《Brand Story》 日花_nikka ~365日間のキセキ~ (しみずゆか個展に寄せて)
「日花_nikka ~365日間のキセキ~」
きっかけは、2年前に出店したクリスマスイベントだった。
主催の方から「その場で絵を描いて販売することってできる?」という依頼を受け、一体なにを描こうか…と悩んでいた時に、ふとアイデアが浮かんだ。
「そうだ、花はどうだろう。」
来てくれたお客様の誕生花を描き、地面の下につながる根っこに名前をあしらう。
うん、素敵かも!
「誕生花イラスト」は好評で、お客様にも喜んでもらえた。
その人、その人に意味のあるものを手渡せたことも、とても嬉しかった。
年は明け、世の中は相変わらず流行り病が猛威を奮っていた。
いま、"第何波"だったっけ?
変わらない状況にも気が滅入るし、とめどない情報の嵐にも打ちのめされていた。
無心になりたいーそんな気持ちから、また筆をとった。
誕生花を描こう。
毎日誰かの誕生を祝う気持ちで、1年間続けよう。
365日を花で埋めつくそう。
2021年1月20日、誕生花を描くという日花(日課)が始まった。
〈日花〉は完成イラストだけでなく、描く過程からInstagramで公開することにした。
ライブ配信や動画撮影で、その軌跡をのこした。
その日、誕生日の誰かが見て、少しでもうれしい気持ちになれるように、なるべく前向きな花言葉を持つ誕生花をえらんで描いた。
自分の心に向き合い、時に励ますように、時に祈るような気持ちで。
描いて、描いて、描き続けた。
それは同時に〈日花〉を目にするスマホの向こうの誰かへの想いでもあった。
続けていると、投稿にコメントが来るようになった。
本人の誕生日はもちろん、家族や、大切な人の誕生日にも思いを馳せて、
花に込められた意味を感じ取ってくれる人がたくさんいた。
そんな想いの交換に、何度心があたたまったか知れない。
描き続ける日々は、幼い頃の自分をたどる旅でもあった。
時間があれば家で絵を描いている子どもだった。
何も考えず紙の上の世界に没頭していた、あの頃の気持ちがよみがえった。
たくさんの種類の誕生花が、故郷の島の自然を思い起こさせた。
実家の庭にあった花、近所でよく目にしたあの花が、記憶の中でまた咲いた。
私は幸せだった。
そして、生かされてきた。
今までずっとー。
365日の軌跡は、達成感よりも、
無事に手を動かし続けられたことへのよろこびをくれた。
「自分は自分のままでいいんだ」 ふしぎとそんな自信も芽生えた。
1年間描き続けてみて分かったのは、
生きていることの奇跡、その尊さだった。
そして、心に自分だけの花を咲かせることの大切さ。
〈日花〉を見てくれたみなさん、
Happy birthday!
この世にうまれた全ての命に、祝福の花束を!
「想い」をえがくartist しみずゆか さん。
広告制作などグラフィックデザインの仕事を初め、やさしい手描きイラストを活かしたロゴ制作、そして様々なアートワークの活動をされています。
クライアントの想いを汲み取り、カタチにする。作品に「想い」のエッセンスをしのばせるのが得意。とても素敵な方です。
『日花_nikka ~365日間のキセキ~』は1年間誕生花を描き続けたゆかさんの集大成として、大阪市鶴見区で開催された個展です。
こちらのBrand Storyは、ゆかさんへの90分インタビューの後に書かせていただき、リーフレットとして会場で配布されました。初稿をお送りした後、ゆかさんが「号泣した」と仰られたのが忘れられません。私にとっても心の震えるお仕事でした。
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