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錬成は電卓の親族【毎週ショートショートnote】裏お題

秋になり、山が赤く染まるころ、鍛冶職人の朝は早くなる。

空に細く立ち昇る煙の筋は朝日を浴びてきらきらと輝いている。

鍛冶場は鉄を打つ音と男達の掛け声で活気に満ちていた。

「今日も錬成ですね」

「最近は錬成の仕事が多いからな。貴族が錬成欲にとりつかれてるんだよ」

「貴族や戦士だけじゃなく商人からも錬成の注文来てますよ」

「錬成した武器は強くなればなるほど希少性も高まり、その価値も上がるんだ」

「資本主義ですね」

「そうだな。だから、錬成は電卓の親族なんだ。資本主義って大きな声で言うなよ。電卓って言っておけよ」

「あっ、危ないところでした」

「まあ、資本主義が電卓かどうかは別にして、この社会の中で、今は武器の錬成が必要なんだろうよ。我々はただ請け負った仕事をしていればいいんだよ」

「そうですね。錬成した武器なんて我々には必要ないですからね」

「ごはんですよ~」と女性の声が遠くから聞こえてきた。

「よし!メシだメシ!」

「炊きたてのごはん~」


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ファンタジーショートショートにしてみました。一定の科学水準がある設定になっております。


*この記事は、以下の企画に参加しております。

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