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グリム童話ATM【毎週ショートショートnote】

その街はグリム童話が足りない人々で溢れかえっていた。

ー誰かグリム童話をください……

ーおお、どうか私にグリム童話を……

AIの台頭で人々は小説、漫画、美術、テレビ、映画、動画などの創作活動ができなくなり、創作が世界から消えた。

文化活動の消失。

人々は思考が停止し、何事にも消極的になった。

その世界での唯一の娯楽(と言って良いかはわからない)はグリム童話だった。

人々はグリム童話を読むと心が踊り、心が安らぎ、多幸感を得られる。

それはもう『欲』と言ってもよかった。

ーグリム童話欲

人々は労働の対価としてグリム童話が配給される。

そしてそれはグリム童話ATMにためておくことができる。

そのATMで出し入れができるが、一度引き出して読むとそれは消費されもう預けることができない。

僕はグリム童話を求めにグリム童話ATMに向かった。

引き出そうとすると画面には「残高がありません」の文字が表示された。

さあ、労働をしなければ。グリム童話のために。


(410字)



たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※困ったときのディストピアSFです。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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