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レコード決着の牝馬トライアル勝ち馬、そして皐月賞馬の本番に向けた評価は?【第77回セントライト記念・第41回ローズS回顧】

この記事は、2023年9月18日21時00分〜 競馬評論サークル芯力のレース速攻回顧スペース2023.09.18からの文字起こしです。

第41回ローズS回顧

蒼山サグ(以下、蒼):はい。ローズステークスの方からいきたいと思いますが、こちらこひさんからお願いいたします。

こひ(以下、こ):はい。ではローズステークスの方を触れさせていただきます。レースの構図としては、近年のトライアルらしいメンバーというような印象で、トップホースであるリバティアイランドはいないというところで、ラヴェルソーダズリングが春の上位勢力というような位置付けでできまして、夏の上がり馬がぶつかるというような構図のレースでした。ただ終わってみれば、日本レコードが出るようなレースになりまして。

蒼:すごいタイムでしたね。

こ:そうなんですよ。ちょっとびっくりする時計が出ましたし、上位は全て上がり馬が占めるというような形になりまして。元々だと秋華賞はあまり面白みもなく、リバティアイランドが三冠制覇かなというような空気感はあったかなと思いますが、そこに対してちょっと切り口、まあ面白さというのが生まれるようなレースにはなったなという印象です。何よりも開幕2週目で馬場が良かったのがありまして、そういう時計の対応力が求められるレースになるだろうということは分かっていましたが、前半5ハロン57.2という驚異的なラップを刻んでいきながらも、上位入線馬が上がりの33秒台で走り切っているというのが、あまり記憶にないようなレースでして、こういった舞台設定で走れるかどうかというのは一つの分かれ目になったレースだったかなと思います。とはいえ、隊列や馬群はあまりハイペースになったような印象もなくて、私もレース見ていてちょっとミドルぐらいかな、ひょっとしたらややスローかなと思ったら57.2が出てきまして、かなりびっくりしたレースでした。やはり鞍上がペースをちゃんと読めているかどうかというのは、このレースの最終的な大きな分かれ目になったような印象です。

勝馬のマスクトディーヴァなんですが、そんなペースの中どちらかというと外を回して早めに抜け出している感じというような形、ペースを見ているとむしろ負けてもおかしくないんじゃないのかなというようなところから突き抜けてきて、距離ロスも大きい中やや早めに抜け出すというところで、決め手としては世代屈指のものがあるんじゃないのかなというところは示したかなと。時計が特殊だったというのがあっても、このパフォーマンス自体はなかなか見れるものではないなというような印象です。たまたま私の出資馬が前走一緒でかなりインパクト十分な走りでぶち抜かれるという経験をしていましたので、正直この馬はどこかで出てくる馬だなと思ってはいたんですが、いきなりトライアルでここまで強烈に勝ち切るとはという、なかなかびっくりするようなレースでした。時計が求められるような馬場状態であれば、本番でも楽しみは間違いなくあるかなと思いますし、京都競馬場も久しぶりの開催になるので、そういう馬場状態になる可能性というのは十二分にあるんじゃないかなというふうには思います。マスクドディーヴァという名前通りではあるんですが、母方に短距離の追い込みで活躍しましたビハインドザマスクがいて、母父がディープインパクトというような感じで、瞬発力がすごいのはうなづけるような血統背景があります。ルーラーシップ産駒でこういう馬場になると時計勝負で輝くようなタイプで、秋華賞とか先も含めて今後も重賞戦線ではしっかり活躍できそうな馬が勝ち切ったなという印象です。

2着以降ですが、2着のブレイディヴェーグですね。これは出遅れありましたが、先ほども言いましたが、鞍上がうまくペースを読んで慌てずに後方でしっかりと構えるというところで、直線大外から32秒9というこの流れで32秒9使えるんだというような、この馬もかなりのパフォーマンスを見せたかなと思います。ルメール騎手も手応えを感じるようなコメントをレース後出してましたし、パフォーマンスとしては素直に評価できると思います。何よりルメールがリバティアイランドを倒す競馬を考えて本番に挑めるんじゃないのかなというような、そういったところのパフォーマンスを見せれたということは陣営も含めて大きな収穫だったかなと思います。

3着のマラキナイアですね。これも川田騎手がうまくペースを理解して後ろから競馬で率直運んで3着というような形です。前の2頭と比べると内容に大きなインパクトがあったかというと見劣りますが、馬体重を春からきっちり増やしてこの競馬で乗り切れましたので、今後楽しみというのはあり得るのかなというふうに思っています。

蒼:こちら一口クラブの馬なのですが、3ヶ月前の条件戦負け、そこから休み明けでローズステークス、ここで3着って出資者だったらかなり絶頂じゃないかなと。

こ:いや本当ですよね。よくこういうローテを組めたなと思いますし、社台ファームの好調を感じたところですね。あと今回目立ったのはマスクドディーヴァの1個前のポジションから競馬しながら、最後までココナッツブラウンが踏ん張って5着していました。北海道シリーズで堅実に勝ち上がってきて、ここで一線級との勝負だったんですけど、時計勝負でも洋芝で勝ってきた後に対応してきていますので、今後条件戦をきっちり勝ち上がっていっていつかはオープンでというレベルのパフォーマンスというのは昨日の時点では見せたかなと思います。あとは実績組の評価が難しいなというところで、ラヴェルは調整過程にやや不安があるようなところもありましたし、ある程度ちょっと前に行ってしまったところもあったかなと思います。気性面のムラがあるので買い所は難しい馬だなというのが率直な印象です。ソーダズリングも手応え残して直前に入ったんですが、ちょっと後続の上がりと比べるとあの上がりが出せないという感じで、なすすべなくというような感じで、普通の馬場ならちょっと見直せそうではあるんですが、秋華賞でリバティアイランドと戦えるようなインパクトというのは少なくとも昨日の時点ではなかったのかなという印象です。

蒼:はい。ありがとうございました。じゃあゆたさんの方から補足などございますでしょうか。

くらみゆた(以下、ゆ):はい。そうですね。すごい時計だったというところで、ローズステークス阪神の芝1800のU字型のコースというところで時計は出やすくというか末脚も伸ばしやすいコースだったと思うんですけど、母父のディープインパクトというのが1着2着という形になったので、この辺母系に入ってもディープの庭の一つだと思いますので向いているのかなというのを改めて思ったところですね。一方で11着以下ですかね、ノーズヒルズキズナ産駒が3頭並んで入線しているというのがあってですね、これ阪神じゃなかった方がこの辺の馬は走りやすかったのかなと。

先ほどこひさんからお話もありましたが、まだまだ京都は馬場もいいと思いますので、どれくらいのタイムが出るのかなというところは楽しみなんですけど、一方で内回りのO型コースに変わるというところもありますので、最近なかなかG1のオッズというのも見えにくいんですけど、マスクドディーヴァが人気するようだったらちょっと嫌いたいとは思ってますね。

蒼:はい。ありがとうございました。プラスちょっと取るに足らないトピックスなんですが、先ほどゆたさんの方から母父ディープのワンツーということでちょっと新しい風が吹いているという話でしたが、調教師をずらっと見てたら、1着辻野、2着宮田、3着吉岡、4着茶木と、こっちは新しい風が吹いているなって思いました。ここまでが5年目までの調教師さんで、その下の5着上村さんでも6年目なんですよね。

こ:そういう若手期待の調教師はやっぱり牝馬から素質馬が来るような感じもあるかもしれないですね。

第77回セントライト記念

蒼:本日行われました中山記念のセントライト記念の回顧をしていきましょう。ではこちらまずはゆたさんからよろしくお願いします。

ゆ:はい、よろしくお願いします。セントライト記念、非根幹距離の中山芝の2200というところと、秋競馬で状態の良い馬場というところで、今回もそこそこ高速馬場での持続性能というのが求められるレースにはなったのかなと思います。 結果的には逃げたドゥラエレーデが引っ張ってくれましたので、各馬能力を出し切ったレースだったかなというのが、思ったところになります。

レースの方ですけれども、そのドゥラエレーデ、想定通りの逃げスタートで引っ張る形になりました。レーベンスティールは内、シャザーンはちょっと斜め前でしたかね。断然人気だったソールオリエンスが外側から馬群の外を追走する形というところで、これは出馬表を見て大体想定通りの隊列というふうに考えてよかったのかなと思います。注目だったラップなんですけれども、ドゥラエレーデが積極的に引っ張りましたので前半60秒1というタイム自体はそこまで速くなかったと思うんですけれども、あまり凹凸のない、息が入るようなところがないようなラップを引っ張るという形になりましたので、前はちょっと苦しくなるような展開だったかなと。残り800くらいからじわっとソールオリエンスが動いたところで後方勢との差が詰まってきまして、3コーナーではシャザーンが先に動くんですけれども、その外からレーベンスティールが進出して、ソールオリエンスは大外を回ってくるという形になりました。先にシャザーンが抜け出したところ、外からレーベンスティールが一気の進出ではそのまま押し切りという形で重賞初制覇という形になりました。

勝ったレーベンスティールですね。春はちょっと体調面もあって噛み合わない競馬というのが続いたんですけれども、今回中間もかなり攻めて-4キロというところで、今回秋初戦だったんですけれども、絶対勝つぞという強い意志を感じる調整で見事に勝利をものにしたという形になったと思います。陣営の執念を感じました。モレイラ騎手もスタート直後にイン入れて、道中で内で脚を溜めて、向こう正面ではシャザーンの斜め後ろについて、残り400からスムーズに外に出すとまっすぐ伸びての快勝というところで、追わせて本当に馬の邪魔をしないというか重心移動が上手いというか、最後まで脚を使い切るというのが非常に上手な騎乗だと思います。以前に比べるとマジックマンといわれたような自在性というかレースの支配力がなくて、割とダビスタでいうところの「得意脚質:先行」みたいな感じのレースが多いところであるんですけれども、その先行の質自体はやっぱり高いなというふうには思いました。お父さんがリアルスティールというところで芝1800がベストだった馬ですので、それこそ先ほどの阪神の芝1800みたいなところはいいイメージはあるんですけれども、母系はリアルシャダイトウカイテイオーというところもありますので、今回ラジオ日経賞より距離が伸びてパフォーマンスが上がったというところもあり、他馬が苦手にするぐらいだったらこのままチャンスがあるんじゃないかなというふうに思いました。

2着のソールオリエンスは、いかにも前哨戦という走りで、騎手も調教師も含めて馬の成長を確かめるような走りだったかなと思います。道中を無理もせずに最後よく追い込んできたというところなんですけれども、正直もっと圧倒的な走りを見せてもおかしくないというところも感じましたので、3歳この世代の中で突出した馬ではないというのは改めて考えておいたほうがいいのかなと。右回りだとコーナリングもちょっとぎこちないかなというイメージもありましたし、お父さんキタサンブラックモチベーターというところで字面上は距離持つように見えるんですけれども、ちょっと気性的に上のお兄さんとかのレースぶり見てもさらに適性が向くのかなというイメージはわからないところです。レース後の手塚調教師のコメントも菊花賞では一工夫という感じだったので、やっぱり陣営も胸を張っていけるかというと、やっぱり距離自体は持つのかもしれないんですけれども、何か工夫がないとロスが多くて頭には厳しくなってしまうことはあるのかなというふうに思います。こちらもちょっと人気の場合は本番では嫌いたいかなというふうに思いました。

3着のシャザーンですね。こちら前々のポジションと積極的な競技で、こちらも血統的にお父さんはロードカナロアですけども距離延長をこなしてもおかしくはない母系ではあります。ただ非根幹距離が得意な母系で芝2200。今回かなり適性的にはハマってますし、先ほどのローズステークスも含めて岩田望来騎手は結構うまく乗れてる、ちょっと前の重賞だと固くなるような岩田望来はいなくなっちゃいましたので、そう考えると今回もかなりうまく乗っての3着というところもありますので、ここで菊花賞でさらにというところになるとどうかなというふうには思っております。

気になる馬でいうと最後方から最後差してきたキングズレインですね。ルメールがもっと距離伸びていいという話もしてましたし、こちらがルーラーシップ産駒ということになりますので、もしこれ前目でも競馬できる馬だと思いますので、京都の菊花賞も前々でストライド活かす競技ができるようになってくるとちょっと怖いかなというふうには思いました。はい。以上になります。

蒼:はい。ありがとうございました。ではこひさんの方から補足などございましたらよろしくお願いします。

こ:はい。そうですね。2点触れたいなと思います。1点は4着に来たセブンマジシャンですね。2歳の時から結構期待度も高く、ホープフルステークスで人気の一角を背負って、京成杯で一番人気だったような馬だったんですが、ちょっとそこら辺のところの路線進んでいく中でうまく賞金が詰めず、小倉に行って勝ち切れずみたいな、ちょっと苦しいところが続いていましたが、今日若干ポジションが悪い中でもいい脚で最後はキングズレインを差し返すような形の脚も見せていまして、立ち直るようなところっていうのが見えてきたんじゃないかなと。賞金的に菊花賞という感じではないんですが、またオープンに戻ってくる馬じゃないかなというふうに思っています。

あとはレーベンスティールをちょっと見ていると、つい皆さん母父トウカイテイオーの話ばかりしがちなんですが、父リアルスティールでようやくこういうタイプの馬が出てきたなというところがすごく嬉しいなと思うと思うんですね。非常に切れ味鋭い脚を持っているタイプのリアルスティールというか、あまりリアルスティール産駒のキャラクターっていうのが立ちにくいのがこれまでの印象ではありましたが、ちゃんとこういう馬が、しかも育成はノーザンですけれど日高の牧場から出るというのはなかなか面白いなというところがすごく思います。これで菊花賞はタスティエーラサトノクラウンと合わせるとリアルスティールキタサンブラックというドゥラメンテ世代というのがずらずら揃ってくるというところで、改めてあの世代の能力の高さ並びに種牡馬としての可能性の強さというところを感じるセントライト記念だなと思います。


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