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悲喜こもごも6 〜おとぎ話法話〜

↑月岡芳年画 浦島太郎


『浦島太郎』より


浦島太郎の物語は、古くは奈良時代の風土記や万葉集に原形が記されています。また私たちがよく知る浦島太郎の物語は、室町時代の御伽草子に載せられたものを、明治時代になって子供向けに改編したものです。

ある日、浜辺で子供たちに虐められているカメを助けた浦島太郎。お礼に竜宮城に連れていってもらい、乙姫さまたちに歓待をしてもらいます。楽しい時間を過ごした浦島太郎でしたが、ふと両親のことが気になり地上に帰りたいと乙姫に申し出ます。乙姫は別れを惜しみつつ「決して開けてはいけませんよ」と玉手箱を手渡し、浦島太郎はカメの背に乗って地上へと帰って行きました。

浦島太郎が浜辺に帰ると、そこで待っていたのは何年もの月日が経っていた世界でした。両親はいなくなり、誰も浦島太郎のことを知りません。あまりの寂しさに絶望した浦島太郎は、開けてはいけない玉手箱を開けてしまいました。すると、そこから白い煙が飛び出し、その煙を浴びた浦島太郎は老人になってしまいました。

という物語です。

この物語には、

「困っている人がいたら助けましょう」

「約束を守らないと報いを受ける」

という教訓があるように思います。

しかし、カメを助けた優しい浦島太郎がひどい仕打ちに遭うのは、あまりにも不憫で腑に落ちません。

子供に虐められていたカメを助けただけなのに・・・。

こんな理不尽な話があるでしょうか。



あります。



「相手のために良かれと思ってとった行動で、結果として自分の身に災難が降りかかる」といった理不尽は、私たちの世界にはいくらでもあります。

お釈迦様は、この世界の真実を「一切皆苦」とお説きになられました。

私たちは、身の回りの事だけでなく、自分自身の心やいのちの事であっても思い通りには出来ません。だからこそ、自分の思いにそぐわない「理不尽だ」と感じることが沢山あるのは当たり前のことです。しかし、こうした真理を知ることが出来ても、なかなか受け入れることが出来ないのが私たちです。

こういった物語は、理屈では分かりにくい世界のすがたを教えてくれているのではないでしょうか。

浄土真宗で大切にされる『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』『仏説阿弥陀経』にも、物語が説かれています。

そこには、私を救わねばならぬと立ち上がった阿弥陀仏の真実と、阿弥陀仏が救わねばならぬとご覧になられた私の真実が示されています。

                                                         合掌


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