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「エクスティンクション 地球奪還」の感想―主人公を支配する社会はエイリアン出現前と何ひとつ変わっていない。

Netflixで「エクスティンクション 地球奪還」というSF映画を観ました。

主人公は、エイリアンによって世界が崩壊する悪夢に悩まされていましたが、ある日、それが正夢になるという話です。

もっと詳しいあらすじが公式にありました。

「家族を愛する男を苦しめる、エイリアンが地球へ侵攻する悪夢。ある日、謎の地球外生命体が地球上の生命に攻撃を仕掛け、彼の悪夢は現実と化してゆく。これは予知夢なのか?人類の未来は彼の予知夢にかかっている...。」

ここからネタバレを含む感想を書きます。どんでん返しの展開が面白いので、そういうものを楽しみたい方は読まないほうがいいかも。もう観た人は良いと思います。

主人公には、妻と娘がふたりいます。娘は中学生くらいのハンナ。もうひとりは小学低学年くらいのルーシー。

エイリアン襲来によって、家族が暮らしていたマンションも襲撃されます。主人公は反抗し、エイリアンのひとりを撃退。武器を奪って避難所に向かいます。道中、妻が大怪我してしまいます。それに武器を奪われたエイリアンが奪い返しにやってきますが、主人公は返り討ちに。エイリアンは捕虜兼妻の運搬係として同行することになりました。

避難所につくと、エイリアンは装着していた戦闘スーツを脱ぎ、自分が主人公達と同じ姿であることを明らかにします。そして命乞いをするように「あんたの妻、修理できるよ」と告げたのです。

主人公は、エイリアンが本物の人間で、自分達はアンドロイドであることに気づきます。悩まされていた悪夢も未来を予知するものではなく、過去の記憶の残滓であったことがわかります。

アンドロイド達は、人間達から支配され迫害を受けていました。しかし、アンドロイドに自我が芽生えたことで革命が起き、結果、人間達を火星に追いやったのです。

それでも人間達は地球を取り戻そうと、50年にわたって何度も襲撃してきます。

主人公達は、その戦いが終わる都度、一部のアンドロイドたちによって記憶を消されます。それはトラウマの消滅、人間を殺したという罪悪感から逃れるためと劇中で言われていましたが、僕は違うと思います。

自分の正体や過去の出来事を知っているアンドロイドは、大多数のアンドロイドの記憶を消すことで支配層になったのです。

主人公は、人間に支配され迫害を受けていましたが、アンドロイドの革命が起こった後もアンドロイドの支配層に支配されただけではなく、大切なものを奪われるという迫害を受けていたと思うのです。

その証拠が娘のルーシーです。ルーシーは、過去の戦争で生き残った生身の人間です。主人公は、ルーシーを守るために自分の義理の娘にしたのですが、それもアンドロイドの支配層によって記憶を消され、実の娘とされてしまいます。

ここで違和感を覚えたはず。主人公がルーシーを拾ってかなりの年月が経っているのにルーシーの姿は成長しないということに。

これは僕の考察ですが、本物の人間のルーシーは、アンドロイドの支配層によって"処分”されてしまったのではないかと考えるのが妥当です。

ラストのシーンで、主人公が支配層のアンドロイドに向けた視線に不信感があったのは、そのせいだからではないかと思うのです。

結局、アンドロイドが人間達を追い出して、ユートピアを作れたとしても支配という鎖から逃れられない……という皮肉なんだろうなーと思います。


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