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「白い砂」適性と藤岡佑介騎手の手綱捌きが光ったキングズソードの勝利と左回り適性◎のアーテルアストリアを振り返り(帝王賞・スパーキングレディーカップ回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.06.30/07.07 16:30~からの文字起こしです。


帝王賞2024

こひ:
今年は地方交流のカレンダーが大きく変わった年で、どんなメンバーになるかというところもありました。また大井の砂も昨年のJBCクラシックから砂質が変わって初の開催となりました。ドバイ組とサウジ遠征組のウィルソンテソーロメイショウハリオと、川崎記念を使ってきた国内組というのが大まかな構図になりましたが、勝ったのはその中ではイレギュラーなかしわ記念経由のキングズソードでしたね。

レースについては、キングズソードの藤岡佑介騎手の積極策が本当に光ったと思います。スタートから積極的に前に行き、内からバーデンヴァイラーが出てきたところを外から合わせてスムーズに先行していく形となりました。そこで、おそらく同じような位置を狙っていたであろうウィルソンテソーロの前にスムーズに枠を生かして出ることができ、ウィルソンテソーロのさらに内にいた馬は外になかなか出せないという形で進路を消す形になりました。この1コーナーまでの選択がほぼ結果に直結したと思います。

道中はライトウォーリアが逃げ、2番手にバーデンヴァイラーという形になりました。キャロットクラブの2頭が並走してしまったのでペースが上がらず、外のキングズソードもこの2頭が前に行っているのであれば動く必要はないと判断し、しっかりと抑え込む形になり、ペースが完全に上がらない展開になりました。ライトウォーリアはもう少し行くかと思っていましたが、レース後のコメントを見ると砂がいまいち合わなかったようで、動けずという形でした。道中も全く隊列が動くことなく、キングズソードの後ろにウィルソンテソーロが付け、ペースも落ち着いて馬群がぐっと凝縮される形で、最後は完全に瞬発力勝負という展開に。外から鋭く先頭に立ったキングズソードでしたが、追いすがるウィルソンテソーロを寄せ付けず、最後はスローペースで前との距離が短く差し込めたディクテオンが3番手に上がってくるという結果になりました。

キングズソードは、これでJBCクラシックに続いて大井でG1、JPN1とそれぞれ2勝目という形になりました。やはり大井の今の砂が合うだろうというところと、その間にあった東京大賞典での負け方を踏まえて、しっかりとポジションを取りに行ったという藤岡騎手の手腕が光ったと思います。
ウィルソンテソーロは強い競馬ではありました。トップクラスのその次のポジションには確実にいるという印象です。JPN1の格を勝つには順番待ちだという印象で、この日のレースは僅差の結果で、枠も含めるとこれ以上勝ち切るのは難しかったのかもしれません。3着のディクテオンは馬群が詰まった展開になると、差し込める良さが出るというところを改めて思わされました。4着のグランブリッジは牝馬で頑張ってはいるのですが、坂井瑠星騎手がうまく立ち回っての4着で、牡馬相手にこれ以上となるとなかなか大変かという印象です。連勝して地元の代表として挑んだサヨノネイチヤもよく頑張っていましたが、上位の馬ほどの上がりタイムが物理的に出せなかったという印象で、もう少し流れれば良いパフォーマンスを見せたかもしれません。

あとは惨敗組ですね。ノットゥルノは前や外で立ち回れなかった点、セラフィックコールも瞬発力勝負で揉まれてしまうとちょっと苦しい展開だったと思います。この2頭はスムーズになる条件で見直せると思いますが、条件設定や枠を見ながら付き合い方が難しいタイプだと思います。最後に3連覇を目指したメイショウハリオが惨敗という形になりました。展開面や体調面もあると思いますが、コメントを見るに大井の砂の質の変化の影響が大きそうで、この馬の場合は以前の帝王賞2連覇していた大井適性というのは今はないのかもしれないと思いました。

スパーキングレディーカップ2024

こひ:
今年ダートグレード路線を大幅に見直しがあった形になりますが、なぜか全く手がつかなかったのがこのスパーキングレディーカップというところで、川崎1600mの夏のレースという条件は変わらずでした。例年ですとちょっと短めの距離から参戦してくる馬がいたりもするんですが、今年はそういったところもなく、この路線のいつものメンバーに加えまして、準オープンを勝ってきてダートグレード初参戦のミラクルティアラというような構図になりました。

レースですが、ミラクルティアラ、この馬が行くかどうかというところが結構大きなポイントかなと思っていたんですが、この馬がたまにある出遅れというような形になりました。それでも先行争いは一定激しくなりまして、ボヌールバローズフーリッシュホビーの2頭が前に行きまして、外の3番手にヴィブラフォンというような形に。その後ろにこちらも出遅れ気味でしたライオットガールがつけていきまして、冒頭触れましたミラクルティアラはさらにその後ろの外というような形。キャリックアリードが後ろに潜り込んで中段を追走しまして、後方の大外にアーテルアストレアというような展開になりました。

1コーナーでペース緩んだんですが、向こう正面ではまた加速をするという形で12.3秒のラップを刻みまして、序盤中盤とあまり緩むところがなく、なかなか前の馬には厳しい流れになったかなと思います。そんな中後方の外から左回りでのまくりに定評がありますアーテルアストレアがまくりを開始するというところで進んでいきまして、直線ヴィブラフォンが先行しているところから抜け出したところ、中段からインをついて封じをしたキャリックアリードが捉えにかかったところを、さらに外からアーテルアストレアという形で捉え切ってのゴールという形でした。

勝ったのはアーテルアストレア。この馬については随時触れていますが、本当に左回りのコーナリングが天才的な馬です。その長所がフルに発揮されたレースだったと思います。馬のリズムを重視して後方で動かず、まくって一発で決めたという菱田騎手の選択も素晴らしかったです。斤量差、今回2kg重い条件設定だったことを踏まえると、完全に完勝という内容でした。次走がコリアカップというコメントが陣営から出ていたのが面白いと思いました。やはりこの左回りの得意さは陣営もよく分かっているようで、牡馬との関係上で選出されるかというところはあるかもしれませんが、選ばれるチャンスは十二分にあるのではないかと思います。海外で牡馬相手に勝負というのは非常に面白いチャレンジだと思います。この馬にとっては多分右回り小回りになります。今年のJBCが開催される佐賀よりは、こういったコリアカップの条件や、ひょっとしたらチャンピオンズカップの方が合うことだと思います。

改めて2、3着を見ていて思い返すと、昨年12月に突然行われた謎のダート重視の神奈川記念(1回限り)が川崎1600mであったんですが、これがスパーキングレディーカップと同じ条件でした。そこでの1、2着馬が順序はひっくり返しましたが、2、3着という形で舞台適性が改めて発揮されたレースでした。2着のキャリックアリードは内をすくって距離ロスなく進出した赤岡ジョッキーの手綱さばきが光りました。小回りで立ち回りが要求される条件は非常に安定していると思います。3着のヴィブラフォンも今年あまり結果が出ていなかったのですが、楽ではないペースの中、外側のポジションからよく粘った良いレースだったと思います。どちらも佐賀は向きそうだと改めて思いました。

あとは直線で最後スピーディキックも詰めてきていましたが、うまくさばけず、もう一段上にはいけなかった形です。人気で負けたJRA勢のライオットガールミラクルティアラですが、どちらも出遅れの時点でかなり苦しい競馬になった印象です。ライオットガールは展開的にはもう少し伸びて良さそうな位置には持っていけていたと思うのですが、斤量か序盤のロスか、いつもの安定したコンビを組んでいる岩田望来騎手がヨーロッパ遠征ということで松山騎手に乗り替わったせいか、どれが理由かは分かりませんが、少し今一つ、いつもの末脚が出なかった形でした。ミラクルティアラについては出遅れもそうですが、小回りで走りにくそうだったというコメントもありましたので、この辺りはダートグレードの路線で考えると重要なコメントかと思います。強調しておきたいと思います。

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