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「さわやか」とコミュニティ

「〇〇とコミュニティ」というタイトルで、既存の概念や存在をコミュニティと紐づけて考察しています。今回は、通称「さわやか」と呼ばれ親しまれている「炭焼きレストランさわやか」がコミュニティであると感じた実体験からの考察です(以下「さわやか」と呼称します)。なお、最後の訪問は2023年4月末のため記載内容は現在と異なる場合がありますことを予めご了承ください。

創業者の訃報

2024年3月12日午前0時、さわやかの公式Xで創業者の訃報が投稿されました。

同日正午現在、返信962、リポスト4.6万、いいね12万、ブックマーク3,168となっており「全店舗臨時休業」としてトレンド入りもしています。

また、Yahoo! JAPANトップページの「主要」欄にも掲載されています(アクセス地域:東京都内)。

これほどの「社会現象」を起こしている背景には、どのような「コミュニティ」としての要素があるのかを紐解いていきます。

カンパイジョッキ

数時間待ちの後、着席してまず最初に「コミュニティ」であると強く感じたことは「カンパイジョッキ」の存在です。

店内での行列待ちの間に気付いたのですが、レジ近くに「さァカンパイから始めよう!!」のサインが掲げられていることからも店として重要視していると考えられます。

レジ近くのサイン

このカンパイジョッキの存在が「さわやか」のコミュニティとしての性質を端的に表しているのではないか?と感じた理由、それは「包摂性(インクルージョン)」と「儀式性」「希少性」の観点からです。

(1) 包摂性(インクルージョン)
1-1「子供」のインクルージョン

さわやかの思想性として表出しているのが「家族だんらん」「親戚一同」などのワード。テーブルにある「さやかすごろく」の印刷された肉汁(ハネ)よけの紙に目をやると、その言葉が多くみられることに気が付きます。

また、ギフトカードの名称もまさに「SAWAYAKAだんらんカード(プリペイドカード)」となっています。

このことから、まず第一にさわかやが想定するのは「家族客」であり、「団らん」を支える存在であるという考えがわかります。その際に、

子供も大人みたいにカンパイしたい!

という願いを叶えるのがこの「カンパイジョッキ」です。マクドナルドの子供向け「ハッピーセット」もビジネス的な観点から利益が薄くても重要視していることからも「子供は将来のお客様である」という実利的な背景もある可能性があります。しかし、さわやかの場合はビジネス第一というよりかは「家族・親戚が一同に介する団らんの場」においてその障害(ブロッカー)を取り除き「さわやかのコミュニティづくり」の観点から「子供も大人と同じように」このカンパイジョッキが存在しているのではないでしょうか。

昨今、様々な場面で「多様性」を重んじようという動きがみられますが、「年齢の差を超えたコミュニティ」づくりを「さわやかという場(店舗)」を介してはるか前から行っていたということが言えるでしょう。

1-2「運転手」のインクルージョン
東京中心部の在住者にとっては、鉄道やバスなどの公共交通機関が発達しており自家用車を所有していなくても生活が成り立ちます。しかし、それは「東京は別の国」という言葉もあるように、東京以外では別の話です。「さわやか」に「家族」で向かう手段は、当然のごとく「自家用車」となります。改めて店舗ロケーションを調べてみると「静岡セノバ店」という静岡鉄道(静鉄)静岡清水線の新静岡駅と直結したショッピングモールに入る店舗以外は「駅チカ」「駅直結」ではありませんでした。このことから、その家族連れのなかに「飲酒できない人」が必ず1人は存在します。この人を「さわやかのコミュニティ」は優しく迎え入れてくれるわけです。

1-3「飲めない人」のインクルージョン
体質上、酒に弱い人が存在します。この人がいつも何らかの「会合」の場で味わうことになる「疎外感」「罪悪感」。しかし、このカンパイジョッキは、そんな人をも迎え入れることが可能です。通常、飲食店のメニュー構成では(居酒屋などアルコール提供が主である業態を除き)ドリンクは後のほうに掲載されていますが、さわやかでは「さァカンパイからはじめよう!!」のドリンクメニューが独立して置かれているか、メニュー中にも大きくフィーチャーされています。

このような様々な「インクルージョン」を行う背景には、何があるのでしょうか。それは次の「儀式性」の観点で説明します。

(2) 儀式性
コミュニティでは、ある決まった「儀式」が存在することが多いものです。たとえばIT業界のコミュニティで「お決まり」になっているのが、最後に全員で撮影する「集合写真」。

これによって、コミュニティへの帰属意識や仲間意識が生まれます。コミュニティは、所属企業、年齢、性別、経歴などが全く異なる多様な人が「仮想の家族」的に集う場であるため、このような「儀式」を通じ「家族の絆」を精神的に強めていきます。

さてこの儀式、実は「コミュニティの運営者」たるさわやか側によってさりげなく「リード」されています。テーブルについた店員さんがカンパイの「音頭」を取ってくれるのです。

何についてカンパイしますか?
例)◯◯さんのさわやか初来店にカンパイ!

もうこれだけで、コミュニティでよく見かける光景ではないでしょうか。そう、イベント開催後に開催される懇親会でのカンパイです。コミュニティは任意活動でありビジネス色は薄いことが多いのでかしこまった「祝辞」的な音頭取りは少ないにせよ、今日のイベント成功にカンパイ!などはよく聞かれます。コミュニティでの「お作法」があったほうがより帰属意識を持ってもらえるように、さわやかにおいてもこの「カンパイ」による儀式が熱狂的なファンを生む一因となっていると考えられます。

それでは、最後に「熱狂」を生む「希少性」について考えてみましょう。

(3) 希少性
3-1 静岡県内のみ出店
さわやかは全34店舗が静岡県内です。

品質やブランド維持のために、あえて他県(圏)進出をしない話は飲食業界でみられることです(例:551HORAI 蓬莱 大阪名物の豚まん[肉まん])。

特にさわやかの場合は関東圏に近いため「東京からわざわざ行く」という人も多く存在します。これもひとつの「儀式」といえるでしょう。つまり、

静岡=さわやか

の「第一想起」が成立しています。この「静岡県にしかない」という希少性やが、先述のような「自社コミュニティづくりのための施策」と相まって顧客の強い「ポジティブな記憶」、つまり「忘れられない顧客体験」に結びついています。つまり、

さわやかは「楽しい体験」を提供する店

という要素が強いといえるでしょう。

3-2 カンパイジョッキのプレゼント
調べをしていくうちにカンパイジョッキが「新店舗のオープン日のみ記念品として数量限定で配られる」ことを知りました。

このジョッキを手に入れられるのは、相当コアなファンのみです。新店舗のオープン日という「指定日時」に、その店まで足を運んでくれる最上位レベルのファン。この人たちは、きっと家族・知人・友人との会話、SNSや様々な場所で「さわやかのインフルエンサー」として存在しています。

「全店舗臨時休業」
最後に、今回のさわやか「全店舗臨時休業」についてです。X投稿ホームページ「新着情報」には、この臨時休業について

創業者を偲び想いを馳せるお時間

と表現されています。これはきっと「創業者自身の『コミュニティ』」のなせることだ、と深い思いを馳せました。創業者とは会ったことはありませんが、この「偲び想いを馳せる」に至る人間関係のコミュニティを通じてどんな人柄だったのがわかります。人は何のために、生きるのか。そのビジネスは、社会のどんな役にたつのか。そんな根源的な問いをいつも意識していきたいと自戒も込めて思いました。

コミュニティ育成・活性化支援を行っている#コミュニティデザイナーとしてミッションに掲げていること、

コミュニティ育成と活性化により内需拡大に寄与し
ベンダー(メーカー)ユーザー双方のサクセスを実現
以って日本社会に貢献する

コミュニティデザイナーのミッション

をこれからも心に深く刻み歩んでまいります。

静岡のすばらしきコミュニティの創業者に尊敬の意を表し、合掌。

#コミュニティデザイナー
コミュニティの立ち上げ・活性化などのご相談は @shindoy のDMにて受けつけております


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