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彦星誘拐【毎週ショートショートnote】

うだるような暑さの中、無職の僕は仕事を探し疲れて公園のベンチで休んでいた。

その公園はビルとビルの間にあり、ビル風が適度に吹いていて心地よかった。

「おお、いい風だ。自然の扇風機だ」

僕は独りごちた。なんならここに住みたいとさえ思った。

そのとき、強い風で飛んできたスポーツ新聞が、足にべたりと張り付いた。

「うわ、なんだ。新聞か。びっくりした」

僕はその新聞を手に取り、新聞の一面を眺めた。

見出しには「彦星誘拐か!?」と書かれている。

彦星がどこかに連れて行かれて行方不明になったらしい。懸賞金も出るらしい。

「懸賞金1億円!しばらく遊んで暮らせるぞ!」

気分が高揚し、いても立ってもいられなくなった。

僕は公園を出ようとして立ち上がると、公園の出口のところに人だかりができていた。

それは彦星ファンクラブの捜索隊だった。

これは彦星を見つけることができないなと僕がそう悟ったとき、お腹がぐうっと鳴った。

彦星を探すよりも、仕事を探さなければ。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※またなんかいろいろとバタバタしてきました。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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