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ダートマイル王者の圧勝と武豊の代打騎乗が決まったレディスプレリュードを振り返る

この記事は、競馬評論サークル芯力のレース速攻回顧スペース2023.10.09からの文字起こしです。


2023年レディスプレリュード(&トルマリンS)

こひ(以下、こ):レディースプレリュードの方からお話しさせていただきます。今回ですが、現状のJRAの賞金上位組が顔を揃え、地方の総大将としてスピーディキックもいるというような形で、なかなか見られないほどのハイレベルなメンバー構成になったと思います。いろんな馬のパーソナリティというのがすごく現れたレースになったという印象です。結果的には、先ほど申しました馬の中では人気がない6番人気でしたが、前走の牡馬相手に名鉄杯を完勝していましたアーテルアストレアの馬は、剛脚が決まったというようなレースになりました。

レースの方を振り返りますが、やはり頻繁なダートグレード競争といいますテリオスベルがどうするかというところに、結構大きくペースが左右されるところがあります。一方で大井の1800mは以前も触れたかと思いますが、1コーナーまでの距離が短く、出脚がつかないがどうしても行きたいというテリオスベルには基本的に外枠が欲しいコースになります。そこで中ほどの枠を引いてしまい、相変わらず出脚がつかないというところもあり、結果的に逃げたノーブルシルエットですとか、ヴァレーデラルナに1コーナーまでの間に馬の前に入られるというような形で、非常にテリオスベルとしては苦しい展開になりました。1、2コーナーでまくり上げていくしかないという、少し前のテリオスベルのいつもの展開みたいなレースといえるかと。また、逃げたノーブルシルエットですが、これがなかなかペースを落とせなかったように見えました。そういったところもあり、レースのラップとしましては、600から1200の間に一番速いペースが出て、なかなか見ないようなラップになっており、結果的には先行馬には非常に苦しい展開になったという感じに見ています。ただテリオスベルは困難な展開でも、粘り強く4コーナーでは楽に一頭抜け出すような構図になってきました。そのため、この路線で多くの馬に乗って勝利してきた岩田望来騎手が、その後ろにいるライオットガールに乗っていたということで、テリオスベルを意識して早めに潰しに行くような形でスパートをかけていたように見えました。そのような動きがあり、最終的には有力馬の中では後ろでためていたグランブリッジアーテルアストレアが外から突き抜け、最後はアーテルアストレアグランブリッジをねじ伏せたという形のレースになりました。

勝ったアーテルアストレアは、名鉄杯で古馬相手のオープンを見事に勝利し、既にダート競走で通用する実績があったと思いますが、今回人気がなかったのは右回りに不安がある、好成績は主に中京に集中していたところからでしょう。しかし今回は、右回りでも直線が長い大井競馬場ということで、この馬の持ち味である末脚が発揮できたと思います。ペースがハマった点もありますが、トップ層とも互角に戦えるパフォーマンスは明確に出せましたし、今後のこの路線では注目です。特に今回、鞍上の武豊騎手が急遽乗り替わった点もありましたが、勝利よりも馬を気分よく走らせて直線で力を発揮させることに重きを置いたのが良かったかもしれません。この馬は、先ほど左回りの方が良いという話をしましたが、中京でも優れたパフォーマンスを発揮する馬なので、今後のJBCレディスクラシックでも注目ですが、今回の賞金を積んでチャンピオンズカップに挑戦する可能性もあります。その時にはぜひとも狙いたいと思います。

グランブリッジは最終的に2着でした。今年のこの路線の中核はこの馬ですが、アーテルアストレアの加速が3コーナーで少し鈍いところで、鞍上の川田将雅騎手が早めに進路を外に出し、取っていくという形で、騎乗も含めて完璧だったと思います。これで負けたら仕方がない内容です。本番になるとグレード別定のところの1キロが減って、勝ち馬と同じ斤量になれば、当然本命される一頭となると思います。3着は3歳のライオットガールでした。これは一番タフな競馬だったと思います。早めに動き、それでも後続に差し切られたとはいえ、半馬身差に粘っていました。牡馬相手にレパードステークスを勝ったということで、古馬牝馬の相手であれば通用するというところを見せたと思います。ただ、ポジショニングが一番中途半端なところにいたので、展開と仕掛けどころが難しいと感じました。

テリオスベルは、大井の1800だとこんな感じになってしまうかなと感じました。これまで力を見せていますが、本番も含めて、大井で勝ち切るイメージは湧きません。スピーディキックは、これまでのダートグレードの牝馬路線で戦ってきたレースと比べると、ここまで揃うとちょっと力負けした感じがします。先行して早めに息切れする形でした。先行したヴァレーデラルナは、ペースが早すぎたというポジショニングと、斤量が他の馬より2キロ多いというような言い訳は一応できると思います。ただ、結構いろんな特徴と決め手を持っているタレント揃いになってきたこの路線で、今この馬がどう立ち回ればレースを勝ち切れるのかという課題があると感じます。本番は、この現状の6頭に加えて、シリウスステークスで1着のアイコンテーラーと休み明けのペルアアが加わっての8頭が中心になるレースかと思いますが、テリオスベルが居る状況を考慮すると、似たようなの質のレースになる確率が高いと考えています。今回の上位3頭と、これらの3頭を比較すると、もう1頭、恐らく前の位置を取るであろうアイコンテーラーがどこまでやれるのか、というのが大きな焦点となりそうです。以上が、レディスプレリュードの振り返りでした。

最後にトルマリンステークスについて少し追記しておきます。通常であれば、トルマリンステークスは牝馬限定の準オープンレースで、これを勝つと、例年のイメージとしてはJBCレディスクラシックに進むこととなります。しかし今年はその枠が今のところなさそうで、勝ち馬であるサーマルソアリングに枠が回ってこなさそうです。陣営もそこに視野に入れて、中一週で使ってきた可能性があると考えていますが、アーテルアストレアがしっかりと賞金を稼いでしまったため、現状ではそのまま行くと補欠になるでしょう。ただこのサーマルソアリング、今回でダート三戦目になりましたが、逃げているミラクルティアラという3歳馬が中盤でペースを落として良い形で逃げ、そのまま残っても全く違和感のないレースだったと思います。ちょっと離れた3番手から見ていて、3コーナー、4コーナーと徐々に差を詰め、直線では少し鞭が入りましたが、まだ余力がある形で抜け出しました。まさに、底を見せずにオープンまで勝ち上がってきたという印象です。ダートのタイムとしては1分50秒9という形で、上がりは目一杯追わずに36秒3というパフォーマンスでした。この後、JBCに出場する可能性は他馬のアクシデント待ちという状況はありますが、牡馬混合に出走しても十二分に通用するような数値を残しています。2着となったミラクルティアラ。父はヘニーヒューズ、母はミラクルレジェンドという血統でダート血統ですが、夏の札幌では、これまでの1200-1400mから1700-1800mまで距離を伸ばしてきましたが、パフォーマンスはどんどん良くなってきています。そのため、将来的にはこの路線に出てもおかしくないという印象です。以上がトルマリンSのレース回顧でした。

2023年マイルCS南部杯

こひ(以下、こ):先ほど終わったばかりのマイルCS南部杯2023では、レモンポップがある程度人気になっていましたが、ここまで抜けているものかという、2秒差の大勝大楽勝というレースで、正直ちょっとびっくりしたパフォーマンスでした。 スタートの時点で対抗馬と見られていましたカフェファラオの方が、やや出負けし、レモンポップが先に行って、番手にイグナイターでその後ろの内にカフェファラオという隊列ができてしまいました。 カフェファラオ自体は揉まれない、外でスムーズに動くというところが、一定の好走条件になる馬だと思います。 その隊列ができてしまった時点で、今日は岩手の方の高松亮でしたが、誰が乗ってもちょっとどうしようもないような並びになってしまったなという印象でした。 その後ろで最終的には3着になりましたレディバグがうまく運んで、そこにはジオグリフという馬がいましたが、このジオグリフもダートのスピード勝負になってしまったところでは、ちょっと分が悪く、早々と圏外になってしまいました。 3コーナーからは、完全にレモンポップの手応えは良くて、2番手以降の各馬の手が動きまくるという状態になってしまいました。直線に入ったら早々と決着がついたというようなレースでした。 レモンポップ自身が、最後は直線を流しながら、盛岡のダート湿っていたとはいえ上がりタイムが34.7秒出されてしまい、逃げ馬にこれを出されてしまうと、後続の出番は何もないというようなレースでした。

レモンポップは先週のシリウスステークスも触れましたが、謎の栗東坂路留学を敢行して、叩き台というよりは、ここで結果を出すためにしっかりとプロセスを組んできたと感じます。これまでの東京でのレースを思い返しますと、何かに先に逃げてほしいところがあったのかもしれません。しかし、自身が逃げてもこのパフォーマンスができたというのは、大きな収穫だと思います。当然、来年のフェブラリーは、今からでも大本命と言えるでしょう。しかしその間に使うレースがほとんどないので、中間には、シリウスステークスに出走してみるという色気を出していたのがパフォーマンスではなく、チャンピオンズカップを本気で狙っていく方針があれば、中京1800乗りにくいコースではあるのですが、先行できそうな枠が引ければ、チャンスがあるのではないでしょうか。(補足:レース後にBCマイル、チャンピオンズカップ、JBCスプリントのどれかを選択との報道あり)。

蒼:とにかく、このパフォーマンスは圧倒的でしたね。

こ:良馬場でも十分ですが、少し湿った馬場は更に良いみたいですね。あとは2着に入ったのはイグナイターですね。逃げた馬が大きく引き離すときに、番手の馬が残るのはなかなか難しいなと思いますが、このレモンポップを追いかけて残したというのは本当に立派の一言かなと思いますし、先ほど言いましたカフェファラオもしっかり内に閉じ込めるような形での、鞍上の騎乗も非常に良かったかなというふうに思います。この馬の場合は、次JBCスプリントに行くのであれば、ドンフランキーもなぜか次のレースとは年明けみたいなことを言っていましたし、意外にちょっとメンバー低調になるのであればそこは順当にチャンスが来るのかなという印象です。次にレディバグについて。3着という結果、短距離でのスピードレースでの適性が中央でオープン走っていた馬であったので、その適性がしっかり発揮できたのではないでしょうか。このまま夏に重賞を勝って賞金を稼ぎ、より短距離の方で、牝馬路線から卒業している形ですが、その結果としてパフォーマンスを牡馬の中でも出してきているのではないかと思います。さらに、大外から一気にタガノビューティーが飛んできたのも含めて、渋った南部杯らしいスピードが求められるレースだったという印象です。

G1馬のカフェファラオの方についてですが、敗因が分かりやすく、走れる条件がこのレースとフェブラリー割と限られるタイプだけに、そろそろ次のステップに進むかどうかというところに注目しています。また、ジオグリフについては、コーナー4つの競馬の方がダートであってもいいのではないかという印象があります。最後に、G1級のレースの大差というのは、レギュラーメンバーのダービーグランプリ以来の結果ではとTwitter(X)でも話題になっていました。盛岡で条件を揃えると、そのようなパフォーマンスが出やすいのかもしれませんが、非常に強烈なインパクトだったと思います。

蒼:ゆたさん、何か補足などありますでしょうか。

くらみゆた(以下、ゆ):はい、直前の栗東坂路留学も含めて、関係者が春から夏、秋にかけてどう使うかというのをよく考えた結果の今回の南部杯の勝利だったのではないかと思います。フェブラリーステークスの勝利も含めて、陣営のタッグというかコミュニケーションの良さというのが感じられた一戦だったと思います。一方で、先日の優駿のインタビューとかで、調教師はスプリントをまだ諦めていない、というようなコメントも出ていたので、この後のフェブラリーステークスの間に何を使うのか、というのは本当にいろんな選択肢がまだあるのかな、と思いつつも、あまり無理して使う馬でもないので、どういう選択をするのか、というのは、楽しみにしたいなと思います。何か使ってくるのであれば、よほど自信を持って出して、陣営は来るんじゃないかな、と思いました。以上になります、ありがとうございました。

蒼:ちょっと個人的な感想なんですけど、レモンポップの父のレモンドロップキットって、確かウイニングポストの5か6ぐらいで、僕がすごく使ってた馬のような気がするんですよね。それが2023年に日本でこんな良い馬を出してくるかって、なかなか脳がバグるなと驚きました。

ゆ:Kingmanboの直仔ですからね。最後の世代だったはずですね、確か。私もフェブラリーステークスの時に調べたんですけど、本当にちょっと驚きました。本当にこのスピードは日本で種牡馬入りするの楽しみですね。

こ:そうですよね。16世代目ですよね。ビーチパトロールとか走ってたのもだいぶ前ですよね。

蒼:2023年になって、こんな走る馬出すというのは改めて驚きでしたね。

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