・ブルー (かつての投稿時テーマ 青色)

 私は、久し振りに母の実家を訪れた。  突然の訪問だったが、人の良い伯母は気易く迎え入れ…

第47話 約束 (かつての投稿時テーマ 青色)

 お兄ちゃん、私、今日で十四歳になりました。  お兄ちゃんが約束してくれた、その日になり…

第46話 黒体 その3 (かつての投稿時テーマ 黒色)

 黒体と言う概念がある。  純粋な真の黒色で覆われた物は、一切の反射をしないという物だ。 …

第45話 黒体 その2 (かつての投稿時テーマ 黒色)

 黒体と言う概念がある。  純粋な真の黒色で覆われた物は、一切の反射をしないという物だ。 …

第44話 黒体 その1 (かつての投稿時テーマ 黒色)

 黒体と言う概念がある。  純粋な真の黒色で覆われた物は、一切の反射をしないという物だ。  熱も電磁波も黒体に触れた物は吸収される。代わりに、黒体からは熱や電磁波が放射される。必ず、一旦は黒体と言う物を介しての伝搬が行われるというものだ。  こんな事を言うと、最初に頭に浮かぶのはブラックホールの存在かもしれないが、あれは違う。あれは、強い引力により電磁波が抜け出せなくなるだけである。  様々な用途や実験の為に限りなく黒体に近い物体は数多作られてきているが、完全な黒体はまだ地球

第43話 いくつもの鳥居を (かつての投稿時テーマ 赤色)

 急な坂道を、今日も僕はあがっていく。  ゆっくりと、ゆっくりと、一歩一歩を踏みしめるよ…

第42話 植物園 (かつての投稿時テーマ 赤色)

 北の街、小樽の本当の片隅に、古びた植物園がある。創設は明治の後期。  小さな丘陵を丸々…

第41話 約束 (かつての投稿時テーマ 赤色)

 高校三年の夏、僕は全て放り出して旅に出た。自転車にテント等を積み、北海道を巡った。  …

第40話 バナナのこと (かつての投稿時テーマ 黄色)

 バナナが目の前を過ぎて行った。  いつものことである。  半透明の黄色いバナナが、視界を…

第39話 あたしの肌の…… (かつての投稿時テーマ 黄色)

 呼び名が、孤児院から児童養護施設に変わっても、中身は変わりません。  ここの子たちに出…

第38話 焼き芋 (かつての投稿時テーマ 黄色)

 真冬の夜、駅を出ると焼き芋を売っていた。  おじさんが「おいしい、安納芋だよ」と声を出…

第37話 その坂の途中にて (かつての投稿時テーマ 幕)

 今夜、私とTさんが飲んだのは四ッ谷駅の近くだった。  店を出た時、Tさんは相当に酔っていた。 「もう、今日は五月十四日になったのだね。いつもそうだが、この日は一人で飲むには寂しい日なのだよ。だから、君を呼んだのだ。……悪かったね。  すまないが、もう少し、付き合ってくれないか」  Tさんは、歩き始める。  私は、Tさんの一歩分後ろをついて行く。 「なあ、江戸幕府の幕が下りたのは何時だったと思う?」  Tさんが口を開いた。  私は黙ったまま歩く。  Tさんは、私に質問している