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G1の谷間の3重賞回顧。秋に繋がるのは牝馬路線?(第41回エプソムカップ・第31回函館スプリントS・第29回マーメイドS回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.06.09/16 16:30~からの文字起こしです。


第41回エプソムカップ

蒼山サグ:
東京11レースです。エプソムカップの方に移りましょう。こちらの回顧もこひさんからよろしくお願いいたします。

こひ:
はい、エプソムカップですが、こちらは近い条件設定の重賞があって、メンバーが分散しがちなレースです。ここは新潟大賞典から巻き返しを狙って、レーベンスティールと、1年ぶりのヴェルトライゼンデといった実績組に、条件戦を勝ち上がってきた組が揃いました。特に連勝してきたサイルーンなどが人気になっていましたが、上がり馬が当たるというところで、当数は揃ったものの、オープンリステッド級というような印象のメンバーだったと思います。

新潟大賞典では控えめな謎のレース運びをしていたセルバーグと丸山元気という組み合わせがありましたが、今回はしっかりとハナを取り切りました。2番手にシルトホルンがつけるという形で、セルバーグが逃げる形で、ペースもある程度流れる形で進んでいきます。ペースが流れていたのですが、意外なことにその後ろのポジションの出入りが激しくなりました。すんなり3番手につけていったニシノスーベニアに対して、外からアルナシームがかわしていったり、インからはトゥデイイズザデイがポジションを上げてきたりと、3番手ぐらいがかなり落ち着かないようなレースになっていました。そんな中、人気だったレーベンスティールはじっと動かずに、先ほど言いましたニシノスーベニアの後ろから見る形で運ぶという展開でした。直線ではシルトホルンが抜け出してきたところを外に直線出したレーベンスティールが一気の脚で完全に突き抜けるという形で、2着にはニシノスーベニアがしぶとく伸びて浮上するという形になりました。結果で言えば、道中出入りがある中でも、ある程度のポジション確保をしてからは中途半端に動くことなくしっかり足を溜めていた3頭が上位を占めるという形になったと思います。

勝利したレーベンスティールの勝ち方は鮮やかの一言で、中間の調整過程も新潟大賞典の前は弱気なコメントもありましたが、今回は田中博康調教師も割と強気なコメントが出ていたので、良くなっていたところもありますし、鞍上がルメールにスイッチされたというところもあってか、ここ2戦の鬱憤を晴らす内容だったと思います。ペースが流れたところが良かった面もあるかと思いますが、この流れから1頭だけ上がり33秒台を出しているというのは素晴らしく、久しぶりにこの明け4歳世代に良いニュースだったと思います。一線級になるとあまり結果が出ていませんでしたが、このまま久しぶりに良いレースをしっかりできたと思います。ここに勝ってどこに行くかというのは結構難しいと思いまして、秋の天皇賞が向いてそうではありますが、鞍上が誰になるかというところ次第かという印象です。

2着のニシノスーベニアですが、ある程度流れるペースで前から脚を使えるというタイプでもあり、じっと構えた鞍上、田辺の好判断もありましてよく伸びたと思います。マイルから中距離の重賞でハマれば勝ちきれるというポジションまで来つつあるのではないかと思います。他の組では4着のサイルーンですが、このポジションからは良い脚を使っていたという印象で、もう少し前のポジションが取れたらというところでした。今回重賞初挑戦という形での初のG3級でのメドを当たった競馬だったという印象です。エプソムカップの方は以上になります。

第31回函館スプリントS

蒼山サグ:
函館スプリントステークスから回顧をお願いいたします。

こひ:
はい、函館スプリントステークスです。サマースプリントシリーズの初戦になりまして、近年は3歳馬の活躍もクローズアップされるレースです。今年は登録時点では唯一の3歳馬でした。オーキッドロマンスが除外という形になりまして、アサカラキングを筆頭にオープン勝ちから秋への飛躍を目指す形で、良いメンバーが揃ったと思います。ただ開幕週の函館かつ先行したい馬だらけというところがあり、展開的なものも読みづらい構成でした。

このレースですが、スタートで行くだろうと思われていたアサカラキングの出足が鈍くて、カイザーメランジェがハナを切っていくという、想定外の展開になりました。その後もアサカラキングも押し上げて2番手を確保し、外の4番手にウイングレイテストが上がったところで、おおむね態勢は固まりました。序盤はかなり早かったですが、そこからは淡々と進んでいった形です。

サトノレーヴはスタートを決めたのですが、その後アサカラキングの後ろというところで、インを追走する形でした。直線ではアサカラキングが、やや外から来ていたウイングレイテストに合わせに行ったこともあり、サトノレーヴの前がぽっかり空いた形になり、そこを突いて一気に突き抜けるという形での決着となりました。外をずっと回りながらよく粘ったウイングレイテストが2着、その後ろには外から差してきたビッグシーザーと、内から差してきたサウザンサニーという形になりました。

勝ち馬サトノレーヴは、これで8戦6勝という形で重賞勝ちまで上り詰めたところです。あまり堀宣行厩舎のサトノ馬らしくない母がチリエージェで兄にハクサンムーン、父はこの函館スプリントの舞台が得意なロードカナロアというプロフィールですが、大事に使いまして5歳夏での重賞制覇というところまでたどり着いた形になります。今日のレースを見ていても底は見せていないというところで、今日のレースについては通ったところも直線で前が空いた展開も含めて、かなり全てがハマったという印象でもあると思いました。続いて北海道路線での重賞だったり、秋のG1路線でもう1勝となると、もう一つパフォーマンスを上げたいところではないかという印象も合わせて持ちました。

逆にびっくりしたのは2着のウイングレイテストです。このキャリア豊富な馬が初のスプリント戦を59kgという舞台設定でありながら、決して楽ではない外目を回りながら、2着に粘り込んだのは立派だったと思います。スプリントでも今後は特に楽しみがありそうだという印象です。その後ろで言いますと、ビッグシーザーはこの展開でもう一つ弾けてほしかったという印象はあります。アサカラキングについては改めて見直してみると、少し左の方によれてしまい、立て直そうとすると右側にもたれてという形で、序盤かなりチグハグな形になってしまったのが響いたと思います。次のレースで普通に見直せるようなところかとは思いました。勝ち馬の鮮やかさはかなり光ったレースではありましたが、スプリント路線の一線級を相手にやれるというレベル感はこのレースでは感じなかったという印象でした。以上になります。

第29回マーメイドS

蒼山サグ:
マーメイドステークスの回顧をこひさんからお願いいたします。

こひ:
マーメイドステークスは牝馬限定重賞というような形になりますが、今年は例年の梅雨時の阪神開催ではなく、まだ梅雨入りしていない京都での開催となりました。連続開催にもかかわらず、昨日の米子ステークスを見ていてもインがまだまだ使える京都での開催ということで、さらにアプローチが悩ましいレースだったのではないかと思います。メンバーは揃って、ミッキーゴージャスコスタボニータというような形での重賞勝ち馬2頭が揃う形で、そこに対して上がり馬とハンデ戦での条件適性馬が挑むというような形になったかと思います。

レースとしてはスタートからの先行争いが、いきなりの勝負の分かれ目だったかと。逃げたかった最内のベリーヴィーナスと外からのアリスヴェリテという構図でしたが、この2頭は前々走の四国新聞杯で当たっていまして、その時にはベリーヴィーナスの方が先頭を取り切ってペースを落として逃げ切りという形で、妥協したアリスヴェリテはそこに届かないというレースでした。今回テン乗りとになりました永島まなみジョッキーもそのあたりは分かっていたのか、絶対に先頭を取りに行くというような形で進めていきまして、1コーナーの前に先頭争いについて勝負ありというところまで持っていったと思います。ここでハナ争いの勝負を決めきったという思い切りが、今日の結果には直結したかと思います。

そこから1000mはちょっとゆったりめの11秒台後半ですね。1000m58.3秒での逃げというところで、アリスヴェリテ自身が条件戦でもかなり飛ばしたラップで逃げ切ってきていたというところを考えますと、ペースとしてはやや余裕があるものだったかと思います。さらにそこから1000m過ぎてからペースを上げていったのがスピードメーターからも見て分かったところでして、この1000m過ぎからはラップタイムで言いますと11秒4、11秒4、11秒6という形で加速をしていきます。ここでリードを取り切ったところでもこのレースについては勝負ありでしたし、まさに永島まなみジョッキーの勝負勘が光ったところで、まさに自らの手で掴み取った重賞初勝利と言えるレースだったのかと思います。

本来なら追いかけないといけない位置、先行していた内にいましたミッキーゴージャスが、斤量もあってか全然動くことができないような状況であったり、さらに本来後位から巧みに立ち回るタイプのコスタボニータが出遅れから内を狙っていったら消極的なところもありまして、パッキングされまして、まさかの最後方というところで、馬群の中に動ける馬がそもそもいないという形になりました。そういったラッキーなところもあったといえばあったと思います。こういったところも含めてアリスヴェリテには最高の形でレースが運んでいったのかと思います。

最終的には外から2着3着の方は差し込んできた馬がいましたが、外から自分でポジションを上げてきながらも後続はちゃんと抑え込んだという2着のエーデルブルーメですね。この馬も本当に地力があるなというところは見せたと思います。今後の牝馬の重賞でのチャンスというところもあるんじゃないのかと思いました。3着のホールネス。上がり馬でしたが、外を回りながらかなり鋭い脚を使っていましたし、オープンに出てくるというようなレベルの馬ではないかという印象です。

しかし今日は何よりも永島まなみジョッキーが自ら勝ち取った重賞初勝利、おめでとうございますというレースだったと思いますね。昨年から本当に数字的にも大きく飛躍をしていましたが、特に昨年から今年は、今年はスイープフィートでかなり悔しい経験を積んだというところで、単純に勝ち星を上げるだけではなく、もう一つ上のランクでの経験というのを今年積んできているなと思います。そういった経験をしっかり糧にした成長というものを感じさせる見事な逃げ切りだったと思います。あとは本当に純粋にアリスヴェリテ、当然ここでしっかり賞金を積みましたので、当然牝馬の大きいところを狙ってくると思いますし、永島まなみジョッキーが騎乗でG1を勝つというのは純粋に想像するだけで楽しみだなというふうにも思いますし、ぜひこのコンビが今後も見られることを期待したいと思います。はい、私の方から一旦以上になります。

蒼山サグ:
はい、ありがとうございました。ゆたさんから補足などございますでしょうか。

くらみゆた:
今日に関しては、永島まなみ騎手のラップの刻み方というのは、1コーナー2コーナーの入りまではグッと前を取る主張をしていて、その後キュッと減速して、その後向こう正面入ってから早めに踏んでいくという形で、本当にお手本通りの軽ハンデでの逃げ切りというところで、横山典弘騎手に色々と教わっているというのがよく分かる逃げだったのかなと思います。今後もイメージで今後騎乗依頼が増えていく可能性もあるのかなと思いましたので、楽しみが増えただろうなと。夏は、このローカル重賞が増えていくので、若手が穴をあけるというのがありますけども、女性騎手この後も楽しみですし、例えば小林美駒騎手あたりも来年あたりになってくると、こういう場面が出てくるのかなというふうには思いました。

あとインタビューですね。しっかりしゃべれたというところで、結構好印象だったのかなというふうに思った方が多かったと思うんですけれども、永島まなみ騎手は毎週毎週競馬ラボのインタビュー、全ての乗ったことがある騎乗馬に対してコメントをつけていて、かなりの長文なんですよね。こういうところで結構言語化をし続けているというのは、どこまで狙ってやっているのかは分かりませんが、訓練の成果が出てきているのかなというふうに思いました。逆に言うと、もうちょっとレースの内容についてインタビューで聞いてほしかったなというふうに思ったところではありました。以上になります。

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