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今年のキズナ産駒はひと味違う?共同通信杯に続けて見せた瞬発力は本物か?(第72回阪神大賞典・第73回スプリングS・第38回フラワーカップ・第38回ファルコンS回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.03.17 17:30~からの文字起こしです。


第73回スプリングS

蒼山サグ(以下、蒼):それではスプリングステークスの回顧に移りましょう。ゆたさん、よろしくお願いいたします。

くらみゆた(以下、ゆ):皐月賞トライアルのスプリングステークスですが、レース後の感想としては、共同通信杯と同じような印象を受けました。かなりのスローペースで、皐月賞には繋がらない内容だったと思います。しかし、最後の2ハロンでシックスペンスが素晴らしい斬れ味。このキズナ産駒をどのように評価するかがポイントになったレースだと感じました。

レースを振り返ってみると、とにかくペースが遅かったですね。アレグロブリランテが先頭に立った後、スピードメーターは終始57キロ台と、明らかにスローな流れ。向こう正面では向かい風が吹いていたとはいえ、このペースだと最後の直線は余力十分な状態で追い風の中での斬れ味勝負になるのも当然。その中で突き抜けたシックスペンスの斬れ味が目立ったレースになったと思います。

今回のレースは、勝利したシックスペンスをどのように評価するかだけのレースと言えると思います。ペースがスローだったことを考慮しても、上がりタイムが33秒3で、2着馬とは0.6秒差。これは昨年までのキズナ産駒では考えられないような瞬発力で、共同通信杯ジャスティンミラノが勝利した時と同じように、キズナの繁殖レベルが向上してきた結果、さらに他馬との相対的な力の差も含めて、去年までと変化が見られる今後に向けては注目となるかと。血統的には父がキズナ、母がアメリカ系牝馬という配合ですので、皐月賞への適性は十分にあると思われますが、今回のレース内容だけを見ると、日本ダービーでこそ好走しそうな印象を受けました。

国枝栄調教師のダービーチャンスが今年を入れても後2回しかないんですよね。皐月賞を使っても当然なんですけれども、夢はダービーにかけていって直行。もしくは府中の馬場を経験していませんので、そういう意味で、青葉賞、NHKマイルカップあたりを使ってダービーという、もしかしたら藤沢、松国ルートすらあるんじゃないかなというところで、次走の判断には注目したいと思います。まあダービーを勝つという意味では直行が一番可能性が高いのかなというふうに思いますね。あとは騎手の関係。ルメール騎手にはレガレイラがいますのでそこと兼ね合いで、短期免許の外国人騎手を含めてどういう形式になるのか。もう一戦使って力の違いを見せて騎乗確保を狙うという可能性も全くないわけではないのかなというふうに思いました。

とにかくレース前はいつものスプリングステークスかなと思ったんですけれども、レース後の感想を見ると思ったよりもダービーにつながってもおかしくないパフォーマンスを勝ち馬が見せたなという印象がありました。2着以下は道中の並び順で決まりましたという感じなので、特にコメントはないです。

蒼:こひさんはいかがでしょうか。

こひ(以下、こ):私もこのレースは勝ち馬がきっちりとパフォーマンスを見せて賞金を積んで、ダービーまで出れる権利を確定させたというところが全てのレースだったかなというふうに思います。あとはレースを改めて見ていても、上がりがみんな同じくらいの33秒台、中盤くらいでまとまるようなレースにはなっていまして、その馬なりの課題設定があった一戦とはいえ、他に人気していたウォーターリヒトの幸騎手であったり、ジュンゴールドの坂井瑠星騎手が後方追走のままで終わったのは残念でしたね。

第72回阪神大賞典

こひ(以下、こ):阪神大賞典の回顧をさせていただきます。天皇賞が京都に戻ったこともあり、阪神での長距離戦という舞台設定が重賞としてはこのレースだけになりました。そのため天皇賞のための叩き台というよりは、まずはこのタイトルをしっかり取りに来たというような馬が出走した、そんな構図になりつつあったと思います。今回の出走馬を見ても、ステイヤーズステークス、ダイヤモンドステークス、日経新春杯、万葉ステークスというような、ステイヤー路線から連戦してきている馬が多く、現状の長距離路線のタレントが一通り揃ったレースになったと思います。結果として、このレースにしては珍しく15頭という形で、頭数が揃ってきたという印象もありました。そういったところも含めて、近年のこのレースの位置づけが結構固まってきている印象です。

レースは序盤、ジャンカズマディアスティマが一見やり合うような形には見えましたが、下のスピードメーターを見ますと、全然ペースは上がることはないというような形で、3ハロン目の12秒9からは5連続で13秒台、下のスピードメーターを見て55キロ近辺というような超スローの展開に入っていきました。そんな中で勝ったテーオーロイヤルですね。この馬は早々と2番手の内という一番ロスのない立ち回れる場所を確保し、あとは直線どこを捌いていくかという場所さえあればというような構えだったと思います。さらにその後ろには、もう一頭の人気馬のブローザホーンが、テーオーロイヤルを見る形になり、馬群が早々と固まったレースとなりました。

レースのポイントとしてはワープスピードの川田騎手が1人だけ動きを見せていった形。2周目の1,2コーナーで外から内に入れていき、向こう正面に入ってもペースが上がらないところで、みんな空けていました1頭分空いていたインから進出をしていくという動きを見せました。ちょうどペースがまだ緩んでいるところで、インからポジションを上げていくという形で、馬にもロスがない形でポジションを上げていき、プリュムドールをパスして、内から先ほど言いました、テーオーロイヤルの後ろにつけていたブローザホーンに並びかけるという隊列に。結果的にはブローザホーンが本来確保していたテーオーロイヤルの後ろのポジションを奪い取るという形になり、川田騎手とワープスピードがロスのない立ち回りで位置取りを確保。直線は前の2頭の間が空いたところで、あとはテーオーロイヤルが抜け出すだけという形で、1頭だけ上がり34秒3とかなり突き抜けた上がりのタイムを出しての5馬身は、まさに完勝だったと思います。2着には先ほどのワープスピードが川田騎手の上手い立ち回りで直線でも狭いところから突っ込みました。ブローザホーンワープスピードに内から押し出されて外に出された分だけの3着でした。またインを同じく立ち回っていたプリュムドールがその後ろに来て、スローで道中ずっと流れていった長距離戦らしく、内を上手く使った馬が上位になったそんなレースだったと思います。

結果としてはテーオーロイヤルの強さばかりが印象に残るレースで、ブローザホーンや、今日も外に並びかけて手が動いていたディープボンド、この辺りとの勝負付けは済んだように見えると思います。ここ2戦は、あまり出入りのない競馬ではあったものの、ダイヤモンドステークスではラスト3ハロンでの競馬、今回の阪神大賞典では早めにペース自体は上がっていましたので、ラスト5ハロンの競馬でもしっかり結果を出しました。また出入りが結構激しい競馬でも安定して走れていたように、長距離戦でのレースパターンの受け皿がすごく広い馬になったという印象です。やはりそういったところの、どんな競馬でも対応できるというところと、充実度を加えてみると、本番でも期待できるポジションで、あとはドゥレッツァ筆頭とする別路線組との力関係、あとは枠順で天皇賞どうなるかが決まってくるのかなと。

今日のレースを見ていても、菱田裕二騎手の落ち着いた騎乗ぶりもすごく目についたところでありまして、彼にとっても最大のチャンスが到来したと思いますので、今日のように落ち着いて乗ることができれば、タイトルを手にする可能性というのもあるのではないかなと思いました。以上になります。ありがとうございます。

蒼:では、ゆたさんの方から補足ございますでしょうか。

ゆ:そうですね。2点ほど。1つは川田将雅騎手が3000m級の重賞を勝っていないというのが、レース前にちょっと話題になっていて、その点において川田将雅騎手の腕をちょっと疑うようなコメントをインターネット上ではチラッと見かけました。それを見て「いやいや、そんなことはないだろう、これだけ技術的にきちんとした乗り方をしている騎手が、3000mだけ下手ということはないだろう」と思っていたところで、今回ワープスピードが2着という結果だったので、まあ、そりゃそうだろうなと思いました。まあ当然の話なんですけど、ふとなんで私が川田将雅騎手のことを心の中で擁護しなければいけないんだろうというのをちょっと思ってしまいましたね(笑)。最近の回顧や川田本を通じて思い入れが高くなってしまっているということを自覚しました(笑)。

あとは、サヴォーナは期待していたんですけど、ここでも負けてしまって6着というところで、4歳牡馬が苦しいというのはずっと続いている印象です、天皇賞春で人気になるドゥレッツァは前回のレースは別に悪いレースではなかったんですけれども、周りのレベルだけ考えると、なかなか他力では力を証明できていない状況ですので、天皇賞春を勝って、本当に自分の力を証明していかなきゃいけないレースになったというふうに思いました。

第38回フラワーカップ

蒼:中山で行われましたフラワーカップの回顧の方に移っていきましょう。こちらは、まずゆたさんの方からよろしくお願いします。

ゆ:一勝馬の対決となった一戦。桜花賞路線となると少しスピードが足りないかなというメンバー構成でしたけれども、結構淀みない流れで、逆にオークスに向けては楽しみな勝ち馬が出たなというレースだったと思います。

レースの方ですが、エルフストラックがハナを主張する形で、外からテリオスサラという形になりました。後続勢の後ろにミアネーロ、外にカニキュル、内に人気のカンティアーモがちょっと行き脚がつかないような形で後方という隊列で1、2コーナーを通過しています。比較的早めに並びが決まったんですけれども、エルフストラックがあまり緩急をつけない流れで引っ張ったことで、ほぼ12秒台は続くという競馬になりました。ですので、前半の1,000mが60秒ぴったりという競馬になりましたので、結構淀みない流れ、スタミナを問われる流れになったと思います。このまま大きな流れがなく4コーナーまで流れていったというところになりましたので、好位勢は直線手前で手が動くような形になりました。その中で良い手応えで内を鋭く回ったのはミアネーロ。直線もスムーズに外に出すと坂の手前で抜け出して1着。道中勝ち馬と並んで追走も最後に外に出したホーエリートが2着、3着にカンティアーモという競馬になりました。

勝ったミアネーロ。道中からストレスなく中団追走できたのも良かったと思います。全体的に締まった流れになったことで、道中から4コーナーずっと内にこだわった津村明秀騎手のファインプレーも光りました。直線の進路取りも迷いがなかったので、年明けから調子が良さそうだった津村騎手ですけれども、この春ちょっと期待できそうだなという流れだと思います。オークスに向けて盤石というライバルがいませんので、ここからしっかり間隔を空けて本番に挑むのであれば、怖い1頭になりそうだなと思いました。ちなみに私、来週40口出資馬のデビューが津村騎手で予定されているので、この流れで一発期待したいと思います(笑)。

2着のホーエリート。こちらはスタートから出していったんですけれども、原騎手のレース後のコメント通り、1,2コーナーでちょっとハミを噛んでしまって、折り合いに徹しなければならなかったことでポジションが下がってしまいました。ただ、3,4コーナーから外に決め打ちして、ストライドを活かして走りをしたというのは、ルーラーシップという父馬の良さを出せる走りだったと思います。負けてはしまったんですけれども、ここで賞金2着を詰めたことは今後に向けては大きいと思いますので、AプランがダメでもBプランを遂行できたというのは原騎手の最近の充実ぶりを見せたなと思いました。

3着のカンティアーモは出負けに苦しい競馬。こちらは外に決め打ちして進路を無くしてしまって、最後は結局勝ち馬の内をつくという形になりましたので、ちょっとルメール騎手らしからぬ判断だったと思います。土曜日は暖かくなってきたのに、まだルメール騎手は解凍されていないのかなと思いましたけども、今日は勝ちましたね(苦笑)。ルメール騎手もテレビに出るのは久々だと言ってましたけれども、これからエンジンがかかってくるのかという印象でした。

蒼:気温でコンディションが決まっているのかもしれないですね。

ゆ:(笑)。このレースだけで言うと、その後ろにいた横山典弘騎手ラビットアイをインでズドンと差してきただけに、カンティアーモはちょっともったいない競馬だったのかなと思います。この3着というのは力負けではないのかなという印象でした。以上になります。

蒼:はい、ありがとうございます。こひさんはいかがでしょうか。。

こ:このレースに勝ったミアネーロですが、前走では非常に不利な展開となり、全く自分の競馬ができていないような印象でした。そういった状況の中で、津村騎手が手綱を取り戻してきたというところで、チャンスを見事に活かして勝ち切ったというレース内容は素晴らしかったと思います。この展開で向正面を先頭で通過し、その後方で混戦となる中で、しっかりと突き放しているところを見ても、本番に向けて十分に楽しみな存在だと感じました。

また、先ほど原騎手のプランについての話題が出ていましたが、原騎手のコメント力の高さが今回のレースを見ていても非常に印象的でした。どのように考えて乗りどのようにレースを進めてきたかを、マスコミの質問にもしっかりと答えられるという点が素晴らしく、最近は上位のレースでの騎乗機会が増え、コメントが記事になるところからも伺えるようになってきました。最近は様々な厩舎からのオファーが増えているようですが、そういった競馬に挑む前の考えや、それを受けての結果をしっかりと説明できるという点も評価されているのではないでしょうか。以上が私からの補足となります。ありがとうございました。

第38回ファルコンS

蒼:昨日の中京11レース、ファルコンステークス、こひさんの方からよろしくお願いします。

こ:ファルコンステークスですね。フィリーズレビューの際にも触れましたが、3歳馬も1400m以下の路線と1600mマイルの路線が分かれてきている傾向があると思います。このレースは1400m以下の路線寄りの馬が集まってくるポジションになりつつあり、NHKマイルカップよりも、葵ステークスサマースプリントへという印象の馬が多く集まるようになってきています。その中で、朝日杯からのリベンジを狙うシュトラウスが、あえて距離短縮をさらにしてきて参戦するというのが目立ったレースになったかと思います。

レースはスタートから割とあっさりと隊列が固まった印象で、逃げたオーキッドロマンスの外にキャプテンネキナムラアトムという形で、2列目の内から2頭目に人気の一角であったソンシという形になりました。ペースは淡々と流れていて決して遅いわけではありませんが、道中はあまり動きはないレースでした。注目のシュトラウスは、ゲートをあえてそろっとを出したような印象で、道中は離れた最後方で折り合いに専念という形でした。そのあたりまでは結構良い運びには見えたかなと思っております。

直線では先行したオーキッドロマンスがなかなか止まらないというところもあり、並びかけたが抜けきれないナムラアトムというところに、大外から飛んできたのがダノンマッキンリーという形でした。この馬は前2戦、ルメール鞍上に結構力んで折り合いに苦労してきて直線は弾けないという形でしたが、今回は鞍上を北村友一に切り替え、後方待機の態勢で臨みました。コーナーも丁寧に回すとかではなく豪快に外をしっかりぶん回していきながら、完全に結果的に内有利先行有利というレースの中で一気に突き抜けたパフォーマンスは圧巻だったかなと思います。能力的にも抜けていたと思いますし、思い切った後方待機作戦を含めて、陣営の仕掛け方は実った形だと思います。同じ左回りのワンターンというレースでもあり、NHKマイルカップでの再現性も可能性としては期待できるようなパフォーマンスだったと思います。なかなかファルコンステークスというのはNHKマイルカップに直結する印象はないレースではありますが、今年はちょっと変わってくるかもしれないという印象です。

逃げて残った2着のオーキッドロマンスも手応えがあっての好走で、ペースも含めてうまくまとめたところです。逆に3着以降はあまりパフォーマンスとして目立ったところはないような印象でした。人気の一角だったロジリオンは、出遅れからあまり積極的にポジションを取りに行かないで、直線のところでは既に勝ち筋がなくなったような印象でした。

シュトラウスは直線外に出そうという意志はあったものの、操縦性が良くないというところと、外にいたタイキヴァンクールが壁になったこともあり、大外に持ち出してストライドを伸ばすような競馬はできず、内の渋滞に突っ込んでしまい、良いところが出せないような競馬になってしまいました。今回のレースを見ていて、あえて距離を短くして後ろからの競馬をさせて、何とか我慢する競馬を覚えさせたいという気持ちは伝わってきたんですが、結果としては中途半端な形になったかなと思います。東京の広い直線にかけてパフォーマンスを上げれるかというような形ですが、中間の一週前追い切りでも、暴走で陣営からもすごいコメントが出ていたりと、本当に難しい馬だなというような印象です。モーリス産駒の気性に何かある馬たちの明暗が分かれたような印象のレースでした。以上になります。

蒼:ゆたさんのほうから補足のございますでしょうか。

ゆ:そうですね。今年のモーリス産駒、評判が高かったんですけど、なかなか結果が出なくて、ここでやっと一つ結果が出たのは良かったなというところ。また比べてしまったら難しいと思うんですけど、難しい馬をここで復活させている藤原調教師と武井調教師の違いがちょっと出てしまったのかなという印象もありました。ただ、シュトラウス自体はかなり難しい馬なのは事実だと思っていて、今回のレースは確かに後ろからの競馬になったんですけれども、抑えが効いて後ろからだったのか、シンプルにこの1400mのペースではついていけないから、後ろで折り合ったというか走れたのかというのもちょっと評価が難しいところだったのかなと思います。先ほどこひさんからも話があったんですけども、結果的に、ここを使ったこと自体はあまり積み上げがないというか、ちょっと中途半端な結果になってしまったのが残念かなというふうには思いました。

ただ、そういう意味で言うと単走で走れれば多少は折り合いがつくようなイメージあるので、どちらかというともう距離を伸ばして逃げ馬に育てた方がいいんじゃないかなという気もするので、テンのダッシュ力の課題はありますが、サイレンスズカ路線的な、そっちの方を目指して頑張ってもらいたいなと思いました。以上です。

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