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盛り上がってきた秋競馬。中央のステップレースと3歳ダート頂上決戦に夢を見る(第75回毎日王冠・第59回京都大賞典・第10回サウジアラビアRC・ジャパンダートクラシック・レディスプレリュード回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.10.06 21:00~からの文字起こしです。


第75回毎日王冠

くらみゆた:
年々マイルCSの前哨戦としての色合いが強くなってきている毎日王冠。すでに来年は1週前倒しになることが決まっているだけに、傾向がどうなるのか注目が集まります。今年はG1馬が不在で、2年連続で3歳馬の勝利という結果になりました。

レースは好スタートからホウオウビスケッツが逃げる形となりました。エルトンバローズが2番手、4番手にシックスペンスヨーホーレイクは先行勢の後ろ、ローシャムパークは中団という競馬になりました。早めに隊列が決まったことで、前半3ハロンは35.3秒。さらに4ハロン目から6ハロン目が12.2-11.9-12.0秒ですから、完全に上がり3ハロンの勝負となりました。この展開になるとシンプルにポジションを取っていた馬が有利です。粘りに粘るホウオウビスケッツエルトンバローズが追い掛けるも脱落。入れ替わるように伸びてきたのがシックスペンスでした。最後はクビ差差し切ったところがゴールとなり、2着がホウオウビスケッツ、3着がエルトンバローズとなりました。

勝ったシックスペンスは好スタートからルメール騎手がしっかりと内から2列目、エルトンバローズの後ろを確保しました。この時点で好走は確約されていたような形です。スプリングSのときにも触れましたが、キズナ産駒にしては溜めて脚を使えるのがこの馬の特徴です。ルメール騎手が残り400mまで溜めて、キッチリ差し切ったのが印象的でした。これで2年連続の3歳馬勝利となった理由としては、実質的なマイルCSのステップレースとなったことで、先行して持続力勝負できる馬よりも、少々距離不安でじっくり乗るタイプが増えてきたことが大きいと思われます。その結果、古馬が相対的に強みを出せる追走性能よりもスローを追走して、最後に脚を使えるかという競馬で3歳馬も力を出しやすいこと、また斤量差も効きやすい形になっています。来年以降、1週前倒すことで出走馬に変化が出るのかは要注目だと思います。3着のエルトンバローズが好走しているようにリピーターも生まれやすくなっているのではないでしょうか。

2着のホウオウビスケッツは先行力を十分に活かした競馬でした。次走という点ではダノンエアズロックに注目したいですね。3歳で毎日王冠を負けるのは曾祖父グラスワンダーと同じです。前々から勝負に行って負けたグラスワンダーに対して、中団からの極限の末脚勝負で持ち味を出せなかったダノンエアズロックと負けた方は異なりますが、ここから体調が上がってくれば大仕事もあるのではないかと期待しています。サウジアラビアロイヤルカップでも伝えたとおり、大箱をスタートはゆったり徐々に追走して、長い脚を使う勝負に持って行きたいモーリス産駒です。気性面が解決して前受けできるようになれば、G1でも楽しみがあると期待したいですね。

第59回京都大賞典

こひ:
ジャパンカップ有馬記念を目指す馬と、中長距離路線のオープン馬が集う形で安定してきた京都大賞典。今年もらしいメンバーとなりましたが、ブローザホーンがG1馬になっての参戦なので揃った感がありました。テーオーロイヤルの回避は残念でしたね。今年は馬場状態も良く時計が出る状態でのレースとなりました。

スタートからどちらが行くかと思われたケイアイサンデラバビットの先行争いになりましたが、ケイアイサンデラが踏み切って逃げを奪い、大逃げの展開に。バビットが離れた2番手で、その後には早めにプラダリアディープボンドがつけていき、中団には並んでサトノグランツシュヴァリエローズ。グランプリホースのブローザホーンは最後方からの競馬となりました。縦長の競馬から馬群が詰まったところで初めに手ごたえが悪く見えたのがなんとブローザホーン、直線手前ではついていけなくなり脱落します。ディープボンドが外から押し上げていった直線は、サトノグランツプラダリアの実績馬が伸びきれないところで、外から飛んできたのがシュヴァリエローズ、粘りこみを図るディープボンドをアタマ差捉えたところがゴールでした。さらには人気薄のメイショウブレゲスマートファントムが追い込んで3、4着と、大波乱の結果となりました。

勝ったシュヴァリエローズは距離を長めにシフトしてから競馬ぶりが安定しており、パフォーマンスを上げてきていましたが、上位人気馬がコケたここで堂々の初重賞となりました。サトノグランツの隣で運んで、ディープボンドをねじ伏せる内容は正攻法で、素直に結果を評価できると思います。東京コースでも結果を出していますし、アルゼンチン共和国杯でももちろん楽しみがありそうです。一流どころとの力関係はまだ分かりませんが、長距離のG2級では安定勢力になりそうです。2着のディープボンドは前につける積極的な競馬で勝ちたい展開でしたが、この馬にとっては時計がかなり速い馬場でも、直線ふらつきはしつつ最後までしぶとく伸びました。大幅な上積みはないでしょうが、展開一つで馬券圏内というポジションはこの秋も保てそうです。

気になるのは人気で負けた3頭ですね。サトノグランツは道中はシュヴァリエローズの隣で運び、直線も内からロスなく進路を取れて、突き抜けてもおかしいところから伸びきれず、前のディープボンドがふらついていたのがあるにせよ、案外でした。原因がつかめないですね。プラダリアはレース前の陣営があまりトーンが上がっていない印象でしたが、飛ばす前を離れてみる絶好のポジショニングから、こちらは直線内へ行くか外へ行くかが中途半端になって、結果的に外の馬を弾き飛ばす形になったこともあってか、直線はいつものような伸び脚が全く見られませんでした。ブローザホーンに至っては一番始めに手ごたえが悪くなって、直線の入り口では前に離されてしまう形に。状態面に不安があったコメントもありましたが、岡田スタッドでの夏を上手く越せなかったのでしょうか。年末の目標に向けて不安の大きなレースでした。

第10回サウジアラビアロイヤルカップ

くらみゆた:
出世レースとして定着したサウジアラビアロイヤルカップ。例年だと春の東京で勝ち上がった馬が出てくることが多いイメージですが、今年は夏競馬で勝ち上がった馬が人気となり、明暗が分かれた形となりました。

レースはタイセイカレントが少し躓く形で後方からのスタートとなりました。スタート直後はマイネルチケットが前に出る気配でしたが、外から抑えきれないようにシンフォーエバーが先頭に立ちます。いったん落ち着くかに見えましたが、そのあとさらにフードマンが突っつく形となったため、2歳戦にしては速い流れで道中は進む形になりました。先行勢の後ろにアルレッキーノ、好スタートから下げたアルテヴェローチェは後方、最後方にタイセイカレントという形で直線に入りました。

直線に入ると逃げ粘るシンフォーエバーマイネルチケットが必死に追い掛ける形となります。アルレッキーノが伸びあぐねる状況で、大外から一気にひっくり返したのがアルテヴェローチェでした。最後内から伸びてきたタイセイカレントが2着で、モーリス産駒のワンツーという結果となりました。

勝ったアルテヴェローチェは札幌の新馬戦を武豊騎手で勝利しています。レース後コメントでかなり褒められていましたが、今回は凱旋門賞の裏とあって佐々木騎手に乗り替わりました。その佐々木騎手は今年2歳S3勝目の重賞3勝目を見事な勝利で飾りました。若手ながら競馬を教えながら、勝ちきるという満点回答でした。次走武豊騎手に戻るのか、佐々木騎手でいくのか悩ましいところではありますが、陣営の信頼を掴む勝利で前途洋々ですね。

2着も矢作調教師が絶賛していたモーリス産駒のタイセイカレントでした。出遅れの分を考えると、こちらも強い競馬で今後が楽しみです。モーリス産駒は大箱での競馬場でゆったり加速して、末脚の持続力勝負に持ち込むと強いだけに、この舞台でパフォーマンスを上げるのも納得できます。朝日杯が阪神芝1600mならば文句なく楽しみな2頭といえるものの、今年は京都芝1600mです。京都の芝1600mは前半ペースが上がらずに瞬発力重視の末脚勝負になりがちなだけに、馬場状態、乗り方次第というところは出てきそうです。1番人気を裏切ったアルレッキーノは人気先行というか、ブリックスアンドモルタルの良さがどこなのか悩ましい結果となりました。

ジャパンダートクラシック2024

こひ:
ダート路線再編成の秋の目玉になる3歳限定大井での三冠最終戦。期待にたがわぬ素晴らしいレースとなりました。春の海外遠征路線と、南関東三冠路線、そしてレパードS不来方賞という夏の上り馬路線が重なり合うレースに、高知、岩手、南関東と各エリアからの最強馬も揃って、ダート世代ナンバーワンを決めるに相応しい構成となりました。人気はもちろん、ケンタッキーダービー3着のフォーエバーヤングと、東京ダービーの覇者ラムジェットが分け合いました。

レースは最内を引いてしまったフォーエバーヤングがやや躓いたスタートからも体勢を立て直して先行、鞍上坂井瑠星ジョッキーはカシマエスパーダを前に行かせたところで、外から迫りくるサンライズジパング武豊ジョッキーに気づきます。内に押し込もうというポジションを取りに行く武豊、それだけは勘弁と進路を外に取り張り合う坂井瑠星のガチンコ勝負が1コーナーまで繰り広げられました。ここがこのレースを決めた攻防でしたね。最後まで坂井瑠星ジョッキーは印を譲らずにフォーエバーヤングが番手に入り、その外にサンライズジパング武豊の形となります。そこから向こう正面でもレースが動きます。ペースが落ちたかなというところで、ラムジェットがまくり気味に進出。しかし逃げたカシマエスパーダの田辺に、坂井瑠星、武豊といったメンバーはそこへの対処がうまく、しっかりとラムジェットがまくり切ることのないようペースを上げて対処。結果的にこれで内から4列目を回すことになったラムジェットは苦しくなりました。このまくりの攻防を、後ろで見ながらじっとしていたのがミッキーファイトと戸崎ジョッキー。この選択が最後の伸びに活きてきます。

直線ではカシマエスパーダを交わしたフォーエバーヤングが突き抜け、サンライズジパングが苦しいながら懸命に粘るところを外からミッキーファイトが迫ります。ラムジェットはやはりコーナーで脚を使いすぎたのかじりじりとした伸びに。フォーエバーヤングの完勝という形で、ブリーダーズカップに向けて素晴らしい形でステップを踏むことができました。

フォーエバーヤングは、最内からの競馬、序盤から出していく競馬、そしてポジション争いで削りあう競馬、道中のペースアップへの対応と、いろいろな経験をまとめて積みながら勝ち切った、非常に収穫の多いレースだったのではないでしょうか。負けない馬が苦しい経験を積むのはなかなか難しいところがありますが、特に武豊ジョッキーとサンライズジパングが本気でフォーエバーヤングを倒しに来たことにより、馬にとって貴重な経験ができたレースになりました。本番も枠や展開次第で取れる選択肢が増えたと思います。

2着のミッキーファイトは前をじっくり見た戸崎ジョッキーの冷静さが光りました。前の隊列を見ながら自分の仕事を全うしましたね。特にここでJpn1級の2着賞金が加算できたことは3歳馬にとっては非常に大きく、G1級のレースの選択肢も含めて展望が広がるレースでした。

3着サンライズジパングは真っ向勝負でフォーエバーヤングに挑んで止まらなかった、これだけで本当に立派な内容でした。芝砂二刀流の馬ではありますが、やはりダートのパフォーマンスの方が世代の上位になると思います。レース選択次第では大きなタイトルのチャンスもあるポテンシャルを見せました。左回りの方が良さそうなコメントも出ていたので、ここは意識しておきたいですね。4着となったラムジェットは道中動かなくても勝つまでは難しかったかなという印象で、フォーエバーヤングには完敗で、世代の2番手グループの一頭という形の結果にはなりました。とはいえ、今回は乗り方も含めて持っているポテンシャルを出し切れない形だったので、改めて見直せる条件は当然あると思います。それが次走予定のチャンピオンズCかと思うと、ちょっと微妙な印象ではありますが…。5着には高知の雄シンメデージーが、東京ダービーでの4着に続いての地方馬最先着。この世代の地方のナンバーワンは、高知競馬生え抜きのこの馬になりました。こういった地方競馬の地域間の交流が2冠目から見えた点は、ダート三冠の盛り上がりへの貢献も大きいと思います。フォーエバーヤングからのタイム差は1.5秒のところに高知競馬生え抜きの馬がいる、そしてその事実が3歳秋に分かるという点も含めて、印象的な結果でした。

羽田盃の時点ではやや不安もあったダート三冠ですが、一巡してみるととても良い路線変更の第一歩だったと思います。あとは、増えたJpn1級レースの賞金を携えた3歳馬が、早めに古馬の一線級と激突する、そしてどういった競馬を見せてくれるのかという点が見られましたら、ポジティブな言葉で総括できるのかなと思います。

レディスプレリュード2024

こひ:
春の大一番のエンプレス杯から5ヶ月。その時のメンバーからBCディスタフへ向かうオーサムリザルトが抜けて、代わりにヴィブラフォンが入ったメンバー。JBCレディスクラシックに向けて古馬勢はしっかり揃ったトライアルとなりました。

注目だったのが先手争いでしたが、内からヴィブラフォンが主張し、その番手をアイコンテーラーが押さえる展開。行く手もあったライオットガールは3番手に控えて、その後ろに構えるグランブリッジ、そしてアーテルアストレアといった並びで固定されて道中進んでいきます。完全なスローというわけではなく、1000m手前でアイコンテーラーがプレッシャーを前にかけて12.1秒という締まったラップが入ったりというペース。3、4コーナーでは外からまずライオットガール、そしてその後からグランブリッジが進出し、アーテルアストレアはしっかり直線に入って大外に出しての追い出し、あとは力勝負でした。

直線ではアイコンテーラーが早めに抜け出したところ、外からグランブリッジが伸びてきて最後はマッチレースに。少しだけグランブリッジが交わしたところがコールでした。3番手にはアーテルアストレアが大外から良く伸びて、ヴィブラフォンライオットガールは4馬身と1馬身とかなり離される形になりました。上位人気の3頭が力が上だというところを見せたレースでした。

グランブリッジは長らく勝ち星からは遠ざかっていましたが、牝馬同士であればオーサムリザルトアイコンテーラー以外には負けていないわけで、ここはアイコンテーラーに離されず貫禄勝ちでした。能力的にはJBCレディスクラシックでも最も高いと思います。2月には佐賀記念で佐賀競馬場も経験。クラシックとの両にらみという報道もありますが、どちらを使っても3度目の正直、3度目のJBCチャレンジでの戴冠の可能性は十分です。

アイコンテーラーは能力的な衰えはないところは十分に示しました。右回りより左回り、小回りよりは大箱タイプではあるので、佐賀競馬場にどれだけ適応できるかが、本番を使ってきた際のポイントかと思います。スムーズに前に行ける枠が欲しいですね。アーテルアストレアは右回りでも長い直線をフルに活かして、ギリギリまで溜めた鞍上の判断も含めてよい競馬ができました。こちらは左回り、得意の中京を求めてJBCではなくチャンピオンズCを選択します。個人的には条件的にはそちらの方が向いているのではないかと思います。ライオットガールヴィブラフォンはちょっと離されましたね。こちらは佐賀の方が向いていそうですが、この差の間に3歳馬やキャリックアリードが入ってきてもおかしくない印象のレースでした。


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