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ペース経験とスタート直後の各馬の動きが波乱を生んだ砂G1を振り返る(第41回フェブラリーS・第58回小倉大賞典・第74回ダイヤモンドS・第59回京都牝馬S回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.02.18 22:00~からの文字起こしです。


第41回フェブラリーS

第41回フェブラリーS 出馬表

蒼山サグ(以下、蒼):東京の今年最初のG1となりましたフェブラリーSの回顧に移りたいと思います。こちらはこひさんの方から、まずはよろしくお願いします。

こひ(以下、こ):ペプチドナイルが勝ったということで、藤岡佑介騎手、久しぶりのG1勝ち、しかも大混戦と言われていた中で勝ったんですが、内容的には完勝と言えるような内容で、なかなかびっくりしたレースだったなと思います。やはり、このレースと語る上で一番のポイントは、思った以上に、多分誰もが思った以上にペースが流れてしまったというところで、私も昨日ここの展望のところで、ペースが落ち着くんじゃないのかなという話をしていたんですが、完全な見込み違いでした。やはり、そういったペースを導いたところの要因は2つかなと思っています。

まずは、ドンフランキーの池添謙一騎手が、距離不安というのはあるにもかかわらず、外枠を引いて、ある程度先行しやすい枠だったというところもあるんですが、完全に行き切るという判断をして、先手を取り切ったということですね。これがまず一つあったと思います。これは実際、ドンフランキーが、最終的にはこのペースでありながら、意外に粘り強く残っているところもありまして、選択肢としては全然悪くない選択だったのかなと思います。

もう一点、これは本当に不思議だったんですが、その内ですね、ドンフランキーの一頭内にいましたウィルソンテソーロですが、こちら今回騎手が松山弘平に乗り換わりになったんですが、どちらかというと、ちゃんとポジションを取りに行く動きをして、2番手を取りに行ってしまったというところで、これは全く想像していなかったところでびっくりしました。東京大賞典では、確かに逃げてはいるんですが、これはもう、行く馬が全くいないところで、完全なスローに落として逃げたという原騎手の好判断があったからでありまして、マイルの速い流れの番手というのは、ちょっとびっくりしましたし、ちょっと終わった結果を見ていても、どうしてこうなっちゃったんだろうなとは、少し困惑してしまう結果だった思います。

その結果なのですが、内側の方でも結構攻防がありました。昨日も、ムルザバエフ騎手、ドゥラエレーデがどのポジションに行くかというところが重要だという話をしていまして、過去2走のようにペースがある程度緩くなるんじゃないのかというような話をしていましたが、むしろ、想定していなかったほうが再現されてしまいました。チャンピオンズカップの時に、あまり砂を被る競馬をしたくないところがありまして、スタート後に1回ムルザバエフ騎手ドゥラエレーデを外に持って行って、間に馬を入れてからまた内に入れるという、結構面白い騎乗をしていたという話をした記憶がございます。その時には、その不思議な動きで川田騎手のクラウンプライドが煽りを食らっていた形だったんですが、なんと今回のダート1600というような条件であっても、同じような動きでスタート直後に4番枠からドゥラエレーデを外に持って行くというような動きをしていきました。

今回はそこで、ペプチドナイルの藤岡佑介騎手がいたので、あまり外には行けず、結果的にはその前にドンフランキーが来まして、揉まれないポジションを取ろうというムルザバエフ騎手の目論見というのも失敗する形になりますが、その時に、今回は後ろで一番人気に今回押されていましたオメガギネスが不利を受けるというような形になりまして、こういった形で前半ごちゃついたところはあったかなと思います。

今回、ルメール騎手のジョッキーカメラがYouTubeで公開されていますが、それを見ると、悲鳴が上がっている状況も含め、状況がよくわかるかと思います。完全に不利なので、ムルザバエフ騎手は制裁3万円を支払うという制裁となりました。結果的には、ドゥラエレーデにとっても、オメガギネスにとっても、スタート時点で大きな誤算を抱えた形になったかと思います。

このような形で、ドンフランキーがいわゆるピュアなスプリンターのペースで行き切りながら、先行し、競り合いもあったことで、ペースが下がるわけもないという形。2ハロン面の10秒8から11秒1、11秒7という形で、かなり速めに流れることで、レースの質としては完全なハイラップの消耗戦というところに決まったかと思います。この後の800m、最後の4ハロンについては、ずっと12秒台ですが、最後の1ハロンは12秒9かかるという形で、G1に限らず、東京のマイル戦では見られない展開になったんじゃないかと思います。ただ、そんな中でも、序盤から4番手ぐらいを取っていて、勝ったペプチドナイルは先行していました。さらに直線では、唸るような手応えから前が止まったこともあり、早めに先頭に立って押し切るという形で、このような展開でありながら、前の馬が自力で突き抜けるところは、今回11番人気での勝利になりましたが、ペプチドナイルの実力というところは、しっかり認めなければいけないところかなと思います。その後ろはうまく立ち回ったタガノビューティーが飛んできましたが、ちょっと早めの仕掛けだったか、脚が最後まで続かない形になりました。外から白い場合のガイアフォースが伸びてくるところと、あとは武豊騎手らしい自分の競馬をやり切ったセキフウが飛んできたところがゴールという形のレースになりました。

勝ったペプチドナイルですね。この馬につきましては、藤岡佑介騎手が乗るようになってから、前に馬を置いて砂をかぶった競馬をしても大丈夫というような形で、モデルチェンジができた印象自体はありましたが、その部分が本当に今回この大舞台で効いてきたなというふうに思います。やはり今回、こういった非常に厳しいペースになったというところですね。これ、多分オメガギネスの敗因でもあるのかなと思うんですが、こういったペースの経験があるかないかというところは、非常に大きなポイントになったかなと思います。この馬自身は、本当にもともと中距離で逃げる競馬で勝ったり負けたり、特にハイペースで自らが止まったりですとか、そういったレースを昨年1年間ずっと繰り返してきた馬でした。昨年1年オープンを回って8戦3勝というような形で、そろそろいつでも重賞勝てるなというようなところで、積み上げてきたハイペースで削り合いの経験値といったキャリアというところが、今回G1の舞台で、そしてマイルという舞台で花開いたというような形かなというふうに思います。やはりこれは、本当に2走前からしっかり控える競馬でモデルチェンジをさせた藤岡佑介が自らつかんだ勝利だったのかなというふうに思います。

2着に突っ込んできたのがガイアフォースですね。これは初ダートでこのレースで馬券になるというのは非常に難しいというのは歴史が物語っているところではありまして、本当にこの馬の血統的なところというのが改めて示されたところかなと思います。母が南関重賞で活躍しましたナターレ、父がキタサンブラックキタサンブラックは瞬発力というよりはこういった持続力というところが非常に持ち味として現役時代、そして種牡馬としても出てきているんですので、そういったところの血統的な魅力というのが存分に出たかなと思います。特に父キタサンブラックにとっても、ダートでこれだけのパフォーマンスが出せるという意味ではすごく価値のある2着だったと思いますし、賞金的にあまり持っていない立場の馬でしたので、G1の2着の賞金を加算できたというところも、今後のローテ選び特に非常に効いてくるというところで、2着ではありましたが、非常に陣営的には価値のあるレースだったのではないでしょうか。

3着のセキフウですね。これは、もう後方から大外一発という形でどこまでハマるかというところで、他の馬と比べて外を選んだというところまで含めて、もう本当に武豊騎手がお見事というしかない状況だったかなと思います。あとは4着のタガノビューティーですね。一瞬勝つかというような雰囲気に見えた瞬間もあったかなと思いましたが、こういったペースでのチャンスではありましたが、結果的には仕掛けが少し早かったかもなと思います。とはいえ、前走スローペースのまま後方で敗れていたところですとか、直線に逆にスムーズすぎるぐらい進路が開いてしまったというところも含めて、ちょっとこの馬にとって運が足りなかったかなという印象です。

上位組で言いますと、最後5着のキングズソードですね。この馬は割とハマりそうな展開に見えたんですが、直線での進路の狙いどころが中途半端な形になり、ちょっと能力としては発揮しきれなかったのかなと思います。この馬もジョッキーカメラが出ていましたが、3、4コーナーで結構前でスピーディキックがいて、フラフラしていて、ちょっと動きが難しかったというところが一つ。あと、そういったところもあって、直線思い切ってインを狙っていったんですが、普通であればそこは開くであろうポジションですね。オメガギネスの後ろというところがまさかの完全な死に目になってしまったというようなところで、ちょっと運にも恵まれなかったところはあるかなと思います。ただペースを読んで思い切り外に行ってもよかったんじゃないかなというのは、終わってレースを見直しながらでは思ってしまったところではあります。

また人気での負け組ですが、本当にオメガギネスは序盤の不利とハイペース経験がないというところのウィークポイントというのが非常に出たかなと思います。とはいえ、ここで非常に厳しい経験を積むこと自体はできましたので、またこういった経験を積んで、似たような舞台設定でもっといい脚が使える可能性というのはあるかなと思います。ドゥラエレーデについては、やはりスムーズな競馬に持ち込もうという意思もありましたが、やはりそこに持ち込めない、持ち込ませないと周囲のジョッキーが動くと脆さが出てしまうなというところですね。これまでのチャンピオンズカップ東京大賞典というのは、そういったところがすごくうまくいっていたので、そういった脆さというところが改めて出てしまったかなという印象です。

全体を通して見てきますと、本当にこのレースがもう1回再現するかはともかくわからないところはありますが、上位に来ること自体は一定の能力がないと絶対にできないレースではあった印象です。配当面で言いますと大波乱というような形ではありますが、配当ほど能力的なもので言うと番狂わせではない、一定評価ができるレースだったのではないかなというふうに思います。ただ、改めてこの着順を見ていると、なんかダート1700mみたいな感じがしてきて、消耗戦になっていくと結構レースの質が変わるなと、改めて思わされる非常に終わってみても面白いレースではあったかなというふうに思います。一旦、以上になります。

蒼:ありがとうございました。それでは、ゆたさんの方から補足などございますでしょうか?

くらみゆた(以下、ゆ):はい、そうですね。ダート路線は、ちょっと前までは古馬になってからも、雑巾がけが必要というか、ペース慣れ、砂を被るところ含めて経験が必要とされることが多かったんですけれども、今回ちょっとメンバーが落ちたというところがあったので、それによって、やはりハイペース経験というのが効いてきたのかなという印象があります。

その中で、ガイアフォースが上位に来たというところは、なかなかチェックしないといけないかなというところがありまして、やはり芝路線の方がG1レベルになってくると、ペース経験含めだとスピードが問われるところがあるので、ダートでもこのレベルだったら、ある意味通用しちゃうんだなというところが思ったところではあります。この後、今後10年20年ダート路線がどんどん充実していくとは思うんですけれども、やはりあんまり早い時期から長距離のダートレースというのはやっても、ぬるい競馬になっちゃうのかなと思いました。芝路線ではやはり日本の競馬、斬れや瞬発力を生かして、世界一駆け上がってきたわけですが、ダート路線。どんどん通用するようになっているんですけれども、やはり最後ブリーダーズカップ、アメリカってことを考えると、もっと2歳3歳の頃からどんどん速い流れを経験させるような番組構成になっていくといいのかなとは思ったところではあります。

あとはウィルソンテソーロの松山弘平、スローペースになっても、ちょっとフワッと早仕掛けするんじゃないかって話を昨日したんですけど、まさかのハイペースになったのに早仕掛けという形になりました。やはりこの1年見てるとペース判断の悪さが気になりますね。前半の最初の2ハロンとかはしょうがないかと思うんですけど、3コーナー、4コーナー行っても、ペプチドナイルよりもどんどん前に行く姿勢を見せてるっていうところで、本当何をしたかったのかわからないというか、いくら何でも体内時計がどうなんだと。ドンフランキーがでかいので、ペースが速く感じなかったのかもしれないですけど、それにしてもちょっとというレースだったかなと思いました。勝負所で変に色気をもって中途半端な乗り替わりすると負けるパターンが多いということがよくありますが、そのパターンだったかなと。

蒼:ありがとうございました。さて、お二方からお話を伺いましたが、どうでしょう。最後に何か付け足しなど、お二方どちらの方でもありますでしょうか。

こ:そうですね、イグナイターが一瞬、おっと思わせる瞬間もありましたし、かなり厳しいポジショニングをしたわりには、そこまで大負けをしなかったというところ。次はドバイに行くという陣営のコメントも出てましたが、やはり11着という着順ではありましたが、伊達にJBCを勝ってないなというところは思わせたかなと思います。あとは、このような厳しいペースになって、ミックファイアが意外に頑張ってるんですよね。7着というような形で、結構内で揉まれる苦しい競馬でありながら、このような着順に来たというところで、現4歳、去年のジャパンダートダービー路線のレベルはあまり高くないのではという話をしてきましたが、結構いい経験値を積んだレースにはなったんじゃないかなと見ています。

第58回小倉大賞典

第58回小倉大賞典 出馬表

蒼:小倉第11Rの小倉大賞典の回顧から入っていきましょう。こちらはゆたさんからよろしくお願いします。

ゆ:はい、お願いします。重賞ではなかなか好走が続かないベテランと、じわじわと経験を積んでオープン、リステット勝ちまでたどり着いてきた古馬の対決で典型的なローカル重賞っぽい形でした。結果としては、素質馬がやっとここでタイトルという形になったと思います。

レースなんですけれども、ホウオウアマゾンこちらがつまずいてスタート直後に落馬というところがありました。一方で、前を見ると今村騎手のセルバーグ、これが積極的な逃げの策に出る形で、このレース、幕を開けています。最初のコーナーでセルバーグが完全にハナを取り切ると、2番手にフェーングロッテン、その後ろにアドマイヤビルゴという隊列になりました。ホームストレッチに入るところで外から空馬のホウオウアマゾンが好位の外をちょっと併走するような形になったというところが、今日のレースのポイントだったかと思います。セルバーグ、前半の参加論を35秒0で、その後ゆるめずに11秒0、11秒2と刻んで、最初の1000mは57秒2と早い流れになっています。この中でホウオウアマゾンがちょっと好位の外側をチョロチョロしていたので、なかなか後ろから前を詰めるタイミングが難しくなったのかなと思いました。結果的には、そうはいっても、というところで後方勢が詰めてきたのが残り600を過ぎてからという形になりましたので、直線入り口では単騎先頭でセルバーグが気持ちよく入るという形になっています。パッと見、このまま押し切るかなというふうに見えたんですけども、直線でエピファニーがかなり力強い脚で伸びてきて、セルバーグを捉えて1着、外から伸びたロングランが2着、逃げたセルバーグが3着という結果になりました。

勝ったエピファニーは、道中は中団外追走していて、前進気勢も強かったんですけれども、割と早めに馬の後ろに入れて、折り合い付きました。3コーナーにかけても、慌てることなく外を出さず、最近この回顧でもよく言いますが、内ラチ沿い2頭目を丁寧に回って押し上げて、直線でうまく馬の真ん中へ誘導して出すという競馬でした。いいエスコートだったと思います。この馬前走中山金杯でピーヒュレク騎手がスタートで出負けして、道中かかりっぱなしで、さらに位置を取りに来たという、結構めちゃくちゃな走りをしてたので、ちょっと後遺症が心配されるようなところだったんですけれども、レース前コメントを見ると、杉原誠人が中間付きっきりで調教してうまく調整つけたということでした。調教過程もレース内容も完璧で、杉原誠人には自信となる最新の勝利だったんじゃないかと思います。

2着のロングランは、小回り向きのヴィクトワールピサ産駒というところで、これだけ流れれば差し込めるというところなんですけれども、ちょっと再現性があるかは微妙なところかなと思います。あと、3着のセルバーグですね。これ久々に今村聖奈が見せ場を作ったという形になったんですけれども。ハナ取りに行く積極的な競馬をしたというところは良かったと思いますが、空馬のアシストがあった割には、ちょっと道中ぶっぱなすような競馬になってしまいました。もう少し息を入れるタイミングがあれば、もっときわどいレースができたのかなと思います。やっぱり2年目、なかなか乗れない現状なのかなというところがあります。馬を自分で動かすというのは、まだまだスキル的に厳しいところがあるので、今後も穴を開けるんだとすると、やっぱり前進気勢の強い馬で逃げ残るパターンなのかなと思いました。以上になります。

蒼:ありがとうございました。こひさんのほうから補足などございますでしょうか。

こ:このレースは、半分感想みたいな話になりますが、スタートのタイミングでダンディズムが出遅れたところが非常に印象的でした。こちら富田暁騎手が前走勝ってこのレース勝負に挑んでいるところで出遅れをしてしまうという点で、そういえばペプチドナイルも持ってかれたな、ということを思ったんですが、まさかその10分後にああいう結末になるとは思わされたところです。これは、本当にレースとしては偏ったレースになりましたので、次にどうするかというよりは、今回は杉原騎手を褒めるべきレースだったかなと思います。ありがとうございました。

第74回ダイヤモンドS

第74回ダイヤモンドS 出馬表

蒼:東京第11R ダイヤモンドS の回顧に移っていきましょう。まず、ゆたさんからよろしくお願いします。

ゆ:ダイヤモンドS は例年のごとく、中距離でちょっとスピードが足りない、天皇賞春にもちょっと足りないというようなステイヤーが集まってくる一戦となっています。最近は、海外も3000m級の挑戦が増えているので、このステイヤー路線、ステイヤーズテークスからダイヤモンドS そして目黒記念というのは、もうちょっと面白くなってもいいのかなと思うんですけれども、結果を見ると結構凡戦が多くて、今回も上がりの競馬になってしまったのは、少し残念だなという感想です。

レースの方なんですけれども、ヒュミドール が逃げる形で、外からグランスラムアスク が追いかける形となりました。1周目の3,4コーナーは少し早い流れになったんですけれども、ホームストレッチに入るとペースが落ち着く形になっています。スタートからサリエラテーオーロイヤルと人気馬が好位についていきましたが、この並びになったことでやりやすかったのはテーオーロイヤル、菱田裕二かなという印象でした。1周目の直線に入ったあとは、ダラダラと逃げていく形で、正直石橋脩の逃げが後ろを削るような逃げでもなく、あまり意思が感じられない、ちょっと言ってしまえば無策の逃げという感じになってしまったので、あまり見るところがないまま最後の直線に入っていたなという印象です。ステイヤーズステークスでは結構前半攻めた騎乗で、後続を幻惑して、先日亡くなったビートブラックを思い出させるなんてこともあったんですけれども、再現性の無さが石橋脩の現状というか、ホープと言われたこともあったねと言われるような感想になってしまったところかなと、ちょっと寂しくなった逃げでしたね。結果的には、ラップが緩んだのも2コーナーの13秒6ぐらいというところで、淡々としたスローでひたすら流れた結果、好位にいた斬れ味がある人気馬というのが相対的に優位という形になりました。上位人気馬の33秒台の末脚比べの中で、テーオーロイヤルが連覇するという結果になりました。

勝ったテーオーロイヤルなんですけれども、菱田騎手が3番人気のワープスピードを3、4コーナー締めながら直線に入っていたというところが良かったというところと、あとサリエラを目標にしながらのレースというのが良かったかなというふうに思います。この路線では、まだまだ長い活躍が見込めそうですけれども、春の天皇賞というのは勢い的にどうかなというイメージです。2着のサリエラ。これは牝馬なんですけれども、去年凱旋門賞への登録があったぐらいで、おそらくミオスタチン型がTT型で確定しているのでしょう。まだ引退までしばらく時間ありますので、この路線では活躍しそうだなという認識です。ちなみに3歳ではレガレイラが牡馬路線選んだんですけれども、ディープインパクトやキンカメハメハみたいな強い種牡馬がいなくなった時代には、ノーザンファームが牝馬も含めて距離適性重視に舵を切っているかなという印象があります。いわゆるダイワスカーレットだったりとかウオッカが活躍した時代を繰り返しているのかなというイメージがありますので、次の覇権種牡馬が出てくるまではこの流れが続くのかというところは注目したいなと思いました。

3着のワープスピード。こちらは逆にドレフォン産駒でこの句より走り切れるというところなのが面白いですね。すなわちドレフォン産駒は、おそらくこれはCC型じゃなくてCT型なのかなと。この辺が、ドレフォンが2年目以降は弾けないというところかなと。スピード活かすなら短距離型の牝馬を付けたくなるんでしょうけど、この血統ですので、本当はディープインパクト牝馬を付けたい。でもちょっとスピードが足りなくなる馬が出る可能性があるというのは、なかなか配合が難しいのかなという印象を受けました。以上になります。ありがとうございました。

こ:このレースは、本当に一言で言いますと、びっくりするぐらい退屈なレースだったなと思います。本当に隊列がここまで入れ替わらない長距離戦というのも、逆になかなかないなと思います。そういう意味では貴重なレースだったなと思います。改めて結果のところを見てますと、1・2着菱田ジョッキー、ルメールジョッキー以外は関東のジョッキーが並ぶような構図であったというところと、今週はカタールのエミールトロフィーがあって、更に裏の京都牝馬ステークスが結構メンバーが揃っていい騎手があちらに揃ったというところで、そういった騎手的なところの消去法も含めて、このレースになるべくしてなったのかなというところを改めて振り返って思わされました。

第59回京都牝馬S

第59回京都牝馬S 出馬表

こ:京都牝馬ステークスの回顧をさせていただきます。今年はメンバー構成が非常に特徴的で、スプリント路線の実績組であるナムラクレアメイケイエールが共に参戦という形で、高松宮記念の前哨戦みたいな位置づけになってきているというところがありました。改めて周辺のレースの条件面を見てみたんですが、この後中山でありますオーシャンステークスや、阪神の阪急杯だと徐々に間隔が短くなっていくところですとか、手前にありましたシルクロードステークスはハンデ戦なんですね。この京都牝馬ステークスはグレード別定という形に近年変わりましたので、牝馬の実績馬としては使いやすい、そういった条件かなと思います。また、このグレード別定というところの仕組みが比較的過去1年の実績に重みが置かれるというような斤量の付け方になっていまして、今回ですと重賞が多く勝ってますナムラクレアメイケイエールは56キロという形なんですが、ちょうど1年前の桜花賞トライアルで結果を出してきましたシングザットソングモズメイメイは57キロというような形で、若干バグったような斤量設定になっているところもありまして、今後もこういった短距離の実績馬、特にG3をモリモリ勝ってる馬がこういったレースを使ってくるケースというのはあるんじゃないのかなと思いました。あとは、新しい京都になって初めて披露する形になりましたDコースという形でコース替わりになりまして、今日の序盤は内が使えたりもしていましたが、最終的には小倉開催の最終週みたいな感じの競馬になってきたなというような印象です。特に直線の横幅が狭くなってしまい、カメラワークが難しそうだなというところも印象的でした。

レースとしましては、モズメイメイの方が行きまして、後ろのところにはプレサージュリフト。続いてナムラクレアと同厩舎のジューンオレンジが付けるような展開になってきまして、なかなか息をつけるところがないような構成並びになったのかなというふうに思います。結果的にラップを見ますと、11秒台の前半が綺麗に並んでいくようなラップになっていきまして、最終的なレースは前と後ろが大幅に入れ替わりましたが、レース全体としては最後まで淡々と11秒台前半や11秒台の6が1個あるぐらいというような形でラップが落ちることなく走り切ったそういったレースでして、ちょっと勝ち馬と2着馬の地力の高さというところは改めて非常によくわかるレースだったのかなというふうに思います。

今回最終的には外から差してきましたソーダズリングナムラクレアというところが1、2着になった形になりましたが、改めてレースを見直していますと本当に丁寧に乗った武豊騎手の見事な騎乗でのクビ差での勝利だった印象です。特に武豊に一番うまいなと思ったところとしましては、こういった馬場状態でありながらも、あくまで内を回れるところは回っていきまして、直線でも外に出していくというよりは、ちゃんと間が空いたらそこを突いていくというような競馬をしまして、コースロスを抑えたところが最後のクビ差に繋がったかなと思います。特になかなかそこを狙うのは度胸がいるなと思いましたのが、直線でメイケイエールの内を狙ってそこをちゃんとすくって立ち回っているというところ。メイケイエール皆さんご存知の通り、今日も若干抑えきれないような手応えで外から上がっていくというような動きも見てましたし、直線どこに行くかわからないようなところもある馬という印象ですが、その馬のところでも一頭分の隙間があれば、ちゃんとそこを狙って競馬をするというような丁寧さが最後の伸びというところに繋がったのかなという印象です。

一方、ナムラクレアの浜中騎手は非常にゲーム的な騎乗というか、とにかく直線に入ったら全力で追うという戦略を取っていました。この馬自身も33.6秒を記録しており、通常であれば勝てるレースだったのですが、細かいところでの丁寧さが欠けていたため、最終的に差が出てしまったように思います。ナムラクレアに騎乗する浜中騎手に対する評価は少し厳しくなりがちですが、今回のレースでは、そのような細かい点で負けた印象があります。ただ馬体重的にも少し余裕を残して臨んだ1400mのレースでこの内容であれば、本番に向けての良い前哨戦だったと思います。

3、4着については、後方でしっかりと脚をためて、直線で伸ばしてきた馬たちが上位に来たという印象です。次走以降という意味では前にいって崩れた馬に注目したいと思います。勝ったソーダズリングについては、距離を徐々に短くしてきたタイプの。元々は中距離で、フローラステークスで2着となり、クラシックに参戦した後、三年坂ステークスからマイルを使い、今回は1400に距離を短くしてきました。次は高松宮記念ヴィクトリアマイルを目指すのかはわかりませんが、操縦性を含めて非常に高い能力を持つ馬であると思います。どちらの路線でもある程度の評価をしたいと思います。はい、いったん京都牝馬Sのこの振り返りになります。

蒼:ありがとうございました。それでは、ゆたさんの方から補足などございますでしょうか。

ゆ:そうですね、三着に来たコムストックロード。これ、2月で引退迫っている中野栄治調教師の馬、何でも走っているな、というところです。あとはこの馬、母父がDiesisSharpen Up系の種牡馬でだいぶ前の馬じゃないかなと思ったら、やはり1980年生まれの馬でした。こういう古い血統がいきなり出てくるというところが、ちょっと今の京都競馬場の馬場の具合を示しているのかな、とはちょっと思ったところです。


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