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桜回線【毎週ショートショートnote】

「CQ、CQ、こちら『桜回線』」

「こら、桜、無線機いたずらするな!」

おじいちゃんのアマチュア無線でいたずらをして、よく怒られていた。

「この機械は遠くの人と話すことができるの?」

「そうだよ。庭にアンテナがあるだろう。あれで電波を飛ばして、遠くの人と話すことができるんだよ」

庭には大きな桜の木があり、その桜の木の横に背の高いアンテナが立っている。

「おじいちゃん、すごいね」

「そうだよ。おじいちゃんはすごいんだぞ」おじいちゃんは笑いながら答えた。

おじいちゃんの5回忌が終わって、久しぶりにおじいちゃんの部屋に来た。

部屋には無線機と机と椅子だけ残っていた。

おじいちゃんの部屋からは満開に咲いた桜とアンテナが見える。

私は窓を開けて、部屋の空気を入れ替えた。

無線機でいつも遊んでいたことを思い出して、マイクを取った。

「CQ、CQ、こちら桜回線。おじいちゃん……聞こえますか?」

びゅうっと風が吹き、部屋の中に桜の花びらが入ってきた。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ 【魅力的な台詞ではじまるお話】ということだったので、全体を通して読むと始まりのセリフが魅力的なセリフになるようなお話にしてみました。エモショートショートです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。




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